栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (115) ”ドリアン”(Okubo_Kiyokuni)

2019年12月27日 | 大久保(清)

 ドリアン 

甘い香りと腐敗臭の混じった強烈な匂いを放つドリアン。マレー語で、刺(ドリ)を持つものという意味らしい。その独特な食感と風味ゆえ、果物の王様とも言われ珍重されているが、まだ実際にそれを食したことはなかった。

 ジャカルタ事務所での出張報告も無事終了しホテルに帰るべく、先輩に連れられて裏通りを散策していた時のことだ、道端に建てられた小屋の奥の棚から軒先まで、あふれるように積まれた黄色の針鼠のような果物を見つけた。桃太郎に登場する鬼の金棒のような鋭く太い刺。もしかしたら、ドリアン??とその刺を触っていると、購入するのだろうか、立ち止まって見ていた先輩が品定めを始めた。足元に並んだ大きめものを二つ選ぶと、味見のために割らせるらしい。買い手が満足できるまで割り続けるため、値段は割高になるが、これが通の食べ方と教えられる。

 試し食いをした最初の二つに納得せず、これが三つ目。

鉈を片手に握ったまま、試食する先輩の口元をジーと見つめていたおやじが、とんでもない客を相手にしたものだわ、と同意を求めるような眼差しをこちらに向けてきたときだ、突然、満足げなうなり声が聞こえた。半割のからの中からつまみだした大きめな房を口にくわえたまま、

―おーん、こいはえー、はべてごらん、

と言うなり、クリーム色の小さめかたまりを取り出してくれた。手のひらに乗せた第一印象は白い膜につつまれた薄黄色のゆるめのチーズ。こわごわ口に入れてみたが、期待していたフルーツの風味は全くない、なんとなく薬臭い、ねっとりした物体が舌の上にへばりつく。果物の女王と言われるマンゴスチンは、そうかもと納得させるだけの上品な香りを湛えていたが、野性的で粗削りな味で、果物の王様との印象は受けなかった。

 ドリアンは産地でも比較的に高価な品なのだろう、一般庶民たちも旬の時期になるまでなかなか手を出さない。だが、好き物は、街角にそのニオイが漂いだすや、売り場を探し求めてまるで野良犬のようにあたりをうろつき始めるらしい。今思い返すと、先輩もこの類であったかもしれない。

 強い匂いのため、公共の施設内への持ち込みは禁止され、食べたいときは、買い求めた店先や野外で食べるのか常識だが、全部は食べきれず、サランラップで何重にもくるみ、冷凍室にいれて保管する。それでも匂いはあふれでる。都心部のホテルではフロントの目が厳しいが、旬の季節、リゾートホテルの部屋に泊まると、先客の食したドリアンの匂いが消えずに残っていることも少なくない。

一度だけ、冷凍したドリアンを苦労して日本に持ちかえったことがあった。南国の、あの風味を期待しつつ食してみたが、あの味は消え失せ、ただのクリーム状のかたまり。南国の空の下、汗をかきかき、手をべとべとにしながら食べて、初めて、本物の王様の味になる気がした。

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”みなとみらいの21” イルミネーション

2019年12月20日 | ◆お知らせ・行事案内

 

 みなとみらい2のイルミネーション 

 

<にっぽん丸付近>

 

 <Landmark> 

 

<Dockyard Garden付近>

 

 <Queen's Square付近>

 

<観覧車>

 

 

 

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きよちゃんのエッセイ (114) ”"ホワイト・クリスマス”(Okubo_Kiyokuni)

2019年12月15日 | 大久保(清)

 ホワイト・クリスマス 

 朝のテーブルにつくと、シャキッ、シャキッと小気味よい植木鋏の音が庭先から聞こえてくる。

ーまた切ってるみたいだから、頼むわよー、

と嬉しそうな、でも大変だけどねといたわるような響きを込めた、いつもの母の声がする。

父が丹精込めて育てたバラを勤め先の事務所に持ってゆく。これが月曜日の朝の日課になっていた。

バラの大株が庭の土手に咲いていた。大輪のバラの名前はホワイト・クリスマス。深みのあるアイボリーがかった白色の、包み込むような大きな花ビラからはフルーツのような、強いかおりがただよう、色と香りを併せ持つハイブリッドの傑作である。腰の高さほどまで成長した太い枝にはいくつも蕾がつき、土手を吹き抜ける涼やかな風を受け、嬉しそうにゆれていた。隣の植え込みにはサーモンピンクのバラたちが朝露に輝いていた。

 長めに切られバラたちは無造作に新聞紙にくるまれ、そのままゴム輪で留められると、こちらに手渡される。花束を右手で持ち、左手にはカバンを提げて、まだ若かりし男が自宅近くからバスに揺られて事務所まで毎週運んでいく。その通勤姿はかなりユニークな光景であったかもしれない。

活け終えてしまえばそれは見事なバラなのだが、枝につく刺はとても鋭く、その数は半端ではない。運搬中にひっかけ血をだすこともあったのだから、女性事務員は一人ではさばききれず、いつも隣の事務所にも配っていた。新入社員が運んでくる花束を無下に断ることもできず、嬉しそうに受け取っていたが、月曜日の朝の胸のうちは相当、複雑な心境であったのだろう。花屋の店先でツルツルの枝を見ては、彼女たちの苦労にあらためて気づかされる。

 独り立ちして、こちらもなんとか狭い庭を持ち、あの白バラを植えてみたのだが見事に失敗した。狭い敷地に植えすぎなのか、肥料をやりすぎたのか、またまた、消毒液の薬漬けのせいなのか、可愛がり過ぎて徒長した枝に葉ばかりが茂り、肝心な花が小さい。父のような大輪のバラを育てるにはそれなりの自然環境が必要らしい、と考え始めたが・・・

 あれではないかと思いあたるものがある。父は二ワトリを二羽飼っていたが、父の工場から運び込まれた糖蜜入りの飼料をたっぷり食べて、毎日、大量の糞を生産していた。それに加え、、父は庭の片隅でこっそりと壺に小便をため込んでいた。 

専門書を読むと、尿は発酵させてうすめて使うと最高の天然肥料と書かれている。鶏糞も栄養バランスがとてもよいらしい。それに、鶏糞には消化された糖蜜も含まれているし、

もしかしたら、あのスペシャルブレンドはとてつもない優れものだったかもしれない。いつか、バラ栽培の専門家に聞いてみたい。

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