クラシック 名盤探訪

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とっておきの名盤 その66 シューベルト ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960

2006年12月21日 | とっておきの名盤「器楽曲」
この曲はシューベルト死の年、1828年に一気に書き上げられた3曲のピアノ・ソナタの最後を飾る傑作。
その深遠な出だしの旋律を聴くと、いつもシューベルトの早すぎた死がひしひしと感じられ、さぞかし無念の思いだったろうという気持ちで一杯になる。
第1楽章はゆったりとした歌で始まる、といっても声ではなくとにかくピアノがひたすら歌う、何かその歌は念仏をじっと唱えているようにも聴こえる。
死の足音を感じたシューベルトは、その彼岸の想いを歌詞には表しきれず、ひそかにピアノの響きに託したとしか思えてならない。
もっと生きていれば、どんなに素晴らしい曲を書き続けてくれただろうと思うと残念でならない、この気持ちは私だけではないと思う。
ピリスのピアノ、そのシューベルトの憂いというか死に対する悟りの気持ちにぴったりと寄り添って歌うに歌ってくれている、彼の死に際の願いが乗り移ったかのように。
前にこのブログでも紹介したが、しばらく退いていた演奏生活から復帰後に録音したショパンの「ワルツ集」の華麗とも言っていい素敵な表現、続いて録音したこの盤の中身の濃い深みある演奏、「さなぎから蝶へ」、復帰前に比べおどろくべき変身ぶりというしかない。
この盤に一緒に録音されている2曲の即興曲(作品90の3と4)が、さらに輪をかけて詩情に溢れているのも嬉しい。
録音も好ましく、シューベルトの情緒を大切にしたしっとりとした音がスピーカーを振るわせる。
あえてこの曲のベストスリーを挙げると、
・マリア・ジョアオ・ピリス <ERART>
・スヴャトスラフ・リヒテル <Victor>
・ワルター・クリーン <VOX>

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