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ロンドンの街の情景を描写したヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第2番

2009-03-01 14:01:27 | 交響曲
 ヴォーン・ウィリアムズ(Vaughan Williams/1872~1958)は20世紀のイギリス国民主義を代表する作曲家で交響曲を全部で9曲作曲している。中でもこの第2番は「ロンドン交響曲」と呼ばれ20世紀初頭のロンドンの街の情景を描写した作品である。作曲は1912年から13年にかけてされているがスコアをめぐってちょっと複雑な経緯がある作品である。と言うのは1914年ロンドンでの初演後(指揮はジョフリー・トイ)、作曲者自身が一部しかない手書きのオリジナル・スコアをドイツの著名な指揮者フリッツ・ブッシュの元へ郵送した際途中で紛失事故に遭ってしまった。結局のところ作曲者ヴォーン・ウィリアムズは記憶にたより曲の復元を試みる。この時、作曲家ジョージ・バターワース(1885~1916)の協力があったと伝えられる。復元版の初演は1915年エードリアン・ボールトの指揮で行われている。その後作曲者自身による改訂がされ現在一般的に演奏されているのは改定第4版である。(オリジナル版にくらべ大胆なカットがある。)
 楽章構成は4楽章からなり改訂版第2稿を初演したアルバート・コーツが作曲者の協力を得て各楽章における描写のノートをのこしている。それによれば曲はテムズ河の夜明けの情景から始まり早朝のビッグ・ベンのチャイムの音、そして朝の雑踏が描写されている。(第1楽章)、続く第2楽章はホルバーンとユーストン・ロードの間にあるブルームズベリーという地区を描写したと作曲者は述べている。時期は11月末の黄昏である。なにか悲しげな雰囲気を感じさせる。遠くからラヴェンダー売りの声も聞こえる。第3楽章、聴き手は土曜日の晩遅くにテンプル・エンバンクメント(ビッグ・ベンとウォータールー橋の間にある土手)のベンチに腰掛けていることを想像しなければならないという。はるか向こうの対岸からスラム街の土曜の夜のざわめきが聞こえてくる。やがてロンドン名物の霧が覆い情景は静寂の中に消えていく。フィナーレの第4楽章は失業者であふれたロンドンの厳しい一面を描いている。現在の日本の状況にも似ている。曲は第1楽章を回想し始まりと同じように終わる。
 私は復元版を初演したサー・エドリアン・ボールト指揮ロンドン・フィルのLP(写真)を愛聴している(録音1971年)。目を閉じてロンドンの街を思い浮かべながら聴くと自然と頭の中にコーツの名解説どおりに曲が進んでいくから不思議である。 



 


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