小笠原諸島・母島ジャイアン ブログ  -GIAN'S HAPPY BLOG-小笠原諸島・母島で自然農&便利屋

小笠原諸島・母島で持続可能な暮らしを目指しています。

その中や暮らしで学んだことを紹介したいと思います♪

未知との遭遇~小笠原でザトウクジラのバブルネット⁉

2022年02月01日 | 小笠原 野生動物
■先日の土日2日連チャンでホエールウォッチングに行く機会に恵まれました♪
それがあまりに感動的な未知との遭遇だったので、まだ興奮が冷めずにこの記事を書いています。

1日目はPTA、2日目は青年会主催のホエールウォッチングでした。
終わった後もみんな笑顔が溢れて「凄かったね~」「楽しかった♪」と
言い合っていて、それが本当に嬉しかったです(#^.^#)

そして、僕が約20年の島キャリアにおいても、格別のクジラ時間でした(#^.^#)
あの圧倒的なひと時は何にも代えることはできません。

これは1日目の母島小中学校PTA郊外部活動での一コマ。
こんなPTA活動をする地域は他に父島、座間味くらいでしょうか?(最近は伊豆諸島でもあるかも!)

今回、特に事前からしっかりとフォーカスしていたのが
このアンダーウォーターブロウ(水面下の潮吹き)です。
ザトウクジラが興奮して浮上してくる時に見せる特別な光景なのです。

メスを追いかけて、オス同士が激しく競い合う集団を「メイティングポッド」というそうなのですが、
オスが興奮するあまり、普段は水面上にクジラの噴気孔が出てから呼吸するのですが、
水面下のうちから鼻息荒く息を吐きだすブロウがアンダーウォーターブロウです。

Photo by Shimona
この何気ない写真ですが、アンダーウォーターブロウの瞬間と母島を見事に捉えています♪
一緒に乗船した友人が撮った写真です☆

実は数ある写真の中で、この何気ない1枚が大のお気に入りなんです。
ここにクジラの興奮のエナジーと、その瞬間を待っている人の気持ちが凝縮しています。
どうしてこんなにもヒトはクジラに惹かれるのでしょう?

大きいから?
ダイナミックだから?
哺乳類だから?
僕は小学生の頃から鯨類が好きでした(#^.^#)
僕はまだ明確な答えを持っていません。
でも惹かれている事は紛れもない事実です♡

Photo by Shimona
遠くからまっすぐ上に4m位高く上がるブロウとは違い、
アンダーウォーターブロウは、海面で砕けるように広がるブロウになります。
これは結構、遠目でも違いが分かります☆


■今回、ようやく写真で収めることができたアンダーウォーターブローの瞬間です。

水面下から泡がブクブクと上がって来ます。


下からヌッと黒い巨体が見えてきます。


水面に現れると、そのまま大きな広がるブロウになります。


そのまま勢いよく進んでいきます。

オスが興奮している様が伝わって来ます。
見ているこちらも海中から姿よりも先に泡が上がってきて、ドキドキさせられます。


■しかし、アンダーウォーターブロウは前から知っていたし、見ていました。
今回の驚くべき未知との遭遇は、まさにその泡にありました。

このザトウクジラ達は夏場は北極海のアリューシャン列島やアラスカの海で過ごします。
そこでオキアミやプランクトンや小魚をたらふく食べるのですが、
特徴的な自身の呼吸の泡を使った捕食行動、「バブルネットフィーディング」を行うのが有名です。

それはクジラの群れが円を描きながら、円柱状に出す泡でニシンなどの小魚やプランクトンを追い込み、
一気に大きな口で飲み込むというダイナミックな捕食行動のことなのですが、
今回、あまり捕食行動をしないと言われている小笠原で
興奮したオス達が海中でバブルネットを作り出している光景を初めて見ることが出来ました(^^♪

北極海の採餌行動のように輪を描くわけではなく、
直線的に海中から泡が浮上してきます。

なんという光景なのでしょう!
この天の川のような帯はすべてクジラが作り出していたものなのです(#^.^#)

Photo by Shimona
日々この時期にホエールウォッチングをしている人にとっては、
良く見慣れた光景かも知れませんが、僕は20年び島キャリアで初めての光景でした。

とてもよく目立つし、人気の激しいジャンプ(ブリーチング)や、
大きな尾びれを上げて潜る様(フルークアップ)も素晴らしいのですが、
僕は密かにこのバブルネットに震えるほど感動していました♪

