いつか松本盆地周辺に松くい虫の被害が広がっていることを書きました。この被害は、カミキリムシが媒介して松を枯らしてしまう虫というか線虫が、拡散していくもので、詳しくは知りませんが防除するには薬剤を樹幹注入するか、カミキリムシを殺すしかありません。樹幹注入は木ごとにやるもので、木に注射をするようなものですが薬剤が高く、庭木ならともかく森に生えている全ての松にするなど不可能です。かといって放置しておけば、カミキリムシが広い範囲に拡散して次々に松を枯らしてくれます。つまり、その地域の赤松が全て枯れて虫が生きられなくなるのを待たなければ、どうにもなりません。山全体が枯れるのを座視するわけにもいかず、行政が考えた手段は空中からの薬剤の散布です。山全体に薬剤を散布して、媒介するカミキリムシを殺してしまうということでしょうか。ところが、この薬剤の散布について市民から中止を求める提訴がありました。以下に本日の朝日新聞から引用します。
松本市による松食い虫防除の薬剤空中散布差し止めの仮処分を申し立てている市民団体「農薬による健康被害から子どもと市民を守る住民の会」は21日、記者会見を開き、来週中にも、散布差し止めを求めて、同市を相手に長野地裁松本支部に提訴すると発表した。市は23日と来月、本郷地区と里山辺地区の山林計約20㌶で無人ヘリコプターによる薬剤空中散布を予定していたが、仮処分申請後の15日、本郷地区での散布中止を決めた。19日には里山辺地区での23日の散布延期も決めたが、来月分については「実施する」としている。住民の会代表の安藤絵美子・弁護士は「本裁判の公開法廷で、空中散布の問題を徹底的に争う」という。
薬剤の空中散布の効果、そして散布された場合の人体への被害の実態、の争いとなるでしょうが、裁判で争うには難しい問題です。そんなら市は静観しますので、地元で好きなようにやってくださいと、行政はサジを投げてしまう方法もあるでしょうが、そこからまた他地区へと被害が広がっていきますから、面倒なことから手を引くわけにもいかないでしょう。徹底的に争うという人たちは、景観の問題はどのように考えるのでしょうか。何もしなかったら長野県の松はすべて枯れてしまいます。全部枯れて、次の植生が育つのを待てばいいのか、何らかの手を打つべきなのか。これといった駆除の妙案がないだけに、裁判所がどんな判断を下すのか注目されます。