小笠原諸島・母島ジャイアン ブログ  -GIAN'S HAPPY BLOG-小笠原諸島・母島で自然農&便利屋

小笠原諸島・母島で持続可能な暮らしを目指しています。

その中や暮らしで学んだことを紹介したいと思います♪

母島の春 ~切ない旅立ちと出逢いの季節

2022年04月03日 | 母島 日常 日記
■正直に言います。
僕は母島の春は嫌いです。
特にこの春は格別です。

それは大好きな島の仲間が沢山旅立ってしまうからです。
あんなにも楽しく一緒に過ごした仲間が島を離れて行ってしまうなんて、
何度経験しても慣れません。
だからこの春は嫌いです。


でももう一つの本音も正直に言います。
僕は母島の春が大好きです。

それは大好きな仲間が前向きに進む大きな一歩の旅立ちをして行くからです。
大好きな仲間が人生の次のステップに進むために、シフトしていくのを応援しない訳はありません。
でも間違いなく寂しい気持ちが胸の中に溢れています。
島を離れる港での見送りの時、一緒に過ごした時間が走馬灯のように巡って来ます。
島の暮らしでなければこんなにも関わって暮らすことはなかったと思うと、
島の春はその集大成のようで大好きです。

そして島を巣立っていく子供たち。
高校のない母島は中学を卒業すると同時に、
島を巣立っていきます。

これは3年前の長女達が島の卒業式に向かう場面です。

自分が中学卒業の頃、もう巣立つなんて考えてもいなかったのに、
母島の子供たちは当たり前に巣立っていきます。
なんとたくましい事か。

島の子供は誰一人名前の知らない子供はいません。
子供は地域で育てていきます。

この春に巣立つ島っ子達は、特に柔道などでも直接関わる事も多く、
なんだかとても感触深いです。
内地の高校に進む子、父島の小笠原高校に進む子などそれぞれですが、
新天地で頑張って欲しいと思います。


■3月の中旬以降、島の出港日の港はそんな見送りの雰囲気に溢れています。
僕にとっては寂しいけれど、なんだか応援する気持ちも入り混じった、
複雑な見送りです。

20年前、小笠原に移住した頃はこの春が本当に辛くて、
もう2度と転勤の人と仲良くなるか!!と思ったほどでした。
仲良くなった人たちと別れるのが辛過ぎたのです。

でも年月が経つにつれて、この期間限定の出会いも、
まさに一期一会。
大切にして、島を離れても繋がっていけるし、大事なご縁と思えるようになってからは
あまり躊躇することはなくなりました。

お別れで寂しい事は変わりないですが、
その先の関りを考えると、終わりではなく次へのステップと思えて、
辛い気持ちは薄らいできました。


■高校を卒業して、僕が19歳で初めて小笠原に行くとき、
小笠原行きを強く後押ししてくれた高校の担任の恩師が、
「その土地を離れる時に、涙が溢れるような過ごし方をしてこれると、それはいい旅なんだと思う。そんな旅をして来いよ!」
と声をかけてくれました。

涙涙に見送る場面を眺めるたびに、
その言葉が僕の胸の中で響いています。
【どうもありがとう!】
【いってらっしゃい!】
【元気でね!】
そんな言葉で見送りながら、
相手がこの島でどれだけいい時間を過ごせたのかと
想いを馳せます。

島に来てくれてありがとう。
一緒に過ごしてくれてありがとう。
また、逢おうね(#^.^#)



■小笠原ではお別れの時に花とティーリーフで作ったレイなどを渡す風習があります。

このレイを受け取った人は、
船が出港するときに海に投げて、
そのレイが島の浜に辿り着いたら、またいつか島に帰って来れると言い伝えられています。

丁寧に編み込まれたレイを大海原に託す。
この風習、とても素敵だと思います。
僕は大好きです♡

ハワイのフラ文化が島に定着している証だと思います。

僕もレイを良く作ります。
レイ作りを教えることもあります。

レイを作るにはティーリーフと花を集める必要があります。
ティーリーフは島のいたるところにあって、
僕は畑にも自宅にもあります。

ティーは編み込むために、
冷凍したり、火であぶったりしますし、その後切る手間があります。

その後は島を離れる相手を想って、
丁寧に編み込んでいきます。

僕はこの作業の時間がとても好きです♪
既製品でも流れ作業でもなく、
レイを編んでる時は、その相手のことを想っています。
一緒に過ごした時間に想いを馳せながらレイを編んで、
沢山の花を飾る工程はとても愛おしい時間なのです。


