元大蔵省財務官の榊原英資氏のインドについての講演を聴きに行きました。
知らなかったのですが氏は最近インドに関心を持っているようで、インドのIT企業の社外取締役に就任していたり、著作も何冊かあるようです。
なかなか講演慣れしていらっしゃって、レジュメなし、資料なしという中で世間話風に始まり、前振りの小話風なエピソードがとても長くてどうなることやらと思っているうちに暖機運転が終わったてだんだん調子が出てきて、後半はけっこう面白い話を聴けました。
そこで出てきたのが、インドと中国は対照的だ、という話。
中国は、共産党の一党独裁で、法律もコロッと変わる。契約を結んでいても守られない事も多い。一方で政府が本気になると人権などお構いなしに公共工事はどんどん進む。いわば「人治」の国
一方インドは民主主義国家なので法律がころっと変わるということはない(逆に連立政権なので機動性に欠けるというデメリットでもある)しかも国民の権利意識が強く、また激烈な競争を勝ち抜いてきたエリートたちは特に自己主張が強い。取引などできちんと弁護士を立てて細かいところまで契約書に書き込まないと、とんでもないことになる。そういう意味で「法治」の国といえる。
日本のビジネスマンは「中国は契約をしても安心できないので仕事がやりにくい」というが、インドではトラブルがあってこっちが困った場合でも契約を盾に書いてある事しか履行せず「お願い」が一切通用しない。考えようによってはこっちのほうが相当厳しい。
日本は法治国家だが、実際の運用は「法治」と「人治」の中間あたりで運用されているということを自覚しないと、ひどい目に遭う。逆に中国のほうが融通が利く分上手く動けばやりやすいかもしれない。
確かに日本は法律の運用が極端にコロコロ変わることはないですが、行政当局の裁量の幅はかなりあります(今日はここでライブドアや建築行政の話に脱線はしませんw)
また、民間同士の契約でも「規定外事項は信義誠実の原則により」などとあったり、契約に書いてあることでもその後の状況の変化によって「お願い」をすることもあります。
また、裁判になっても裁判所が事件の早期解決のために和解を勧めたりします。
文化や社会風土が異なればものの考えも違うというのは当然なのですが、どうしても自分の慣れ親しんだ視点から相手の行動も評価しがちですね。
それが極端になるとアメリカのように自分の基準を押し付けることになっちゃうんでしょうが・・・
私にはインド人や中国人の友人や取引相手がいないので何とも言えませんが、榊原氏の言が正しいとすれば、日本はいかにも日本らしく中庸かつ融通の聞くポジションにいるとも考えられますね。
そのほかにも面白い話があったので忘れないうちに備忘録として書きとめておきたいところですが今日はこの辺で。