栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

再生可能エネルギーの現状と、電力のベストミックス想定(その4)(Kojima_Shiro)

2015年04月10日 | 黒川・小島(四)・後藤

再生可能エネルギーの現状と、電力のベストミックス想定(その4)>

7.今後の各種エネルギー発電の動向

2016年(平成28年)電力小売り全面自由化を前に、電力事業関連のビジネスチャンスが拡大している。自由化に向け多くの企業が新電力に参入し、既に6月時点で274社が登録されている。再生可能エネルギー発電は大型化を志向し、高設備利用率を持つシステムへの開発シフトが予想される。また、エネルギー自給率向上や環境に優しい新エネルギーの開発も加速される。さらに、エネルギーの地産、地消で市民発電所開発も進むと考えられる。

(1)原子力発電

再生可能エネルギー発電の導入、新エネルギーの開発が急速に進んでいる。一方政府はエネルギー基本法で原子力発電をベース電源として重要電源と位置づけ再稼働に向けて安全審査を実施している。しかし高いハードルの安全基準を容易にクリアー出来ず、また住民の理解を得ると云う難題もある。12発電所19基が審査申請しているが大幅な遅れとなっている。平成26年7月16日原子力安全委員会は再稼働に向けた安全審査を申請していた九州電力川内発電所1,2号機について事実上合格を決定した。8月15日まで国民からの意見公募を受け付け、8月下旬に正式に合格が決まる予定である。設備の検査や地元自治体の同意等の手続きを済ませれば再稼働が可能になり稼働は10月になると予想されている。また新しく建設準備中のプラントは着工が未定で、工事中の発電所の完成稼働も決まっていない。この様な状況下では、将来発電停止の状態のままで寿命を迎える発電所が出る可能性がある。

(2)再生可能エネルギー

太陽光の大型発電所の稼働、風力の洋上シフト、地熱、風力、中小水力の規制緩和、設備費の価格低下等で導入が加速すると考えられる。2016年(平成28年)から実施される電力自由化に向けて発電事業参入企業が大幅に増え、再生可能エネルギー発電稼働にも拍車がかかると予想できる。

(3)新エネルギーの実用化

2017年(平成29年)からシェールガスの輸入の見通しが付き、加えて水素の液体化、ガス化などの技術開発が実現し燃料電池車、大形発電用に適用されて新エネルギーの本命と脚光を浴びている。また日本列島周辺に豊富に埋蔵されている、メタンハイドレートは我国の自給燃料として大きな期待が掛かっている。今後、商業化に向けての開発が加速されるであろう。

(4)既存エネルギー適用機での技術開発

既存発電機の発電効率をアップしCO発生削減・燃料の削減を実現する為、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた火力発電のコンバインド化、石炭火力の効率アップなど技術の改革が進んでいる。

(5)海洋エネルギー資源の開発

 海に囲まれた日本は多くの海洋エネルギー資源に恵まれている。波力、潮流、潮汐力、海水温度差利用等の発電が急浮上している。2030年頃に実現する、壮大な計画が産学協同で始まっている。

(6)省エネ技術の進化

日本が得意とする省エネ技術は着実に成果を出し、GDPが上昇している環境で、電力使用量は大きく低下している。今まで取り組んで出来た省エネ意識は今後も継続し、また新しい技術が次々に開発され、エネルギー政策に大きく貢献すると考えられる。

8、将来の電力ベストミックスの想定(発電量ベース)

これ等を背景に、安全審査申請中の原子力発電が全て稼働し、かつ40年寿命を守られるとして、将来望ましい電力ベストミックスを想定した。

表-6は2010年(平成22年)、2013年(平成25年)は実績で資源エネルギー庁の資料であるが、2020年(平成32年)以降は当研究会の想定である。原子力発電の発電設備容量は、表―5の稼働に向けた申請中の安全審査が全て合格して再稼働の実現(19基、1889.4万kw)を前提とした。発電電力量は、寿命の原則は40年を厳格に守るとして、日本原子力産業協会の詳細資料から発電炉運用年数を調べ6年後(2020年)、16年後(2030年)で稼働出来る発電設備容量を集計し、これに対応した発電電力量を推定し比率を出した。再生可能エネルギー発電電力量比率は、経済産業省有識者らによる総合資源エネルギー調査会、新エネルギー小委員会の資料を参照し、期待を込めて設定した。火力発電の発電電力量は、原子力発電電力量、再生可能エネルギー発電電力量合せて不足分を補う量とした。 

表-6 将来の電力ベストミックス

 

2010年

2013年

2020年

2030年

2040年

2050年

 

原子力発電

30.8%

1.0%

10%

7%

1%

 

0%

 

火力発電

石炭、石油、LNG、水力。

(新規にシェールガス、水素、メタンハイドレートに期待)

