小笠原諸島・母島ジャイアン ブログ  -GIAN'S HAPPY BLOG-小笠原諸島・母島で自然農&便利屋

小笠原諸島・母島で持続可能な暮らしを目指しています。

その中や暮らしで学んだことを紹介したいと思います♪

子供と火のある暮らし

2014年12月20日 | 母島 暮らし 子供
■最近、めっきり冷え込んできた母島。
…と言っても本土の様に大雪になれるはずもなく、
朝晩は冷え込み、長袖を着る程度(足は裸足にサンダル)ですが…(笑)。

こんな時期になると畑で決まって増える仕事に「焚火」があります。
畑に撒く灰の採取と暖をとるためです。

子供と火を眺めながら、色んなことに想いを馳せました。

去年畑に作った石窯に火を入れました♪

以前のブログにも書きましたが、
人と他の動物と大きく違う点の一つとして「火を扱う」ということがあります。

しかし、現代の暮らしからは火がどんどん遠くなってきているのを感じます。
IH導入のオール電化は完全に火が暮らしから無くなるいい例ですね。
暮らしから火を失うという事は何か大きなものを失ってきている気がしてなりません。

このずっと眺めていても飽きない焔の揺らめきは、
悠久の時間を経て、現代の私たちに様々なメッセージを送ってくれている気がします。

以前、薪のお風呂に入る経験があり、
色んな違いに驚きました。

ガスや電気で温めたお湯のお風呂より、
薪で沸かしたお風呂は体が冷めにくく、芯から温まっている感じがしたのです。

それってどういうことだろう?と考えてみると、
もちろん、遠赤外線云々などはあるのでしょうが、
薪となる木が育った時流がそのままお湯に伝わり、
体に伝わってきている気がしてきたのです。

そんな事を考えながら、今年の5歳になった娘と火の関わりを眺めていました。

■火には燠(おき)という状態があります。
キャンプや焚火の経験がある人は分かると思いますが、
焚きつけ後、火の勢いが落ち着いて、
温度は高いのですが炎や煙は出ず、
赤い炭のような状態の事をいいます。

この状態は長く続くので、ここから火を起こすのは容易になります。

現代の様にライターやマッチのように、
容易に着火できる道具が普及する以前は、
囲炉裏の暮らしでこの燠を絶やさないことがとても大事だったそうです。


次女は今年はこの燠に関心がいきました。
息を吹きつけてみたり、
外に出してみたり、
色々な揺らめきの変化に思わず「きれい~♪」と言ってしまうほどです。


子供ながらに火と関わり、色んなことを考えているのでしょうね。
畑で火を囲みながら子供と話す、
人が自然や動物と普通に会話していた時代の頃を想います。

次女はよくすべての根源について疑問がわきます。
昨日は水はどこからくるのか、
魚はどこから発生したのか、でした。

ひとつひとつ答えながら、
僕も色んな事を考えるきっかけを頂いています。
どうもありがとう♪

島では家で直火に関わる暮らしが難しいので、
こうして畑で火に触れ合える環境がとても有難いです。

■そんな5歳を迎えたばかりの次女さん。
なんといつの間にか逆上がりができるようになっていました!

正直、僕は小学3年生頃にようやくできたような、できなかったような…気がしています(笑)。


ぐぐっと足を上げてから持ち前の握力と腕力で回りきる姿は正直びっくりしました!



本人もよほど嬉しかったようで、
家に帰ってからも布団干しの棒で逆上がり♪

次女以外は家族全員、現在逆上がりできていないので、
すごいなぁ~と感心しています(笑)。

母島 マガン保護物語

2014年12月15日 | 鳥獣保護員 活動
■10月中旬、天然記念物でもあるマガンが5羽以上母島に飛来しました(初記録は2013.10月)。
そのうちの1羽が飛べない状況で保護し、1か月の試行錯誤の飼養の末、無事に野生下に戻ることができました。

母島で水鳥を1か月近く保護飼養して、無事に放鳥できた珍しい例ですし、何よりも保護個体の野生に還るプロセスがあまりに素晴らしかったので、この場で報告したいと思います。



■マガンは冬季、宮城、新潟、石川県などに飛来する渡り鳥です。
全長72cm。翼を広げると1.4mほどになる大型の水鳥です。

湖、沼や池でねぐらし、水田で落穂や、草の種子、葉などを食べています。

国の天然記念物にも指定されており、環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されています。
母島では去年10月、初確認され、今年で2例目で1度に7羽以上の飛来の情報を得ています。