このバブルネットのあとに大きなオスが浮上してきて、
大きなブロウ(潮吹き)を上げて出現した時に、一気に船上で歓声が上がります。

なんという存在感。
なんという迫力。
人間のちっぽけさをまざまざと見せつけられました。

Photo by Shimona


■もうひとつの未知との遭遇はお腹が白いザトウクジラです。
普段、北半球のザトウクジラは比較的腹部も黒い個体が多く、
胸ビレの裏側が白いのが目立つ程度でした。
逆に南半球のザトウクジラは腹部が白い個体が多いと聞きます。
一般的に北半球と南半球のザトウクジラの行き来はほとんどないという事だったと思います(うる覚えw)。

今回はなんとお腹の白いザトウクジラのブリーチングを捉えることが出来ました♪

しかし、沖縄の座間味でもお腹の白い若い個体をチラホラ確認できていると噂を耳にしました。
なかなか気になる情報です。

もう1枚ブリーチングを撮れたのですが、
こちらは今年生まれの若い子クジラのジャンプでした。
小さな体で一生懸命、何度も飛ぶ様は本当に健気です(#^.^#)

子クジラはいっぱい動いて、お腹が空いても母クジラの母乳があるのでへっちゃらです♡
でも母クジラは小笠原ではあまりエサがないので、どんどん痩せていきます。

本当の真意はクジラに聞いてみないと分かりませんが(笑)、
夏場の豊富な餌場の北極海の海は、濁ったプランクトンの栄養スープのような豊かな海。
エサが豊富であると同時にサメやシャチなどの捕食者が多い事にも繋がります。

小笠原の透明な暖かい海は、栄養はどんどん深海に沈む栄養が乏しい澄んだ海です。
子供を産んで育てるにはこれ以上安全な場所はないのではないでしょうか?

一方、オスは栄養豊かな北の海に留まっていればいいものの、
やはり大好きなメスたちがこぞって一路、南へ行ってしまうので、
追いかけてついて来ている気がしてなりません(#^.^#)


■さらにもう一つの未知との遭遇!(まだあるんかいw)
それは今回クジラの唸り声を聞くことが出来たのです☆

この写真は今回の僕の沖入りの「わらうクジラ」と名付けた、少し口を開けた瞬間の1枚です。

ザトウクジラは海中でよく大きな切ない声で歌っています。
それは交配期のオスのみと言われており、言わばラブソングだと勝手に思っています♡

そのソングは海中で聴くと、ウォ~ンとなんとも言えない寂しい雰囲気に僕は聞こえます。
フラれたのかなぁと勝手に思ってます(笑)。

今回の未知との遭遇は、そんなソングではなく、
海面に顔を出したときに「グゥゥゥ!」と大きな唸り声を発していました。
なんか怪獣が変なものを飲み込んだ時のような声です(どんなだw)。

これも今回、海面上では初めて聞いたものでした☆


■他にももちろん尾びれをねじりながら暴れていたり、
様々なアクションを行っていました。

ほぼ静止している船の上で、僕たちは眺めているだけなのですが、
興奮したザトウクジラ達は船を取り囲み、
周囲で様々な活発な動きを見せてくれます。

Photo by Shimona
興奮したオス達に追いかけられているメス。
その雌の傍らには可愛い子供がいました。

母親が何度も子クジラをおぶっていたりしていて、とても可愛かったです♡
こんな光景を間近に見れたのも初でした♪

授乳中の母親です。
こりゃあ、オスどもは相手にしてもらえるわけがありません。

しかし、そんなメスの都合はお構いなしに、
オス達は争い合って、メスの取り合いをしている(ように見えます。全部推測ですw)。



■この日はなんとははじま丸がドック入りして、初めてくろしお丸が定期航路に初就航する日でした。
ザトウクジラのブロウの背景にくろしお丸が入港していきました。

母島では入港セレモニーが開催されていたそうです。

僕たちが胸いっぱいのホエールウォッチングを終えて戻るとき、
沖港にカッコいいくろしお丸がいました(^^♪



■今回のPTAでも青年会でも、
初めて母島にやって来て、
初めてボートに乗ってホエールウォッチングをした人が何人もいました。

青年会は常日頃の地域活動の感謝を込めてのイベントでした。
「すげぇ!!」
「翌日になってもまだ興奮しているよ!」
「参加して本当に良かった!ありがとう☆」
と嬉しいコメントを沢山頂きました。