 

 

68.0%

 

 

 

 

96.8%

 

 

 

 

76%

(22.8%)

 

 

70%

(35.0%)

 

 

74%

(37.0%)

 

 

75%

(37.5%)

 
 

再生可能エネルギー発電

太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマス、海洋エネルギー、(大規模化洋上風力、地熱に期待)

 

 

1.2%

 

 

2.2%

 

 

14%

 

 

 

23%

 

 

25%

 

 

25%

 

表-6 将来の電力ベストミックス

注)( )内は従来の火力発電燃料が水素、メタンハイドレートに転換する期待値(2020年は火力の30%、2030年は以降50%とした) 出典 総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料、資源エネギー庁資料参照

 おわりに    

表―1に示すように実に多くの再生可能エネルギーを原料とした発電システムの導入、開発が、国の支援も受け進んでいる。本稿は実現しつつある主要再生可能エネルギー発電の動向、課題を重点に取りあげたが、新しいエネルギーのシェールガス、水素ガスは再生可能エネルギーに加えて、大きなウエイトでエネルギー政策の中軸を担うことになると考えられる。また日本近海に多く眠っていると確認されたメタンハイドレートも大量の国内資源として有望視されている。これ等が実現すると現在のエネルギー自給率6%を大きく上昇させ、エネルギーの安定化、エネルギー安全保障、COの大幅削などが実現できると期待出来る。再生可能エネルギーに加え、水素ガスの国内生産体制確立、メタンハイドレートの商業化が実現すれば、自給率50%以上も実現の可能が出来ると考える。電力のベストミックスはエネルギー政策が収斂して行くと考えられる値と、期待を込めて作成した。本稿では詳細には触れなかったが、平成25年エネルギー白書によると、東日本大震災と言う大きな変化はあったが、日本の得意とする省エネ技術が浸透し、平成22年に比しGDPは0.66%上昇しているが、電力消費量は8%減少して居り、省エネの効果大である。仮に平成26年から年率1%削減で2030年(平成42年)まで続くと、現状の16%削減となり、発電設備容量の抑制、燃料費の削減、CO削減等、あらゆる面で利益拡大に繋がると思われる。再生可能エネルギー、新エネルギー開発、省エネルギー技術向上などで、燃料の自給率向上、輸出競争力の強化、CO大幅削減などを実現し、豊かで住みやすい素晴らしい日本の実現を夢見て本書を執筆した。

本資料作成にあたって、経済産業省資源エネルギー庁、電気事業連合会、NEDOの白書、経産省の講演会資料等を参照させて頂いた。原稿作成にあたって新エネ研究会東日本の小林副理事長、小向事務局長にお世話になった、この場を借りて厚くお礼を申し上げます。

 参考文献

・平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書,  平成22年度環境省委託事業 株式会社エックス都市研究所 他

・再生可能エネルギー.省エネルギーの現状と課題 

  資源エネルギー庁 省エネルギー 新エネルギー部 平成26年2月・再生可能エネルギー設備利用率 :NEDOエネルギー技術白書2011年

・発電のために使われる1次エネルギーの内訳 電気事業連合会「電源別発電電力量比率」2013年5月17日

・再生可能エネルギー発電設備導入状況公表:資源エネルギー庁 平成26年5月16日 

・総発電量に占める再生可能エネルギーの割合    :資源エネルギー庁

・我が国の原子力発電の現状と原子力政策      :資源エネルギー庁

・電源別発電電力量構成比         :電気事業連合会 2014年5月23日      

・経済産業省 有識者による総合資源エネルギー調査会 新エネルギー小委員会

・平成25年度エネルギー白書概要     :資源エネルギー庁

・日本の原子力炉(運転中、建設中、建設準備中など ):日本原子力産業協会国際部2014年7月

図 キャプション

図―1 2013年度 我が国の発電電力量の構成

図―2 再生可能エネルギー等(大規模水力を除く)による設備容量推移 

図―3 再生可能エネルギー発電別発電量比率 (2013年3月末まで)                  

           以上

筆者プロフィール

 

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1 コメント

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電力のベストミックス (鈴木武人)
2015-04-21 15:50:36
小島さん。電力の長期展望を有難うございました。先日ドイツの専門筋から、同国は太陽光発電(PV)を中心に考えており、その為2次電池設置のものと無しのものに大きな価格差をつけて、ベースロードとして使えるよう制度設計していると言われました。日本では、最近自家発電住宅も販売される様ですが、既設のPVのパワーコンディショナーはディマンド対応機能も電池も持たず、その対応の為には設備の置換や改造が必要の様で、PVブームが急に去って行っている様です。何故この様な事が、日本の様な先進国で起こるのでしょう?
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