エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

春の予感

2014年01月25日 | ポエム
淡淡とした春の色が見え始めた。
折しも、昨日は南風があって温暖な気配が地上を覆った。



南風は、風力を問わず暖かいのである。
人は、表に出て日差しを浴びた。
ぼくもまた、日差しに飢えたかのように浴びたのであった。



この気配の中にあると、ものみな春の色に感じられるから不思議である。
枯れた葉の間に挟み込まれた、若葉の色が新鮮であったりする。
あるいはまた、空に突き刺さった冬木立の梢が青空を区切るとき・・・それは春の予感であったりするのだ。



この佇まいは「冬萌」ではなく「春萌」である。

書を捨て街に出よ!
と、誰が詠ったか忘れてしまった。
そんな忘却の彼方から、予感という形而上の記憶が蘇る。







「枝が区切るシンコペーションの空寒し」







一昨日は、温泉に入ったけれど昨日は家風呂で温まった。
どこかから、救急車のサイレンが聞こえてきた。
箱の中の寝台に寝かされいるのは「誰だろうか」などと夢想しつつ、湯を身体に遊ばせた。



皮脂の削ぎ落ちた皮膚から、湯が滑り落ちて行く。
もはや、肌とも言えない肉体の被り物が・・・だがしかし生きていると叫んだ。




        荒 野人