毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

桂枝雀

2007年05月31日 11時06分47秒 | 出会ったものたち
 最近「すびばせんね」と謝る桂枝雀の物まねが絶品だと評判のわたくしです。自転車で荒川沿いを走って熊谷だの森林公園だの行く機会が多く、その間ウォークマンで落語を聞いている(あくまで自転車道のみ。一般道ではウォークマンを外します)。
 今よく聞いているのが2代目桂枝雀。この人の訃報に接したとき、なぜ? と思ったけれど、聞き込むにつれ、なんだかわからんこともないなあ、と思うようになってきた(と、関西弁が移ったか)。
 彼の古典は、一見、変な声や顔で笑わせているように思われるかもしれないが、実は突き放したような遠くから生を眺めて語っていることに気づいた。
 その感を強くしたのが、自作のショートコント。実に、死と不条理と夢が多くテーマとなっている。
 「代書屋」だって、彼は遠くから代書屋の客を眺めている。そしてそれをきわめて意識的に演じている。だからこそ、あの抱腹絶倒が生まれるのだ。
 そんな中、ぼくが今んとこ一番好きなのは「貧乏神」。実に絶品である。貧乏神にまで同情されるどうしようもない男。女房にも逃げられ、仕方なく貧乏神が彼の世話を焼くようになる。長屋の洗濯物を引き受けて小銭を稼いで彼を助けるのだ。貧乏神が空を見上げ、「えぇ夕焼けやなぁ、明日もお天気えぇやろなぁ、洗濯もんがよぉ乾くわ」と一言つぶやいたとき、なんとも言えない風情に気持ちが満たされてしまった。
 荒川を走りながらふと見上げると、土手の上の空が青くまぶしかった。
コメント
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