山田*博
表題の「趣味をつなげる」は、城巡りの旅という趣味をコアにして色々な趣味をそれにつなげて立体的的(ちよっとオーバーかな?)に趣味を楽しもうと言うことです。そうはいってもどういうことかと思われるでしょうから、仙台城(青葉城)へ行った時のことでご説明しましょう。
○城巡り + 読書
前回の「城巡りの旅」でも触れましたが、私は読書(多い時には10冊位の本を並行して読むので読書というより乱読と言ったほうが正しいかも)が好きで色々な知識が断片的に頭の中につまっています。 仙台市街や仙台湾が一望できる小高い山の上にある仙台城の一の丸へ行ったときには、伊達政宗を偲んで少年使節はこの湾から旅立ったのかなと感慨にふけりました。
○城巡り +俳句 + 読書
仙台城からちょっと離れたところにある瑞巌寺(伊達家の菩提寺)を訪れた時一句ひねりました。
政宗が 二の矢つがえし 秋の寺
・ 二の矢
敵を弓矢で倒そうという時、最初の矢(一の矢)で倒せなかった場合に備えて用意しておくのが二の矢です。ウイリアム・テルのリンゴの話を思い出してください。悪代官に息子の頭に乗せたリンゴを射るように命じられたテルはみごと一の矢でリンゴを射落としますが、その直後に悪代官に腰のベルトに差した矢を見咎められ、もし失敗した場合にはこの矢で悪代官を射殺すつもりだったと答えます。これが二の矢です。ただし、この句では実際に政宗が矢をつがえたのではなく「二の矢」=「詰の城」を想定しています。
・ 詰の城
本城に立て籠もったが落城してしまった場合に備えて近くに最後にたてこもる為の城を造っておくことがよくあります。この城が詰の城です。例えば、武田信玄は甲斐の国内に城を造らなかったことで有名ですが、実際は居館の躑躅が崎館の近くの山の上に要害城という詰の城を造っていました。政宗もこの瑞巌寺という寺を詰の城にしようとしたという伝説があります。したがってこの句では「政宗が二の矢つがえし」は政宗が瑞巌寺を詰の城にしようとしたという故事を意味しています。最後に「秋の寺」では本当は「瑞巌寺」にしたかったのですが、そうすると季語がなくなってしまうので仕方なく「秋の寺」にしました。政宗にゆかりの寺といえば瑞巌寺と判ってもらえるだろうと考えた末です。
このように俳句は五七五の短い語数に季語を盛り込まなくてはならず(季語のない俳句もありますが)、奥の細道を踏破して新しい趣味として俳句を修行中(?)の太田君が一人前になるのに10年かかると言われたのも、むべなるかなと思います。
偉そうなことを言いましたが、私のこの句はあまりに捻りすぎた「駄作」で人前に出せるものではないのですが「趣味をつなげる」を説明するのに好都合なので敢えて公表(?)した次第です。
○ 城巡り +カラオケ
私は歌を歌うのが大好きでカラオケのレパートリィもあらゆるジャンル(GS・ポップス・フオーク・演歌・アニメ・童謡・民謡・ムード歌謡etc)を網羅しているので、その城にちなんだ歌が自然に出てきます。仙台城(青葉城)では「青葉城恋唄」を、瑞巌寺では宮城県民謡の「斎太郎節」を口ずさみながら見て回りました。甲府に行った時には「武田節」ですし、三橋美智也の「古城」などはどの城にも当てはまりますのでしょっちゅう口ずさんでいます。
以上で「趣味をつなげる」の意味が判っていただけたと思いますが、最後に先日四国の城巡りで訪れた松山城での「城巡り+俳句+読書」のパターンをお話ししましょう。
松山城を訪れた際、正岡子規の句を彫ったこんな石碑を見かけました。
松山や 秋より高き 天守閣
自分の句ではないので以下は私の想像です。
第二句の「秋より高き」がわかりにくいと思いますが、ここでは「天高く馬肥ゆる秋」を思い出してください。「秋より高き」を「天より高き」に置き換えれば意味が通じると思います。晴れわたった秋の空に聳え立つ松山城の天守閣の情景がありありと脳裡に浮かんでくるでしょう。それなら最初から「天より」と詠めばいいとお思いでしょうが、ここが俳句の辛い(?)ところでそうすると季語がなくなってしまうので、一ひねりして「秋より」と詠んだわけです。
私は感情をストレートに表現できる和歌と違って、俳句は言葉をこねくり回した「言葉の遊び」と考えていますが、この句でそれが判ると思います。さらに捻ってみると「秋」=「安芸」(広島県)で安芸の国で代表的な広島城より高い松山城の天守閣と子規がお国自慢をしているような気もします(これは考えすぎかも)。広島城は平地に造られた「平城」で、小高い山の上の松山城(山城)の天守閣のほうが高いのは当たり前なのですが。
さて、子規のこの句を俳句修行中の太田君に捧げて、このいささか(かなり?)ぺダンチックで独りよがりの雑文を終わりにします。
(山田 博)