栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (40) ”恩田川の鯉” (Okubo_kiyokuni)

2015年09月30日 | 大久保(清)

 

恩田川の鯉

 恩田川の散歩での一番の友達は鯉である。自宅から上流に遡り、東京町田市の区域に入ると桜並木の素晴らしい川筋にぶつかるが、鯉を余り見かけない。汚れを好むのか、下水の影響か定かではないが、下流に向かった横浜地区には鯉が豊富である。

 川を眺め続けているが、毎年、鯉の数は増え続け、このごろは、まるで川面から湧き出すように、えさを求めて黄色い口先を大きく開けた鯉が、土手道を通る散歩人を見上げように尾を振りながら寄ってくる。黒っぽい鯉に混じって、色とりどりの錦鯉も目立ってきた。錦鯉との出会いをその日の運勢占いのように楽しみにしていたが、毎日、大吉ではありがたみが薄れてくる。高価な錦鯉が増えるのは、捨てられる犬猫の状況と同じなのだろうが、錦鯉たちは群れず、黒い鯉のグループとも離れて泳いでいる姿が目に付く。育ちが違うのだろうか。でも大変だな。

 鯉はとても長寿の生き物らしい。五十年以上も生き続ける鯉もいるそうだ。愛犬の寿命が十四、五歳であるのを考えると、一生付き合えるペットである。散歩中に出会う鯉は皆大きく育ち、まな板に載せれば、何人前もの鯉こく料理ができる胴回りだが、若い鯉はどこを泳いでいるのだろうか。目を凝らすがなかなか見当たらない。恩田川に巣を持つ川鵜軍団、白鷺たちのえさになるのは理解できるが、多分、幼魚は鯉にも食べられてしまうのであろう。これは自然界の掟なのだ。今日は運よく、茂みのある浅瀬近くにまだメタボにならないスリムな一群を見かけた。彼らは、えさが撒かれる大舞台にはまだ出られない身分なのであろう。

  少年時代は、川をせき止めたり、ザリガニの剥き身で、手製の竹竿で釣りをして楽しんだが、この頃の子供らは、過保護のせいか、いたずらをしない。させてもらえないのだろう。昔の子供たちが今の鯉を見たならば、すぐに鯉はどこかに消えてしまうはずだが、飽食気味のこの時代、臭くて釣る気もしないのだろうか。聞くところによると、一ヶ月も真水に泳がせれば臭みが消えるというが、そこまでして食べる人もいないだろう。これは、今だから言えることで、将来の日本の食料事情は誰も分からない。

 また、護岸工事が始まったようだ。あまり手をつけない自然の河川の姿が、ここをねぐらにする生き物達には有難いのだが。濁りもあり、淀みのある葦が繁る浅瀬が望ましいのだが。わしら老人にも今のままで良いと思うが。段々と鯉クンも住みづらい環境になりつつある。何かが、おかしいと思う。町田市側の川筋は、環境がよすぎるのか清潔すぎて冷たく感じる。街の近くを流れる川は、どこまで人間本位に、また、人間臭くしていくか考えどころでもある。

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きよちゃんのエッセイ (39) ”縁側” (Okubo_kiyokuni)

2015年09月22日 | 大久保(清)

縁側

 この頃のホームドラマを観ていて気がつくことがある。一戸建て、小奇麗な家、主人公が門のチャイムを鳴らし、洒落た玄関ドアーをあけて、ドラマが始まる。見慣れてしまうと、ごく普通の光景になってしまったが、昔の記憶を手繰ってみれば、日常の生活では、玄関よりも、縁側や台所で出会った人たちの思い出が多く浮かんでくる。玄関から出入りする人はお客様か、何かあらたまった折の出来事につながっていたような気もする。

  昔は、長屋であっても、小さな戸建てであっても、それなりに門があり、小さいながらも庭もあった家が多かった。普段のお付き合いは、玄関を開けてお邪魔するよりは庭にまわって、縁側ですませる腰掛話も多く、商売人との会話は台所で済ませることもあったように思う。植木屋との語らいも縁側あってのことである。縁側を通しての付き合いは何か、気取りのない内輪の人の付き合いで、殆どの生活情報はここから始まり、生活の一時の社交の場でもあった。

畳の部屋に上がるのも憚れるような話ばかりで、その日のその日の気持のぶつけあい、町内の親睦とあらたまった気持ちもなかったが、あのひと時が日本人らしい姿の原点ではなかったのだろうかと、とても懐かしく思えてくる。