そんな母島ではレアなマガンが去年に続き2回目の飛来で不時着したのです…。

■まずは10月12日、学校のグラウンドに不時着したマガンの連絡が入り、
飛べなくなったマガンを保護することになりました。



保護時は右尾翼が下がり気味で随分と大人しい印象でした。
保護時は数メートルは低空飛行をできるが、足も悪い印象ですぐ転んでしまいます。

保護時の体重は1362g。
幼鳥ですが、体重は低目ではないかということでした。

大型の水鳥という事で飼養する場所から課題となりましたが、
母島で共に傷病鳥獣の保護の活動をしてくれているKさんの使っていないシャワールームをお借りすることになりました。

この時点ではあまり餌も食べず、
まずは体重を1.4~1.6kgまで増やし、痛めた羽を回復させ、共に来ている野生個体の群れに帰すことを目標に保護を開始しました。

水鳥は陸で世話をしていて、自分の体重で足を痛めてしまうケースが良くあります。
それを防ぐために柔らかいバスマットを使う工夫をしました。


当初は何を与えていいか分からず、試行錯誤しました。
関係者に色々聞いて、色々試してみました♪
野生個体同様の島のイネ科の葉や穂を与えてみると、
大喜びしてバクバク食べることが分かったので、
毎日せっせとイネ科の雑草や畑の陸稲を与えていました。

餌はその後、
すりつぶした穀物を与えてみたら、見事に食いつくようになり、
麦やヒエ、陸稲や玄米を中心に給餌していきました♡
野生鳥の保護で一番苦労するのは給餌です。

自力で食べれない鳥に強制給餌するのは人にも鳥にもストレスが多くなってしまいます。

このマガンの場合は自力で食べてくれるのがとても助かりました♪


保護後、環境に慣れてきたので
1日1回は衣装ケースを使って水浴びを行いました。
水鳥にとっては水浴びはとても重要です。
頭からザブンザブンと鳥の命でもある羽の手入れを入念に行います。

サブン!と水に飛び込み、浴びる様はさすが水鳥と言ったところです♪


しかし、ふと見ると傾眠傾向が続き、
コンディションが悪いことを物語っていました。

衛生状態を保つ為、シャワー室での静養はとても有効でした。
糞やごみをすぐに流せますからね♪

それでも野生復帰できることを願って、日々お世話をしていきました。
(Kさんにお世話になりっぱなしでした!)

そんな中、中の平の畑では野生個体が1羽残っているのを発見しました。

どうにか、この個体と引き合わせてあげたいと思っていました。
保護個体が飛べるようになるまで待っていてくれるといいのだけれど…。


■保護して5日目の10月17日。
体重は上がったり下がったりでしたが、ほぼ安定し、
翼の落ちもなくなったので、一度野外で放鳥に挑戦してみました。




場所は当初野生個体を何度か見かけた脇浜。
しかし、いくら待っても飛びません。
ずっと仁王立ちをしては横の林の中に入り込む始末…。

少し走らせてみるとすぐに転び、
羽ばたいても体を浮かすことはできません。
まだ時期が早かったことを痛感し、保護飼養を継続することになりました。
体力、飛翔能力、足腰に課外があるようでした。


その後は餌は順調に食べ、少しずつ体重も増えて来ました。
保護当初になかった威嚇もするようになってきて、
少しずつ元気になってきた印象です。

そして今度は野生個体がうちの畑に登場!!

次女が大喜びでした♪

しかし、いつ渡りに戻ってしまうか分からないので、
気持ちが焦ります。
早く保護個体を野生に帰さなければ、と。


■早期の放鳥が難しいと分かったので、課題となった部位の回復に意識を集中させていくことになりました。
ここで特に気になったのは左右の足の違和感でした。

左右の踵の付き具合に差があり、
ときどき片足立ちするようになったのです。

10月末 餌の喰いつきも日々良くなり、体重は1.6kgとなりました。
しかし、ここで更に足の負傷に気付くことになりました。
バンブルフットです。


バンブルフットというのは、本来飛んだり水上で過ごしている鳥がずっと止まり木や陸に立っていて足に負荷がかかり、
人間で言う褥瘡のような状態になってしまう疾患の事です。

悪化が進むとその傷口から感染し、立てなくなるケースもあります。
それを未然に防ぐためにバスマットを使用していましたが、
それでも長期の飼養で足に故障が出てしまいました。
今度は人工芝を使い、その対応にあたってみました。

