教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

不登校が増える本当の問題

2008-08-08 07:00:04 | 文化・芸術
☆中学生の「不登校」34人に1人、過去最高更新(2008年8月7日23時27分 読売新聞)によると、

2007年度の不登校の小中学生は、06年度より2360人多い12万9254人。01年度に過去最多の13万8722人を記録して以後、少子化の影響やスクールカウンセラーなどの配置によって減少傾向にあったが、05年度に底を打ってからは2年連続の増加となった。・・・・・・文科省は今回初めて、不登校が増えた要因を都道府県教育委員会に複数回答で尋ねた。93%の教委が「人間関係をうまく構築できない児童・生徒が増えている」と答える一方、「家庭の教育力の低下」(82%)や、「欠席を容認するなどの保護者の意識の変化」(65%)など家庭の要因を指摘する回答も多かった。

☆不登校の増加の原因は、表層的には、児童・生徒の人間関係づくりやコミュニケーションの能力不足であったり家庭の教育力の低下ということになるのだろうが、根本的理由は、人間関係づくりやコミュニケーション能力育成のための学習理論が、日本の教育システムの中に埋め込まれていないのだから当然ということであろう。

☆また不登校問題解決をスクールカウンセラーに任せてしまうのも一部の問題しか解決できない。というのも、不登校の状態を生み出している心理状況の把握はできるかもしれないが、やはりその状況に陥る根本的状況を見出すことはなかなか難しいだろうからだ。

☆人間関係づくりやコミュニケーション能力の育成のためには、それぞれの生徒の多様な能力の分析(MI)、5つの精神(5M)の発達の状況を把握しておく必要があるが、それはスクールカウンセラーで見抜くことは難しいだろう。カウンセラーは原因は把握できるかもしれない、なぜ雨が降るかはわかるが、なぜ雨が存在するのかは知る由もない。

☆生徒一人ひとりがどんな言動をとるから、どういう心理状態にあるかはわかる。しかし、その状況も含めて、生徒一人ひとりがどんな存在の響きを奏でているか、なぜその存在の響きを奏でているのかはわからないだろう。

☆マスコミレベルで報道されている人間関係づくりというのは、抽象的かつ平均的人間どうしの人間関係が前提になっている。しかし、そんな人間が現実の世界で存在しているわけはない。まして児童・生徒は日々成長し、存在の響きは日々音色を変える。多様で、多次元で、多変容の人間が集まっているという状況で人間関係を作っていくのである。

☆学校現場で、それをどのように解決すればよいのだろうか、学習指導要領のどこを見ても、その解決策は考案されていない。1989年ベルリンの壁が崩壊して以降、世界中で新しい学習理論が生まれている。そのどれ一つに対しても、政府は本格的導入・開発をしていない。せいぜい総合的な学習にそのチャンスを作ったにすぎない。しかし、そのチャンスも、新学習指導要領では削減される。

☆このようなチグハグな国づくりをしている社会構造が日本であり、それを支えざるを得ないのが産業社会であり、そのストレスやツケはすべて家庭に集中する。にもかかわらず、家庭の教育力の低下という責任転嫁を平気でやってのけてしまう日本国。こんな国に誰がした!といったところで、そこに自分も住んでいる。

☆この鬱屈感はなんだろう。この分析こそカウンセラーの出番だろう・・・。ぐるぐる回るなあ。この無限の悪循環から抜け出す方法はなんだろう。Dale ParnellとHoward GardnerとOECD/PISAの考え方とFormative Assessmentの組み合わせと脱構築が望まれる。それにMother TeresaのA Gift for Godを世界標準の精神のモノサシとして読める読解リテラシーも必要かもしれない。