  当時は今のように子供部屋を持つゆとりもなく、畳の部屋の外側にある縁側は子供たちでも遠慮なく占有できる遊び場であった。雨降りで、外で遊べない時、明るさが残る縁側に陣取り軍人将棋やメンコに夢中になっていた。バケツに雑巾、このシーンは、今では戦時中の映画にしか現れないが、つい少し前までは尻を跳ね上げて裸足でつんのめるように走りながら雑巾がけをしていた。夏休み、冬休み、雑巾がけが朝の日課として、家庭教育の場でもあった。遊びつかれた三時のおやつ、縁側に座り、友達とスイカの種を庭先にとばしあっていた。

畳の部屋の電灯を消し、暗闇の縁先で夕涼みがてら、線香花火のしずくに目をやる。涼しい風も火の玉を揺すり、落涙すると子供らのため息がもれる。冷たいカルピスを運んでくれた母の顔も浮かんでくる。畳の部屋と庭の間にあった縁側は、家の外と内とをほどよくつないでくれていた。

使い古した言葉であるが、茶の間の一家団欒が、内向きの家族の世界であるのに対し、縁側が、まわりの住人と上手に付き合う外に開いた世界でもあった。風通しの良い、交流の場を演出する縁側は、今様の住宅にはあまり取り込まれていない。個人の空間を優先すれば、自ずと消滅する運命なのだろう。

冷暖房施設の整った小奇麗な家は快適であるが、縁側のない家は、季節を肌で感じながら、人と人がほどよい距離で付き合う場所をも取り去っていった気もする。

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似ている?似ていない? (その2)(Odera_Shigetaka)

2015年09月16日 | 小寺

ザルティア錠の有効成分

 ザルティア錠は2013年11月29日開催の医薬品第一部会で審議され、その質疑応答で販売名について議論されている。ザルティア錠の有効成分はタダラフィルである。同じ有効成分でありながら「シアリス錠」、「アドシルカ錠」、「ザルティア錠」と名前をどうして変えているのかという議論である。販売名類似についての議論ではないが、ED治療薬について御関心のある方がおられるようなので、議論とその背景を以下に示す。

日本で承認されているED治療薬の有効成分はシルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィルの3つである。バイアグラ錠が最も有名で、レビトラ錠やシアリス錠も知る人ぞ知るである。いずれも医師の処方箋を必要とし、また健康保険の対象外である。なお「65歳以上はED治療薬の投与対象ではない」と厚労省はみている。

2014年5月にバイアグラ錠の後発品が東和薬品(黒柳徹子さん御推奨)から発売され、昨年中に更に8社から後発品が発売されている。後発品も健康保険の対象外である。

有効成分

英字商標

先発品の販売名

承認日

効能効果

sildenafil

(Pfizer)

Viagra

バイアグラ錠25mg、50mg

1999.01.25

ED治療薬

Revatio

レバチオ錠20mg

2008.01.25

PAH治療薬

vardenafil

(Bayer)

Levitra

レビトラ錠5mg、10mg

2004.04.23

ED治療薬

tadalafil

(Eli Lilly)

Cialis

シアリス錠5mg、10mg、20mg

2007.07.31

ED治療薬

Adcirca

アドシリカ錠20mg

2009.10.16

PAH治療薬

Zalutia

ザルティア錠2.5mg、5mg

2014.01.17

前立腺肥大症に

伴う排尿障害

バイアグラ錠は肺動脈性肺高血圧症 (PAH) に対する臨床試験が行われ、その折、小児へもバイアグラ錠という名称のままで投薬されたが、小児が「バイアグラ錠を飲んでいる」とイジメられ、その結果、PAH治療薬としては「レバチオ錠」の販売名で承認されることになったという。同様にタダラフィルでも「アドシリカ錠」の販売名が採用されたという。

「レバチオ錠」、「アドシリカ錠」は健康保険の対象となっている。前立腺肥大症に関する適応では65歳以上の患者が多く、ED治療薬の投与対象でない患者が「シアリス錠」として処方された場合、ED治療薬の名称のまま服用することにより「精神的苦痛」を受けるということで、「ザルティア錠」になったと厚労省は言う。

本当かな?「65歳を過ぎて未だED治療薬を飲んでいる」とイジメられるのかい?保険薬価をつけるに際し、適応別に販売名を別にした方が都合がよいからじゃないの?

どうも70歳を越えると疑り深くなったようだ。とにかく販売名を変えても同じ有効成分、同じ含有量ならば、同じ薬効を発現する。排尿障害を改善しようとしたら興奮しちゃった、なんていう副作用(主作用か?)も起こりうる。

まあ、自身、前立腺肥大気味ではあるが、ザルティア錠のお世話にならない余生を過ごしたいものである。

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似ている?似ていない? (その1)(Odera_Shigetaka)

2015年09月03日 | 小寺

 ==小寺君からの投稿です。長文ですので2回に分けて掲載させていただきます。==

 似ている? 似ていない?

