玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

シャルトル大聖堂の崇高美(1)

2020年01月03日 | ゴシック論

 12月7日から20日までパリに行ってきた。今回の目的の一つはシャルトル大聖堂を訪れることだった。そのためにシャルトル行き高速鉄道(TER)の始発駅である、モンパルナス駅近くにホテルを確保したのだった。ところがフランス全土で交通機関のストライキが5日から始まり、地下鉄はほぼ全面ストップ、鉄道も間引き運転でシャルトルへ行けるのかどうか、行っても帰ってこれるのかどうかも分からない状況であった。

 17日の日に一日空き時間ができたので、この日に行くことに決めたのだが、ガイドブックには30分に一本と出ているのに、午前に1~2本、午後に2~3本しか運行していない。しかも運行時間が毎日変わるので、もう出たとこ勝負で行くしかないと心を決めた。

 パリは昨年に続いて2回目で、パリ近郊の都市にはヴェルサイユとサン=ジェルマン=アン=レーに行っているが、どちらも地下鉄からの延長(RER)でチケットの買い方も分かりやすい。しかしシャルトルはパリから100キロもあるところで、TERで行くしかないし、チケットの買い方もよく分からない。

 ガイドブックには駅の窓口で行き先を書いたメモを見せればいいと書いてあるので、窓口に行ってみたが、ストライキのためか閉鎖されている。あとは自動券売機で買うしかないのだが、これがさっぱり分からない。窓口が閉鎖されていた替わりに、紅いヴェストを来た案内人が大勢いたので、その一人にお願いすることにした。

 英語で「シャルトルに行きたいのだが、チケットの買い方が分からない」と言うと、その案内人は券売機まで連れて行ってくれて、操作までしてくれた。優れものの券売機でシャルトル行きの発時間とシャルトルからの発時間が表示されて、選択できるようになっている。午前9:06発、帰りはシャルトル午後2:40発を選んで、往復のチケットを購入した。

 観光客にとってストライキは辛いものがあるが、きちんと代替措置は講じてあるのである。出発のプラットホームも分からなかったので、どこか聞くと案内人はホームの入り口まで連れて行ってくれる親切ぶりだった。モンパルナス駅はプラットホームが横一列に並んでいるので、非常に分かりやすい。パリの高速鉄道の駅はみな始発駅なので、工場のような細長い建物の中にプラットホームが整然と並んでいる。有名なサン=ラザール駅をイメージしてもらうといい。

この列車に乗った

 TERの車輌は二階建てで、重厚な造りである。「遠くへ行くんだよ」という雰囲気が漂っているが、シャルトルまでの所用時間は1時間でしかない。「その車窓からは、手入れの行き届いた畑、典型的な田舎の風景、羊や放牧牛の小さな群れなどの風景画次々と変わっていく」と、薔薇十次会の案内にはあるが、全くそのとおりの風景が車窓を横切っていく。

 サン=ジェルマン=アン=レーに行った時は途中、郊外の住宅地が広がり、ときおりマンション風の集合住宅も見え、目的地近くには別荘風の一戸建ての建物がたくさんあったが、シャルトル方向にはそんなものは全くなく、ひたすら農村風景が拡がっているだけである。フランスは農業国であるし、パリを離れればほとんどが農村地帯なのだということを実感できる。

 列車がシャルトルに近づくと、目的の大聖堂が遠くに見えてくる。とにかく高い塔が特徴で、土地が真っ平らなので、遠くからでも見渡すことができるのである。駅からの距離は300メートルと確認してあるので、駅を降りて迷うことはあるまいと思っていたが、迷ってみようがないというのが本当のところだ。

車窓からのシャルトル大聖堂

周辺整備の進むシャルトル駅

 シャルトルの駅は真新しくて、駅周辺では再開発の工事が行われていた。ウール=エ=ロワール県の県庁所在地というわりには、駅舎は小さくて、周辺にはほとんど何もない。コーヒーを一杯飲んではやる気持ちを落ち着かせ、大聖堂に向かう。

広場から見る大聖堂

 駅からやや離れたところに小さな広場があって、そこがエントランスの役割を担っている。そこでまず大聖堂との出会いの写真を撮るのである。クリスマスが近いので、雪だるまの飾りなどがあって、古い寺院にふさわしくないと思うのだが、仕方あるまい。

 しばらく歩くと大聖堂の正面に出る。ここにも小さな前庭があり、周辺にはレストランや土産物屋などがたくさんあって、駅よりもこちらのほうが町の中心なのだということが分かる。古くからの巡礼の地であり、パリの街など比較にならぬ枯淡の雰囲気を漂わせた街並みが、こぢじんまりと拡がっているのである。

 

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