栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (94)”札幌の英語塾”(Okubo_Kiyokuni)

2018年06月27日 | 大久保(清)

 札幌の英語塾

 札幌の狸小路のアーケードを路地に二三歩踏み込むと、ネオンの明かりに薄らと照らされた急な外階段が見えてくる。それを昇りつめ、ペンキのはげかけた木製のドアを押すと、まるで工事現場の飯場のような光景が目に入る。煤けた天井と薄汚れた板壁で囲まれ、茶色に変色した波打つような畳には、幼稚園のような可愛い座り机が横に二列、奥の黒板に向かって縦に六列ほど並んでいる。まるで、江戸時代の寺子屋のような雰囲気だが、昭和の時代ゆえ、蝋燭の代わりに裸電球が数本たれ下がっているものの、室内に漂うタバコの煙で、黒板に近い席に陣取った塾生がボンヤリ見えるほど薄暗い。これが金曜の夜の英語塾のいつもの風景である。

 ジャケットのポケットに片手を突っ込み、ズレ落ちるメガネを、チョークを持つ手で押し上げながら、小柄な先生が楽しそうに漫談調で授業を進めていく。一緒に授業を受けていたお嬢さんは中学生と高校生であったから、五十を少しまわった歳だった推測される。先生の気性なのか、貧乏人にも優しく、受講料を徴収された記憶も薄く、ダルマストーブのある隅の机で中学生のお嬢さんにお布施を払う雰囲気で金を払っていた気もする。

  英語の授業といささか違う、寄席のような伸びやかな空気が流れるなか、擦り切れた畳がきしむ部屋に座り込み、生徒たちは電灯の明かりが反射する読みづらい黒板の文字を必死で書き留めていた。塾生さんは、中学生、高校生、大学生、英語の先生、勤め帰りの銀行員、商社マン風のサラリーマン、公務員から職業不明のお年寄りまで幅広い年齢層でしめられていた。その光景は東京オリンピックの年、活気あの街、札幌の一面をそのまま映しだしていた気もする。

  頻繁に外人が話す決まり文句を中心に、その日に先生が思いついたセリフ、例えば―この辺で美味いラーメン屋を知っているかい?これを肯定文、否定文、疑問文、付加疑問文の順に一気に早口で喋りきる。お経と言っていたが、台詞にスピードをつけさせ、実際の会話のリズム感を訓練していたらしい。口が滑らかになると、少しあらたまった丁寧な言い回し、そして、最後にスラング、例えば、それはドンビシャリ、正解やーと砕けた言い回しが加わる。習いたてのスラングが映画の中で語られると、俳優がいかに早く喋っていてもはっきりと聞こえてきた。

 大学を卒業し札幌を離れると、英語からも遠ざかり、書きためた会話ノートもなくなってしまったが、狸のねぐらのような薄暗い教室で学んだ慣用文中心の英会話が優れものだった、と気がつかされたのは外国生活をはじめてからである。外人もおなじ言葉で喋っていた。

 札幌の雪祭り、テレビに狸小路が出てくると、教室の窓ガラスに映り込んでいたあの淡いネオンの点滅が目の奥に浮かびあがり、あれは英語の化け方を教えてくれた狸御殿だったのかもしれないなあ、と、古希も過ぎ、習った英語も忘れかけ、なぜか夢を見ていたような不思議な気持ち

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マグダラのマリア (Tsuyumu_Shinji)

2018年06月22日 | 角田・露無・鳥居

  “マグダラのマリア“

“カトリック生活”7月号は、マグダラのマリアの特集号ですが、家内がペンネーム宗任雅子で小文を載せております。Me-tooの被害者であるとの論調ですが、添付させていただきますので、ごご一読いただき、ご意見などを露無宛(steubs0706@gmail.com)に賜れば幸甚です。

 

 

 

 

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きよちゃんのエッセイ (93)”くじ引き”(Okubo_Kiyokuni)

2018年06月11日 | 大久保(清)

くじ引き

  ―一等賞でーす、おめでとーございまーすー

赤いサンタクロースの帽子をかぶったお姉さんが、カランカランと鐘を鳴らしながら、大声で叫んでいる。スーパーのレシートで空くじなしの金券がもらえるために福引所の前に買い物を終えたお客さんの列ができていた。一等賞が千円で50本、二等賞が五百円、三等賞が三百円、ハズレが百円。福引は、引く者も、それを見ている者も、なんとなくワクワクしてくる祭りのような気分を味あわせてくれる、大人になってもなぜか童心に帰らされる楽しい光景だ。

 小さなビニール袋を肘にぶらさげたお婆ちゃんは抽選箱から幸運を引きあてて本当にもらっていいのかねーと、しきりにお姉さんに愛想笑いをしつつ、千円の金券を胸の前で押しいただくようにして、照れくさそうに周りの人たちにも目で挨拶しながら立ち去っていった。一等賞の千円で明日の買い物で一寸だけ贅沢してみようかな、いつも素通りしていたあの品物をクリスマスに買えるかな、とお婆ちゃんにとって、きっと楽しい一日になるはずだ。この様子を見ながらホカホカした気分になっていたのだが・・・突然、セコイ考えが頭に浮かんできた。

 一枚のレシートで一回だけのくじ引のようだ。レシートに福引の女性がスタンプを押してからくじを引いている。長い帯のようなレシートを手にする人も、少額の短いレシートの人も一回しか抽選ができない仕組みらしい。デパートなどのくじ引きでは高額の買い物をしたお客様にはお買い上げ金額に応じて何度もくじ引きができるのに・・・

ご夫婦での買い物客は、どちらかが列の外で成り行きを見守っている。夫婦で二回、抽選できる人も大勢いるはずなのに・・このけち臭い考えが、どうも小さな脳ミソの網に引っかかってしまったらしい。

だが、しばし行列客を眺め続けていると、少しずつ網のほつれがとれてきた。今様の人たちは、おそらく、この金額では、時間をかけて、わざわざレジに二回も並ばないのだろう。百円の価値はその程度のものかもしれない。歳末の忙しい時期に、今年の運を一寸占うような雰囲気が味わえれば、それで十分なのかもしれない。

 二等賞、三等賞もかなり出ているようだ、思いのほかに頻繁に鳴り響く鐘の音に引き寄せられる周囲の客からの熱い視線を浴びながら、幸せ者の対応はそれぞれ特徴があった。顏色一つ変えずに淡々と金券を財布にしまうもの、父ちゃんに向かって、やったわよーと金券をつかんで、手を振りふり帰ってゆくお母ちゃん、五百円でも大金だよなーとほくそえむおじいちゃん・・・、みな、忙しい年の瀬の空気を楽しんでいる。

抽選箱から引き出して開いたくじをのぞく、その一瞬の神妙な表情を見続けていると、買い物客に一時の小さなスリルを体験させ、おかずの一品でも買える補助券のサービス企画はなかなかのアイデア物だよなー、と、ケチな頭がいつもの祭りの気分に戻ってきた。

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イレブン会(2018年5月11日)の写真

2018年06月01日 | ◆行事報告

 イレブン会(2018年5月11日)の写真

 (1)日時:2018年5月11日(金) 13:00 ~ 15:00

 (2)場所:横浜駅西口:なか一

 (3)出席者:22名 :小川(正)君が<出席>しました。

 相澤・荒木(之)・石島・稲森・太田・小川(正)・大久保(武)・奥山・川原・小島(四)・重山・鈴木(武)・銭高・田中(泉)・鳥居・中村(和)・藤高・松井・水野・山口(隆)・山口(力)

 

 

 

 

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