この春は本当に大好きすぎる仲間の引き揚げがあり、
なんと父島までレイを作って持っていくという機会に恵まれました☆
自分にできる事はこれくらいしかないので、一生懸命作りました(^^♪


■そして、いざお見送りです。
コロナ禍で去年は行えなかったお見送り式を行う事が出来ました。
これはすごく嬉しい事でした♪

島を離れる子供たちや先生が最後にひとつの節目を迎える場面です。
これでお互いの気持ちに一区切りつけることが出来ます。

セレモニーの後はそれぞれにお別れの時間を過ごします。
毎回思うことだけど、なんて切ないのでしょう。

だけど、この島のお別れの春というのはすごく人情的で大好きです。

見送り人の手には沢山のレイが見えます。
みんなそれぞれが良いと思う花を探して作ってきます。
僕はレイそのものももちろんですが、
そのレイを作るまでのそれぞれのストーリーや想いがたまらなく想えてしまいます。

時間にすれば受け取って、海に捧げるまでに1時間も持っていないレイですが、
受け取るものはそのスピリットだと思うのです。

見送った後にしばらくして、海に浮かぶレイ、浜に打ちあがるレイを見て、
すごくたまらない気持ちになります。


サッカー部は毎回、愛のこもった胴上げで旅立つメンバーを見送ります。
やっぱ愛だよなぁと思ってしまいます(#^.^#)


どれだけ撮っても足りないくらい、お別れのハイライトの連続です。

今回は離島のメインのタイミングで我が家の春休み父島旅行を設定したので、
見送られる目線でははじま丸に乗船しました。

沢山のレイ(首飾り)やハク(髪飾り)に包まれた仲間を見ていると、
島でいい時間を過ごせたんだなぁと感じさせられます。


■父島では毎回、すごい数の見送り船がおがさわら丸の出港に合わせて出ています。
母島では本当にこの時だけは!という時だけ、島の漁師さんが見送り船を出してくれます。

なおさら嬉しいですよね。
ずっとお互いが手を振って、お別れの時間を惜しんでいます。


遠くまで見送り船も並走して進みます。
この時間にすれば数十分の時間がたまらなく大事なひと時な気がします。


丹精を込めて作られたレイを大海原に投げて、フィナーレを迎えます。
沢山の涙が溢れます。
まさに島暮らしの集大成なのではないでしょうか。

島でいい時間を過ごせた勝だと思うのです。
僕はこんな見送りが出来る母島を誇りに思います♡


■そんな盛大な見送りを終えて、心にぽっかりと穴が開いたような時間が待っています。
この虚しさは形容しがたいのですが、すぐその後に新しい出逢いが待っています。

この春はなんとヤツガシラという派手な珍鳥に出会うことが出来ました♡
母島にはほぼ毎年のように来ている渡り鳥なのですが、
やはり派手なので目立つし、なんか嬉しいです。

ヤツガシラは春に来ることもあれば秋に来ることもあります。
ロシアや中国などで繁殖するために、通過地点として小笠原を利用しているようです。

そしてこの春から新たに赴任するメンバーと色んな場面であったりします。
父島帰りのははじま丸でも出会いました。

言葉にできないほど寂しい別れの後は、
また新しい仲間との出逢いが生まれてきます。

夕陽を眺めながら、この島に来たプロセスやいろんな話をしたりします。
そうして島の暮らしは巡っていくのだと思います。

最後に母島にも住んでいた友人が、
島のお別れのレイについて曲を作っています。
良かったらその曲を聴きながら、島のお別れのレイに想いを馳せてみてください(#^.^#)

音骨「ボニンオハナ〜レイの言い伝え〜」MV


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