figromage

流出雑記 

2011/7/10

2011年07月11日 | Weblog
香りのするものが好きだが、私自身香水が大好きで毎日つけるというわけではない。
調香に興味を持ったのは、五感のなかで置き去りにしているように思われた嗅覚が気になったからだった。そもそもにおいのするものは好きだったが、アロマを楽しむとか香水を集めるという他に嗅覚を使う事はもっとないだろうかと思っていたとき調香に出会った。

日常のなかで嗅覚をいちばん使うのは台所。料理と調香はよく似ている。
料理はもちろん味覚によるところが大きいが、バランスをとるためにいろんな調味料を使って味を整えていくところは、香りを組み立てていく感覚に近い。料理が好きなのはやはりそういうところがおもしろいからだ。単に食い意地が張っているというのもあるが。

調香をはじめて間もない頃はイメージに沿う材料ばかり選んでいた。しかしこの頃、ひとつの香りが完成に近づいて来て、でもどこか拡散性にかけるなあと思ったときに、あまり手を付けなかった要素の香りを加えると、わっと咲いたように香りが膨らむことがある、ということがわかってきた。逆に1滴によって香りが沈んでしまう場合もある。そうしたときに何を加えれば再浮上するか、とにかく瓶の中の液体の輪郭を縁取るような作業になる。
最初にある香りのイメージと現実的にその香り立ちのバランスを取る作業のなかで着地点を探す。

今ふたりの人に頼まれた香りを組み立てている。
それぞれに好みの香り、どの季節に向くものか、など香りのかたちをつくる為のイメージを聞いて試作する。それを一度嗅いでもらって調整し、小さいアトマイザーに入れて実際に試してもらう。試香紙の上で嗅いでいるのと肌につけてみるのとでは香りが違って、つける人自身のにおいと混ざってひとつの香りなので、それは試しておかないといけない。それで最終的に調整してガラス瓶に入れて完成。

よい香りとは何か。
ゲランの夜間飛行という香水に憧れていたが、自分の肌につけるかおりとしては非現実的だった。名香と言われるものでも、自分がつけるとなったらどうにも重厚すぎてまとえない香りだった、ということがある。
市販されているものの中に好みのものを見つけることは出来るが、売り場で「芸能人の~さん愛用」など書いてあると良いなと思ってもああこれは既に誰かの香りでもあると思ってしまう。

それで香りを当て書きというのをやりたいと思った。
今までもそう考えたことはあったし、実際に作った事はあった。
手持ちの香料の限界や技術的な部分での不安もあるが、香水を頼んでくれる人の嗅覚にとってよい香りを探す事はできるのではないだろうか。
調香と今後どう関わるべきか長らく測れないでいたが、その間に他者を挟む事によってようやく焦点があったように感じる。