もう一刻の猶予もなくなってきました。

野生個体は前浜や旧ヘリポートで見かけることができました。

気持ちが焦ります。

■11月1日、体重も上がり1.7kgを超えました。
威嚇も激しくなり、羽の力の目安でもある背中の谷間もしっかりしてきました。
足も回復傾向にあるように思えました。

今度は旧ヘリポートで再度放鳥を試みるも飛べずに失敗でした。
それからは毎日評議平グラウンドで毎日1~3時間、野外リハビリとして運動を続けました。


毎日少しずつ進化していきました。
今日はとべない。
翌日は50m。
翌々日は100m。
50m×3。
最後はグラウンド1週旋回。

次女もその成長を一緒に見守ります♪


「今日もちょこっと飛べたね~」と大喜びの次女。

野生個体の近くで野外リハビリができればと思っていましたが、
いつもそのタイミングではうまく出会える機会がありませんでした。
気持ちは焦る一方で、毎日の放鳥時にみせる成長に、
日々確かな手ごたえを感じていました。
お別れの日は近いと感じて来ました。

足の状況からは、もうネコや交通事故の危険のないダムに強制放鳥する考えでいました。

ずっと毎日つきっきりでお世話をしてくれたKさんです。
野外リハビリの回収時の様子ですが、マガンに対する愛情がほとばしっています♪

この人の存在なしでは今回のマガンの保護→放鳥成功はありえませんでした!
ほんとにありがとう!

■運命の11月9日。
なんと旧ヘリポートで野生個体と遭遇させることができて、
見事に放鳥に成功しました!

別れは踊るべきスピードで急にやってきたのです。


ここ1週間、放鳥に向けて連日評議平グラウンドで野外トレーニングを試行をしていました。
日に日に飛べるようになってきて野生復帰も近いかと思っていました。
そして、旧ヘリでなんと野生個体を発見したのです!!
なんという絶好の機会!!

ずっとこの時を待ち望んでいたのは僕だけでなく、
マガン自身もそうだったと思います。

早速その近くに放鳥してみました。
すると、久々の再会に戸惑いながらも鳴きながら寄り添っていき、
2羽で採食を始めました。

その後は2羽がシンクロするように動き→羽ばたいたりと仲の良い様子でした。

突然、近くにいたムナグロが何かの拍子に飛び立つと野生個体が東方向に飛び立ちました。

それに合わせるようになんと飼養個体も飛びましたが、
なぜか野生個体と反対の御幸の浜方向へ!?

その後、野生個体は旋回してきて、飼養個体を探すように旋回し、
鳴きながら御幸の浜へ飛翔していきました。

急な野生個体との遭遇で、一気に野生のスイッチが入ったのかと考えられます。
以外なほどサッパリしていて呆気に足られてしまいましたが、
無事に飛び立ったので嬉しい気持ちでした♡

■しかし、その後はしばらく2羽のマガンを見かけることがなかなかありませんでした。
野生個体はその旧ヘリの遭遇の夕方には前浜で確認しています。

1か月も満足に飛んでいない飼養個体はどこかで落ちてしまったのでしょうか?
心配が募ります。

毎日野生個体ばかり見かけるのです。


■しかし、その心配も杞憂に終わりました。
11月16日、前浜でついに2羽が一緒にいるのを目撃しました。
1週間ぶりの発見!!

無事に生きていてくれたのか!


この時の感動は言葉では言い表せないほどです♪


長い飼養期間を経て、無事に野生復帰することができました。

最後のあまりにあっけない別れでしたが、
人馴れによる野生復帰の難しさを心配していました。

それがこうも逞しい姿を見せつけられると、
そんな心配は無用でした。
彼らの野生に還るパワーを感じられずにはいられません。

無事に多くの本体の群れに戻って行ければと思います。

この保護には多くの皆様の協力があって成り立っています。

Kさんはもちろん、
動物病院の先生方、
父島の自然文化研究所の皆様、
多くの情報を寄せてくれる母島の皆様、
そして飼養場所の提供とお世話をかってでくれたKさん。
本当にありがとうございました!

こうして無事に保護、放鳥、野生復帰確認できたことは
とても素晴らしく、嬉しいことでした。

野生生物と地域の皆様から多くの学びを頂きました。
この場を借りて、お礼をお伝えします。
どうもありがとうございました。

無事に野生下に戻ったマガンは昨日も母島の前浜で見かけています。
無事に北の群れに帰れることを願ってやみません。