「政見よりも夫婦の絆」でふれた野田聖子議員の話の続きです。
テレビによると、野田議員は不妊治療に取り組み、ようやく体外受精に成功したものの、今回の総選挙で多忙なため、受精卵を子宮に着床させるのはしばらく待って、当面受精卵は凍結保存しておく、ということらしいです。
実は、彼女の選挙の当落よりはこっちの方が大きな問題をはらんでいるように思います。
人工授精自体は、不妊症治療等に有用だと思うのですが、「受精卵を凍結して保存する」
=着床・妊娠・出産の時期をコントロールする、というのが「仕事の都合」でそんなに簡単にされちゃっていいのかな、というところに素朴な疑問です。
①技術的に可能かもしれないけど、やはり冷凍保存って何らかの劣化を招きやすいのではないか。
②受精卵の法律的な立場は不安定なので、このような状況に長く置くのはよくないのではないか
現行法では子宮内の胎児であれば、損害賠償請求権や相続権等若干の権利が認められますが、体外にある受精卵では何の権利も認められません(「人」=権利の主体ではなく「物」=権利の客体です)
そうすると
受精卵の状態のまま母親が死亡し、「代理母」により出生した場合、誰の子になるのか?
(そもそも出生日より前に母親が死亡している、という出生届が戸籍上受理されるのか)
その場合、母親の遺産を相続できるのか
などといろいろ問題が出てきそうです。
③受精卵の管理権限は受精直後でも卵子の提供者にのみ管理権限があるのか
②のように、受精卵は現行の法律上は「人」ではなく「物」です。
そうすると、誰の所有物かが問題になります。
卵子と精子それぞれが別個にあれば出した本人の所有になりますが、受精卵のように一体になっている場合、民法では
第243条
所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
第244条
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
とあり、主従としたら(遺伝子の数以外の物理量は)卵子が主でしょうから、卵子の所有者である女性のものになりそうです。
この結論は、男性としては直感的に違和感があるのですが、たとえば着床前に精子提供者と離婚してしまったとき男性側から受精卵の廃棄要求が出たらどうするのでしょうか(これは人工授精の契約の問題かもしれませんが、そういう契約が生命の尊厳からいって認められるのか、という問題もありますね)
受精卵は「人」か「物」かについては、アメリカでも議論があるようです。
「女性は出産・育児のために仕事を犠牲にしなければいけないのか?」という反論もあるとは思うのですが、それは社会が出産・育児をサポートする体制の不足が問題であって、
「受精卵さえ手に入れてしまえば、あとは自分の思うがままのタイミングで自分の子供を手に入れられる」という考え自体は、あまり健全でないように思うのですが・・・
野田議員はせっかく本まで出して、不妊治療への理解をひろげようとしている(のが目的ですよね?)のに、今回の行動は逆効果になりはしないだろうか、心配です。
テレビによると、野田議員は不妊治療に取り組み、ようやく体外受精に成功したものの、今回の総選挙で多忙なため、受精卵を子宮に着床させるのはしばらく待って、当面受精卵は凍結保存しておく、ということらしいです。
実は、彼女の選挙の当落よりはこっちの方が大きな問題をはらんでいるように思います。
人工授精自体は、不妊症治療等に有用だと思うのですが、「受精卵を凍結して保存する」
=着床・妊娠・出産の時期をコントロールする、というのが「仕事の都合」でそんなに簡単にされちゃっていいのかな、というところに素朴な疑問です。
①技術的に可能かもしれないけど、やはり冷凍保存って何らかの劣化を招きやすいのではないか。
②受精卵の法律的な立場は不安定なので、このような状況に長く置くのはよくないのではないか
現行法では子宮内の胎児であれば、損害賠償請求権や相続権等若干の権利が認められますが、体外にある受精卵では何の権利も認められません(「人」=権利の主体ではなく「物」=権利の客体です)
そうすると
受精卵の状態のまま母親が死亡し、「代理母」により出生した場合、誰の子になるのか?
(そもそも出生日より前に母親が死亡している、という出生届が戸籍上受理されるのか)
その場合、母親の遺産を相続できるのか
などといろいろ問題が出てきそうです。
③受精卵の管理権限は受精直後でも卵子の提供者にのみ管理権限があるのか
②のように、受精卵は現行の法律上は「人」ではなく「物」です。
そうすると、誰の所有物かが問題になります。
卵子と精子それぞれが別個にあれば出した本人の所有になりますが、受精卵のように一体になっている場合、民法では
第243条
所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
第244条
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
とあり、主従としたら(遺伝子の数以外の物理量は)卵子が主でしょうから、卵子の所有者である女性のものになりそうです。
この結論は、男性としては直感的に違和感があるのですが、たとえば着床前に精子提供者と離婚してしまったとき男性側から受精卵の廃棄要求が出たらどうするのでしょうか(これは人工授精の契約の問題かもしれませんが、そういう契約が生命の尊厳からいって認められるのか、という問題もありますね)
受精卵は「人」か「物」かについては、アメリカでも議論があるようです。
「女性は出産・育児のために仕事を犠牲にしなければいけないのか?」という反論もあるとは思うのですが、それは社会が出産・育児をサポートする体制の不足が問題であって、
「受精卵さえ手に入れてしまえば、あとは自分の思うがままのタイミングで自分の子供を手に入れられる」という考え自体は、あまり健全でないように思うのですが・・・
野田議員はせっかく本まで出して、不妊治療への理解をひろげようとしている(のが目的ですよね?)のに、今回の行動は逆効果になりはしないだろうか、心配です。