年末年始シリーズ第5弾
これはオーガスティン・バロウズというアメリカの新鋭作家の自伝的小説です。
というよりも、この本が「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーリストに74週連続ランクインして注目を浴びたという方が正しいみたいです。
とにかくまともな人が一人も出てこない話です。
主人公=作者の父親はアル中の大学教師、母親は自分に文学の才能があると思っている精神病者(で同性愛者)。
主人公は両親の離婚と母親の病気再発をきっかけに母親の主治医の家族と同居生活を始めますが、主治医の精神科医もその家族も社会適応度がゼロに近く、さらに養子にした元患者や現患者を治療のために自宅に同居させたりという支離滅裂な生活を送っています。
主人公はこの奇妙な共同生活に巻き込まれたり傍観者になったりしながら、自らの自我を確立していく(ついでに同性愛に目覚めたりもする)という話です。
作者が毎日つけていたという日記(学校にも行かずに自らの存在をかけて毎日3時間かけて書いた)がベースになっているようで、細部にわたっての描写と少年である主人公の心の動きが描かれています。
最初に思い浮かんだのが、野坂昭如だか誰だかが書いていた
「親があっても子は育つ」
子供はどんな環境でも(特に親という成長を阻害する存在がいても)立派に育つ、という言葉です。
主人公が自分と他人と比較して悩んだりしないところにすがすがしさを感じます。
※そういえば「他人との比較で自分の行動を決めない」ことが重要という点は昨日のエントリの「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」でも言及されています。
こういうフレーズがあります。
飛躍を遂げた企業は、恐怖によって動かされてはいない。自分たちが理解できないことへの恐怖によって動かされてはいない。馬鹿にされることへの恐怖によって動かされてはいない。他社が大成功を収めるのを指をくわえてみる羽目になることへの恐怖によって動かされてはいない。競争で打撃を受けることへの恐怖によって動かされてはいない。