民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

白井聡『永続敗戦論 戦後日本の核心』を読む

2013-09-22 14:59:01 | 歴史

最近気になっていた本である。2013年3月の刊行し、8月には5刷となっている。それだけ話題性があるということだろう。
この国では、敗戦記念日を終戦記念日と呼ぶこと。自主憲法制定を叫ぶ人が、日米同盟の堅持を口にする。かねがね、いったいなんだこりゃと思ってきました。そうした疑問に、すっきりとはいきませんが、答えを用意してくれたのがこの本でした。

 「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる。かかる状況を私は、「永続敗戦」と呼ぶ。」
 「国内およびアジアに対しては敗戦を否認してみせることによって自らの「信念」を満足させながら、自分たちの勢力を容認し支えてくれる米国に対しては卑屈な臣従を続ける、といういじましいマスターベーターと堕し、かつそのような自らの姿に満足を覚えてきた。敗戦を否認すらがゆえに敗北が無期限に続くーそれが「永続敗戦」という概念が指し示す状況である。」

永続敗戦という概念で、ねじくれたこの国の政治状況を切ってみせてくれます。そして、今や永続敗戦にしがみつくような政治の枠組みは維持不能になっているにもかかわらず、つまり、冷戦終結後、アメリカが日本を無条件的同盟者とはみなさなくなっているにもかかわらず、一方的にしがみつき、既にこの国はアメリカにとっての収奪の対象と化していることに気づかない時代遅れの政治家が支配するこの国、その支配を許している国民と私。新聞に投書したりしてみても、この国では歴史に学んだためしがないのだから、無駄なことだと友人にいわれたりもして、落ち込んでいく気分を、あとがきで引用された次の言葉が、なんとか押しとどめてくれました。

「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。」(ガンジー)