(国内盤BMG/BVCE-38080,2005年発売)
ハンス・ロット(Hans Rott/1858~1884)はブルックナー門下の将来有望視された作曲家だった。彼は1878年音楽院卒業時のコンクールに「交響曲第1番」の「第1楽章」を提出したところ師ブルックナー以外の審査員たちはこの作品を受け入れることをしなかった。しかしその後彼は1880年にこの作品を全4楽章構成の演奏時間約55分余りを要する大交響曲に完成させた。
ウィーン音楽院の同期生マーラーも彼の才能を高く評価したが世間の反応は冷たかった。彼は指揮者ハンス・リヒターや大作曲家ブラームスにかけあいこの大作の演奏を試みたが失敗に終わり大きなショックを受けたようである。そしてそれも原因となり彼はついに発狂し精神病院に収容されてしまう。精神異常がもとで何度か自殺まで企てる。1884年、彼は結核により25歳の若さで他界した。
短い生涯に彼は20数曲の作品を書き遺したがその草稿は現在ウィーンの国立図書館に保管されている。因みにこの「第1番」の交響曲が全曲世界初演されたのは1989年3月、ゲルハルト・ザムエル指揮シンシナティ・フィによる演奏であった。写真のCD、セバスチャン・ヴァイグレ指揮ミュンヘン放送管弦楽団による演奏は2003~04年のスタジオ録音で他に「管弦楽のための前奏曲」(1870)、「ジュリアス・シーザー」への前奏曲(1878)も収録されこの二つはこれが世界初録音とされている。最近ではこの「第1番」をパーヴォ・ヤルヴィがフランクフル放送響と録音したとのことでこちらも聴いてみたいところである。