断絶の米国(その4:最終回)
6:米国の政治の一端
何度も倒産したことがあるので米国の金融機関はトランプには金を貸さないとかの評判がありますが、海外の金融機関から融資を受けているのか、ホテルやギャンブル場、リゾーと特にゴルフ場等で不動産王との名をほしいままにしました。何度も落ちても谷底から這い上がって頂点に立つ、まさにアメリカンドリームの様な人で、熱狂的な支持者を持っています。大統領になるために幾つもの公約を掲げ、その中には首を傾げざるを得ないものもありましたが、大統領に当選してそれら全ての公約を全て守ろうとして歴代最も公約を守るとの評判も取りました。しかしながらトランプも4年の末期になって、社会の分断、差別、これに加えて新型コロナへの対応多くの面で悪しき問題が表面化し、選挙で敗れた様です。何故トランプの末期にそのような問題が噴出したのかを振り返ってみたいと思います。
7:混じ合わらないのが平和?
先ほど米国では町や市単位に住む人の層が違っている状況について説明しました。これは例えば皆さんがよく利用されるJFKからマンハッタンに向かうロングアイランドの高速道路から見える人家の状況からもわかります。道路に近い処の家々では小さい庭に洗濯物がひるがえっているのが見えますが、少し越し離れた坂上のエリアの家々には緑が茂りまた花が咲き乱れますロングアイランドのマンハッタン側で小生がNYへ赴任した頃までは日本人学校も置かれ、NYの日本人町とも言われたクイーンズ区ジャマイカ地区でしたが、道路が比較的に狭くて入子状になっており、当時から多様な人が道路の筋毎に人種に分かれて住んでいました。白人は殆ど見られませんでしたが、ユダヤ教の人々が真っ黒な僧服で行き来、アフリカの何処かの国のグループが民族衣装のまま買い物、韓国人もチョゴリで登場等まるで民族衣装展の様でした。ただ、彼らの家は別々の筋で殆どお互いに話し合う事はないと聞きました。しかし、街はいたって静かで争い滅多にありませんでした。ここは米国に到着してしばらくの間古くから住んでいる知り合いに当面の世話になるところなのかもしれないと想像されました。こんなに人種が入り乱れても、綺麗に住み分けが出来、結果争うごとが無く、平和に暮らしていけるのが大変不思議に思っていました。
ついでながらここを創立起源とした日本人学校は現地に展開する日本企業からの多額の寄付とそれに相当する日本政府からの資金で素晴らしい環境で高級住宅の多いマンハッタンから北側にあたるコネチカット州グリニッチに移転を完了しました。これは日本のバブル期だから出来た事かも知れません。ただ、その後バブル崩壊から学生数が減って経営が苦しいと聞きました。
8:叱られる文化と褒められる文化
さて、小生はCA在任中に「叱られる文化と褒められる文化」という雑文をある雑誌に頼まれて掲載したことがあります。これはCAへ赴任して数学能力測定から娘が中学の1学期を終えたばかりなのに飛び級で中学の高学年へ編入、中学を1年で終わることになってしまいました。当然英語が分からないので、学校では沈黙、家へ帰ってから両親に教科書の説明でやっと何をしていたのかが解ったくらい。そうやって居る内に学校から表彰状を貰ってきました。曰く「最も静かで学級の邪魔をしなかった生徒の賞」、当然不思議に思い、学校のカウンセラーを訪ねたところ、「何でも見つけて表彰することで、学校に馴染み、励ます」という事だそうです。我々世代の日本では叱るのが当たり前で、結果廊下に立たされたり、竹の棒で叩かれたり、グランドを1周したり、いわゆるスパルタ式でした。即ち、叱られる事を恐れて勉学に励んだり、言いつけを守ったりでしたが、米国の学校では教師が工夫して何とか褒め方を研究し、これを実施していました。日本のやり方とは随分と違うものと思ったものでした。
叱られるのを恐れて学んだ者は叱られなくなれば止めてしまうかもしれません。しかし褒めるやり方では、褒められる事を際限なくやり続ける事でしょう。ここに、独創性やベンチャが育ちやすいかの文化の違いが出るのかもしれないと考えています。ただ褒められる文化では褒められなくなると、自意識が満足できなくなって、失速状態に陥りやすく、即ちストレスを感じやすく、時にはその事から何か分らない怒りを生じてテロ類似行為やキャピタルへの乱入事件の様に我々の常識では考えられないようなとんでもない爆発を起こすのかもしれないと考える次第です。米国ではバイデン大統領の元で、従来ワクチンを65歳以上であったものを16歳以上に拡大し、この7月には米国人であるか否かに関らず全米に生きわたるとされ、感染者数が落ち始めています。我々の日本ではEU次第という事でスケジュールもはっきりされていませんが、叱られる文化では、常に一定のストレスがかかっており、「マスクを着用する、人とは距離を置いて生活する」等々コロナ対策等は馴染み安いので案外桁が1つ少ない所で遅いワクチンの到着まで時間稼ぎが出来るのかもしれません。