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流出雑記 

2010/07/24

2010年07月24日 | Weblog
大阪で仕事。正午過ぎ、日陰のないアトリエまでの道のり、帽子の陰から公共施設の植え込みをぼんやり眺めながら歩いていた。連日の日照りで草花は限界寸前の顔をしている。ここ数日降ってないので、そろそろ夕立ちが来ても良いのにと思っていたら、その日の夕方ちょうど降ってきた。
そんな具合に良い雨が降ると、実家に来ていた住職が「良いお湿りで」と言っていたのを思い出す。若すぎるとどうにも身の丈に合わない言葉も歳を重ねるとある程度しっくりきて使えるようになるけれど、「良いお湿りで」はまだまだ遠いと電車に揺られながら思っていた。


ひとつ前に書いた名無しの草のことを調べてみた。
「白い葉のような花」と打ち込んで検索ボタンを押すと、すぐさま正体がわかってしまった。

半夏生

ハンゲショウ
名前の由来は、半夏生(太陽の黄経が100°になる7月2日頃)に花を咲かせることに由来する説と、葉の一部を残して白く変化する様子から「半化粧」とする説がある。日本の本州以南、朝鮮半島、中国、フィリピンなど東アジアの亜熱帯性湿地に分布し、日の当たる湿地などにて太い地下茎で分布を広げて群生する。
日本では、生育に適した土地が減少していることから自生株は近年減少傾向にあり、地域によっては絶滅が懸念されている。 らしい。

なんどかこれを全部抜いてしまって睡蓮鉢にしようかと考えたが、ずっと実家にあったものを持ってきたので、毎年秋になると枯れて姿を消すのだが、根はずっと残っていて記憶をもっているように思えて、植え替えに踏み切れなかった。植え替えなくてよかった。
ハンゲショウという言葉と植物が夏を思うときの記憶のなかに根を張る。何気ないものでも、そういうふうに世の中にあるものと親密になる感じが好きだ。

夏の夕暮れ、実家の庭に水をまくと、日中に日差しにさらされてからからになった緑が水を得て表情を変える。土の匂いがして少し涼しくなる。小学生の頃は祖母に代わってホースで水をまくと縁側に面したガラス戸のあたりまでびしょびしょにして怒られた。
水苔の上を飛んでいたサギソウ。
真ん中はいつ咲くのか疑問だったガクアジサイ。
夏のはじめに咲く紫のとても美しい花があった。母に名前を聞くとテッセンと教えてくれた。子供の頃テッセンというのは英語だと思っていたが、後にテッセンとは日本語で、英語ではクレマチスというのだと知った。
しかもテッセンは漢字で書くと「鉄線」。つるが強いことからそう呼ばれるようになったとか。茶花に使われているが、そもそも在来種ではないようで、それでなのか和花ばかりの庭の中でなんとなく少し違う趣を感じてテッセンは英語だと思い込んだのかもしれない。

いつからそうだったのか知らないが、実家では夏になると近所の酒屋から瓶の三矢サイダーをケースで買っていた。なので冷蔵庫にはいつも冷えたサイダーが入っていた。
その酒屋は今はセブンイレブンになっている。
缶でも瓶でも三矢サイダーは同じかも知れないが、瓶に透けたサイダーの色や栓を抜く音、ガラスのコップに注いで飲んだ記憶が瓶の方がおいしかったと後押しする。瓶の三矢サイダー、探せばどこかにあるだろうか。