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みうらじゅん「正論」

2010年05月25日 17時30分07秒 | 読書
みうらじゅん「正論」     コアマガジン

 そんなわけで、みうらじゅん対談集「正論」。対談相手を列挙。
峯田和伸(銀杏BOYZ)/山田五郎/杉作J太郎/遠藤賢司/田口トモロヲ/ウクレレえいじ/和嶋慎治(人間椅子)/根本敬/ROLLY/いとうせいこう /安齋肇/猫ひろし/水野晴郎/喜国雅彦/大槻ケンヂ/泉麻人/西城秀樹/久住昌之/しりあがり寿/松久淳/RYO(ケツメイシ)/高木完/内田春菊 /JAGUAR/カーツさとう/清水ミチコ/ATSUSHI(ニューロティカ)/スチャダラパー/はな/リリー・フランキー/南伸坊/泉晴紀/山口隆(サンボマスター)/井筒和幸/久本雅美/吉田豪

 何人か知らない人もいるけれど、ほとんど知ってる(でも、なぜ、ジョー秀樹?)。前回タモリが昼帯に進出するようになって、サブカルは消えた、と言ったのは、こういうことだ。彼らはあの時期を境に、「サブ」ではなく日本の「メイン」カルチャーになってきたわけだ。
 だって、リリー・フランキーの小説がベストセラーになり、しりあがり寿が朝日新聞で四コマを連載している現在、彼らをサブと呼ぶには抵抗があるだろう。
 あの「不思議大好き」の時代にはみうらじゅん世代が「けっ」と思う権威主義的文化が存在していて、彼らはサブカル(カウンターカルチャー)という形でその権威主義的文化を切り崩していった。彼らのその活動はあまりにも魅力的だった。だから愛好者や追随者は、いつしか彼らが切り崩している権威主義を拡大解釈していった。
 たとえば音楽に関しても、バッハそのものが悪いのではなく、バッハという権威にしがみついている層に対して「けっ」と言ったわけなのだけれど、それが「バッハなんて聞いてるヤツ古臭い」になり、挙句の果て「バッハってなに?」という流れになった。
 つまり、反権威主義が、いつのまに反教養主義に変わっていったわけである。
 だけど、バッハにしがみつく層を批判していた坂本龍一や浅田彰などは、実はバッハをよく知っていたのだ。反教養主義ではなかったのだ。
 そして、反教養主義が完全に日本を席巻した現代、ある日高橋源一郎はショックを受けた、と言う。ついにこの日が、と。なんと東大の文学部の大学院にドストエフスキーを知らない人間がいた、と。読んだことがないのではなく、知らないのだ、と。彼が教えている大学には文庫本を知らない学生が出現した、とも。
 つまり、2010年において、かつて大人の固苦しい権威主義的な文化をあざ笑うかのようなサブカルチャーは存在し得ない。だって、そんな文化(あるいは文化そのもの)なんてないんだもん。

みうら 自分なんて特にサブからだと思って、味を占めて生きてきた人間ですよ。サブカルって何の影響がないから、楽に生きてきたんですけども、段々「サブカルは単なる世代のことである」ってことがもうばれちゃって、俺らの後に続く人もいないわけですよ。単なるジェネレーションのことなんですよ(みうらじゅん&松久淳)

 そう、あの時代のあのジェネレーション、それがサブカルだったのだ。そしてその時代のサブカルを横目で眺めつつ、一部をのぞいて距離を置いた青春時代を過ごしたぼくは、なぜかここ10年くらいサブカルの人たちの仕事を追うようになった。
 そしてこのサブカル大集成対談集。すばらしい。そこかしこに名言が散りばめられている。
 もっとも、その名言がどこに散りばめられているか、と言えば、チンコとウンコとオナニー話の上になんだけど。

トモロヲ 人生って、自分がいかに天才じゃなかったっていうこととの戦いだよね。若い時は、自分は天才だ!なんて簡単に思えるけどね。
みうら  ひょっとして天才じゃないかも?って疑いだした時から悩みが始まるもんね。
トモロヲ 天才は世間のこと気にしないもんね。
みうら  言い方だけで、本当はキ*ガイのことだもんね。キ*ガイにはなりたくないわ、天才にはなりたいわってのはどだい間違ってるんだよね。
トモロヲ 都合よすぎだよね。  (みうらじゅん&田口トモロヲ)

 鋭い。もっとも、この話は、田口トモロヲがライブハウスでゲロ吐くパフォーマンスをハウス側に禁じられたので、脱糞してみせた、というエピソードに続くんだけれど(詳述はしないけれど、このエピソードは細かな部分が大事)。一事が万事、下ネタと根拠のないいい加減な感じで話は進み、そこから名言がつむがれていく。なんというか、名言を生む肥やしとしての下ネタ(なんだよ、それ)。
 リリー・フランキー得意のクンニ話、山田五郎やいとうせいこうの体育会系ディスなど、ニヤニヤさせながら、ところどころ鋭い言が飛び出す、みうらじゅんだからこそ引き出せる名言の数々。素晴らしい対談集。
コメント (4)
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