 商標調査だけではリスキー これ常識

東京五輪のエンブレム、佐野研二郎氏制作案の使用中止が2015年9月1日に決定した。このエンブレム、7月24日に発表されたが、即日、ベルギーの劇場のロゴに似ているとの抗議をベルギー人デザイナーから受けた。大会組織委員会は「国際的な商標調査を行い、類似する登録商標は無かった」と言い、使用し続けるのに問題が無いとの立場をとった。

東京医薬品工業協会の商標部会で一緒に仕事をした友人と7月末に話をした折、「商標調査で類似する登録商標が無かった」だけで「問題が無い」とするのは非常識であり、商標出願されていない図形やロゴに類似するものが無いか、なぜ著作権を確認しないのか疑問だなあと意見一致した。登録商標でなくても似たロゴがあれば、リスクを冒して使用継続すべきではなかった。しかし、「IOCも使用継続を認めている」というお墨付きを得て、東京都もスポンサー企業もエンブレムを使い始めてしまった。他方、ネット上で批判が相次いだ。ダウンタウンの松本人志は「たいしたデザインでないのに・・」と酷評した。

8月28日、大会組織委員会は「佐野氏の原案は第三者の商標と類似するおそれがあり、佐野氏へ修正を依頼し、最初の修正案は躍動感が薄まったとして更なる修正を求め、第二次修正をもって正式採用したものである」と発表したが、これが火に油を注いでしまった。結局は使用中止となったが、もっと早くに中止しておれば、被害拡大(300億円以上と推察されている)を防げたのにと惜しまれる。

 

医療用医薬品の販売名類似

 二つの商標が非類似であると特許庁が認定していても、これは識別力のある商標審査官が似ていないと判断したものであって、一般人によるものではない。これは医薬品の販売名を巡っても同じことが言える。医薬品の販売名を採択するとき、登録商標であるというだけで使用するのはリスキーである。他社の医薬品と取り違えを起こさないよう、十分に調査し、使用の安全を期す。今日、医療用医薬品の販売名の採択に当たっては販売名案について日本医薬情報センター(JAPIC)(http://www.japic.or.jp)の「医薬品類似名称検索」で調査し、「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」(2005年10月版)に照らし、

その販売名案を採択できるか検討する。既存の医療用医薬品と販売名が似るものは厚労省が承認しないという仕組みが10年以上前に構築されている。

この仕組みが構築されるよりもはるか昔に承認され、今も販売名変更されていない類似名称薬がある。例えばノルバデックス錠とノルバスク錠のように頭3文字が一致する薬剤があり、何度も注意喚起されているが、取り違えが無くならない。今年5月にもAstraZeneca社とPfizer社の連名で注意喚起のお知らせが出されている。男性患者に対し乳癌用であるノルバデックス錠を処方する医者が未だ存在するのだから外資系会社が呆れるのも仕方が無い。高血圧用であるノルバスク錠は後発品(一般名アムロジピン)が多数出ており、ノルバスク錠の採用を止めた病院でオーダリングシステム収載の医薬品リストから「ノルバスク」を消去したのに、ノルバスク錠を処方しようとして医師がノルバデックス錠をノルバスク錠と思い込んでしまったなんていう事例もあるが、幸いに薬剤師が処方の誤りに気付いて医師へ疑義紹介し、男性患者へ乳癌用の薬剤が渡されるには至らなかったようである。ノルバスク錠を処方されていた高血圧症のあなた、もらった薬を確認しましょう。

 2015年7月に「デュファストン錠とフェアストン錠の取り違え事例発生のお知らせ」がAbbott社と日本化薬の連名で出された。Abbottのデュファストン錠は1965年10月に発売され、他方フィンランドOrion社からの輸入品フェアストン錠は1995年6月に発売され、産婦人科領域で長年に亘って共存していた。両者は語尾が共通するものの、販売名が類似しているとは言い難い。薬剤師がなんでこんな取り違えを2件も発生させたのか、お粗末である。2件とも女性患者が気付いて返品されたとのことで障害にはならなかった。

 

最近に厚労省が承認してしまった販売名類似?