当日の朝は、海はそこそこ良かれど、少し雨模様でした。
判断に悩んでいたのですが予報では曇り。
その予報を信じて、朝の7時に決定したのですが、その後にまさかの大雨。

再度延期にするかどうか、
悩みに悩みましたが、船長家族とも相談し、雲の薄さも見えたので実施を決定しました。

お陰様で、9時開始からは一度も雨が降ることなく、
しかも風が寒くなく快適な状況でした。

結果、僕にとっても未知との遭遇ばかりの、
素晴らしいホエールウォッチングともなりました(^^♪

みんなが喜んでくれて本当に良かったです☆
あの時、悩みに悩んで実施を決定した自分を褒めてやりたいです(#^.^#)

僕自身も映像や写真を見返しては、にんまり幸せな気持ちになっています♡

いつか島を離れてしまう先生や友人や家族も、
それぞれの日常と同じ時間に母島の海ではこんなことが繰り広げらているんだなぁ、と
思いだして、何かの力になれればなと思っています。
本当に奇跡のような有難い時間でした。



■母島は捕鯨が禁止になった翌年に日本で一番最初のホエールウォッチングを始めた場所です。
「獲るもの」から「見るもの」へ。
その驚くべき柔軟な発想の転換とシフトの鮮やかさは一体どんな感じだったのでしょう?

Facebookのコメントに当時を知る、父島のレジェンドから興味深いコメントがありました。
「漫画家・岩本久則さんが、
 捕鯨賛成の人も、反対の人もまとめて鯨写連ゲイシャレンと称して連れてきて、
 小笠原諸島返還20周年記念事業として、母島実行委員会が実施しました。
 父島では、懐疑的だったが、
 母島がやるんなら、父島でもやらないとと、急遽後から行われました。
 母島実行委員会と母島漁協の先見性に敬服!」

そうだったんですか!!
当時の事をますます知りたくなってしまいます♪

大海原で大きなクジラと対峙していると、
本当に大自然にお邪魔しているのだなぁと畏敬の念が湧いてきます。

しかし、そんなクジラたちも人間の様々な影響を受けています。
母島でも2016年に東港でザトウクジラが定置網に絡まった事故がありましたし、
胃の内容物に様々なプラスティックが何キロも入っていたり、
有害物質が生物濃縮されて、高濃度に汚染されているとも聞きます。

今回、とてもいい思いをさせてもらったクジラ達に
自分たちは何ができるのでしょうか?

捕鯨についてももっと勉強したいです。
外部の人間がその土地の人たちに価値観を押し付けて、
色々ジャッジするのはすごく乱暴と思っています。

自分たちは自分たちが住むその土地で、
自然に感謝をして、何を恩返しできるのか?

もちろんゴミを出さない、拾う、リスペクトするはとても大事と思います。

そして、この自然からのメッセージを受け取って、学んでいく、感じていく、動いていくのが重要なのだと思います。

母島で当たり前のように毎冬やってくるザトウクジラ達。
そんなクジラ達を陸上からも見れる、とても有難い環境。
でもそれは当たり前ではなく、奇跡なのだと思います。

そんなクジラ達を愛でて、見て楽しく過ごせる機会に恵まれたこと。
他では得られないこの貴重な体験をシェアしたいし、
この感動で何かにお返ししたいと思っています。

最後に、お忙しい中、私たちの為に船を出して操船してくれた船長さん達、
事前の調整、当日の色んな気配りをしてくれたご家族の皆さん、
本当に素晴らしい時間を過ごすことが出来ました!

どうもありがとうございました<m(__)m>

ザトウクジラは尾びれの裏側の模様が個体ごとに違うので、個体識別に使われます(#^.^#)

★2019年のPTAホエールウォッチング記事はこちら

★カナダで経験した最高のホエールウォッチング記事はこちら

◇使用機材
本体:OLYMPUS OMD EM-5 MarkⅡ(ミラーレス一眼)
CANON Powershot SX60HS(超望遠コンデジ)
レンズ:M.ZUIKO 40-150mm F2.8 PRO(35mm版換算 80-300mm)
    M.ZUIKO 12-100mm F4.0 PRO(35mm版換算 24-200mm)
テレコンバーター:M.ZUIKO 2×TELECONVERTER MC-20