このところの電車の中、右側では若い女性が、左側では鞄を持ったサラリーマンがスマホの画面に向かってしきりに人差し指を動かしている。これからはスマホの時代、世の中に遅れてはいけないと思い、何の準備もなくヨドバシカメラに買いに行った。
沢山並んでいて全く分からない。携帯と同じdocomoの売り場に行き「画面が大きくて、薄くて、軽いもの」という理由で選ぶことにした(MEDIAS N-06D)。販売員からは「ルータがどうの、WiFiがこうの、メールはIモードからSPモードに、Andoroidは・・・」と普段聞きなれない言葉の説明を受けた。「僕のような年齢の人で話が通じる?」と聞いたところ「年齢に関係なく説明に時間がかかります。」との答えだった。そこで「沢山機能があって難しくない?」と聞くと「慣れの問題です。ただ携帯よりは慣れるのに時間がかかると思います。携帯とスマホの2台を持つ人もいます。」と話してくれた。
使い始めれば何とかなると思い我が家に持ち帰って箱を空けると説明書が入っていなかった。電源を入れるとすぐに画面が立ち上がり意味の分からないアイコンが沢山表示されてきた。試しに家内の携帯に電話を掛けてみた。声が小さかったがとにかくつながった。ところがすぐに画面が真っ黒になって電話を切る赤い印(携帯と同じ)が消えて切ることが出来なくなった。仕方なしに電源をOFFにして強制終了した。
次はメールだ。画面を指でこすりながら宛名を探し決定ボタンを押す。いよいよ文章入力だ。ところが文字変換がうまくいかないだけでなく、表示された文字がなかなか正確に選べない。何故か隣の文字を指してしまう。長い時間をかけて漸く入力が終わり送信して一安心と思ったところ、別の人からメールが入ってきた。読むことはできたがうまく返信が出来ない。「これは困った。」と思いdocomoのHPに掲載しているマニュアルを見ながら操作することにした。そのうちにアドレス帳が表示できなくなりdocomoショップへ相談に行った。どこで間違えたかわからなかったがアドレス帳を消してしまったことが原因だった。
ショップの帰りに本屋に立ち寄り「アンドロイドは初期設定で使うな。」という本を購入してきた。最初ページに大きな字で「買っただけでは誰も使えない」と書いてあった。この本によると画面が真っ黒になるのは消費電力を減らすためでパソコンのスクリーンセーバ-と同じ機能だった。電力消費量を抑えるには自分で設定しなければならないことがわかった。画面の明るさを落とし、バックライト消灯時間を2分にのばした。ところが今度は明るいところでは画面が見にくくなった。結局明るさを元に戻して、バックライト消灯時間を2分とし頻繁に充電することにした。
電話を掛けることはできるようになったが、相変わらずうまく電話を切ることが出来ない。受話器を置く赤いマークを押せばよいのだが、このマーク表示に時間がかる。電源OFFによる強制終了の方が簡単だ。留守電に溜まっている伝言もうまく消せないでいる。ショートメールを試してみたが送信できない。ヨドバシカメラの販売員が「携帯とスマホ2台持つ人がいる。」と言ったことがいまになって分かる気がした。
スマホは小さなモバイルコンピュータだ。ダウンロードすればゲームだけでなく必要な資料や本を読むことができる。ナビや財布の変わりが、写真だけでなく動画も撮れる。プリクラのように周囲に模様をつけて写すことだってできる。その他、時計・計算機・スケジュール、ワンセグTV、ほか便利な機能が沢山あるが、まだあまり使っていない。一方いままで携帯でできたパソコン(Nifty)のメールをスマホで見ることや、新幹線の予約登録がまだうまくいっていない。どこか設定を間違えているのだろう。
最近のニュースに、「近々シニア向けに易しい使い方のスマホが発売される。」とか、「使い方の容易さが販売競争の焦点」という記事がでていた。私のようにスマホで奮闘している人が思っている以上に多そうだ。息子は「スマホはボケ防止に役立つ。」と言っていた。
購入して2週間、スマホは携帯電話よりもパソコンに近いことに気付いた。初めは、すぐに慣れると思っていたが、自由に使いこなすにはあと2~3ケ月かかりそうだ。私はいま、電車の中で画面に向かってしきりに指を動かしてメール送信やニュースを見たりすることがある。何も知らない周囲の人は「あのおじさんは、スマホを自由に使ってメールや情報収集をしている。」と思う人がいるかもしれません。実は指を沢山動かしているのは思った画面に中々たどり着けずに元に戻したり先に進んだりを繰り返していること、文章を作成するときに隣の文字を選んでしまい修正に時間がかかっているからなのです。
近々docomoショップへ行って ①電話を素早く切る方法 ②たまった留守電の簡単に消去する方法 ③メールの返信の仕方等を教わってこようと思っています。また地域の広報誌に出ていた「スマホの使い方」にたったいま申し込んできました。つくづく「買っただけでは誰も使えない。」を改めて感じているところです。
(奥山 巖)