「ザイティガ錠とザルティア錠の販売名類似による取り違え注意のお願い」というお知らせがJanssen社とEli Lilly社の連名で2015年6月に出された。医薬品医療機器総合機構(PMDA)(http://www.pmda.go.jp)で「安全性情報・回収情報・添付文書等」をクリック、「医療用医薬品の情報」の下の「適正使用に関するお知らせ」をクリック、「製薬企業からの医薬品の適正使用等に関するお知らせ」をクリックするとこのお知らせを見れる。実際に取り違えによる事故は発生していないようだが、65歳以上男性患者の前立腺に係る疾病に対して使用される薬剤であるという共通事項があり、注意喚起された模様である。

Eli Lilly社のザルティア錠2.5mg、同5mgは前立腺肥大症に伴う排尿障害改善剤として2014年1月17日に承認され、同年4月17日に薬価収載と同時に販売開始された。他方Janssen社のザイティガ錠250mgは前立腺癌治療剤として同年7月4日に承認され、同年9月2日に薬価収載と同時に販売開始された。販売開始後に医療現場から販売名類似と指摘されたようであるが、本当に類似なのか、分からない。

 特許庁はザルティア、Zalutiaを2001年に商標登録、ザイティガ、Zytigaを2011年、2012年に商標登録しており、両者を非類似としている。まあ当然である。 商標部会の友人に依頼してJAPICの「医薬品類似名称検索」で「ザルティア」と「ザイティガ」の類似度を調査してみたが、editは2(2文字目と5文字目の2文字違い)、headは1(頭1文字が一致)、類似度係数cos 1が0.60、等々の結果であり、「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」に照らしても要変更とならない。従って既に発売されていたザルティアと比較し、ザイティガが販売名類似するかについて審議されなかったらしい。ザイティガは2014年4月30日開催の医薬品第二部会で審議されたが、審議議事録を見ても販売名が審議された形跡は無い。結局、これまでの基準で引っかからない事例が出てきたということらしい。

     (その2)に続く、1週間後掲載予定)

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きよちゃんのエッセイ (38) ”赤い鳥” (Okubo_kiyokuni)

2015年09月02日 | 大久保(清)

赤い鳥

 

 ―――あのさー、この頃面白いことが続くんだよ、先月ね、家の掃除をしようと窓を開けたらさー、緑色の手のり文鳥が飛び込んできてさ、それから家に住み着いているの、それがね、昨日さー、今度は黄色いカナリアがまた飛び込んできて、少し変だよなーーーと、こちらの顔を覗きこむように、目で同意を求めてくる。

これを聞いて不思議なこともあるもんだねーと簡単に結んでおけばよかったが、たまたま、そのオジイサンの口調が面白く、同じベンチに座っていた縁で、思わず口が滑ってしまった。

――今度、赤い鳥が舞い込んできたら。いよいよ、お迎えの挨拶かねーー

オジイサンはこれを聞いて、一瞬何を言ったかと、こちらの顔を眺めたが、ほんの少し間をおいて、ニヤッとしながら、

――そうだなー、あんた面白いことを言うねー本当にそうだーと、笑い出して止まらない、笑いながら頷いて、またゲラゲラ笑っている。屈託がないといえばそれまでだが、お互い老人の本音をついた、ジョークのやりとりである。

 これは、たまたま老人と隣り合わせで公園のベンチに座って、葉桜を眺めていた時の出来事だ。始めてあった知らぬ者どうしが、なぜか、歳を取るとお互いの垣根が消えていく。肩書きがついていたときのようなしがらみが取り払われ、裸になって、少し本音の、ここだけの、旅のかきすてのような、人生の旅路のほんの一瞬の時間を共有する。このお互いの話しの間の中に、老人しか分からない味もある。おそらく、お互いの心のうちは分かるまい。ほんの少し、お互いに分かったような錯覚が芽生えれば、それで満足なのだ。

 この老人とは多分、馬が合うだろう、だが、あまり深いりしないほうがいい。これが老人の公園レビューの鉄則である。老人との会話は、最初の取かかりも大切だが、別れ際の言葉も肝心だ。

 散歩途中の一服でベンチにすわり、話し相手を求めていたところに座ってしまったときがある。誰かに聞いてもらいたいのだ。聞くのも少し技術がいる。話は瞬く間に、時間を越え、空間を越える。聞いているのもくたびれる時もある。でも、不思議と、どんな老人でも何処かの人生の断片で、お互いの時間を、場所を、思いを重ねたことがあるものだ。

 相槌を打ち聞いているが、こちらも少し喋りたくなる。この話のやり取りができる老人は、ベンチで共有する楽しいひと時を与えてくれるが、多くは、ワンサイド・ゲームになる。喋りっぱなしの、聞きっぱなしの状態になる。ここで機嫌よく分かれる技も学んできた。誉め別れである。嬉しく笑ったところで、そろそろと腰を浮かす。

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