栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (51)”月光仮面” (Okubo_Kiyokuni)

2016年03月23日 | 大久保(清)

月光仮面

 月光仮面を知っているだろうか。若者は無理だろうが、こちらの年代層には懐かしい男だ。窮地に陥ると何処からともなく白いオートバイにのり、白装束で登場する。悪者を退治して、颯爽と何処かに去っていく。正義の味方、良い人なのだ。

 この月光仮面が現れたような雰囲気を味わう時があった。その年も例年のように、一月に入って大雪に見舞われた。夜半に降り始めた雪は未明まで降り続き、我が自治会のブロックの中央を抜ける急坂は、いつものように格好のゲレンデ状態に変わっていた。これで、2日間は車での外出は無理だろうと誰しもが思い始めていた。

 昼近く、太陽が高く昇り、気温も緩んできた頃、坂の下から重機特有の低く重いエンジン音が沸きあがってくるのが聞こえる。それと同時に、雪を引っかき、雪面を滑らす鈍い連続音が近づいてきた。ブルドーザーのような音の響きである。窓からのぞくと、目の前を中型のブルドーザーが通過するのが目に入る。野球帽を被った、ひげ面のおじさんの顔が見える。坂の除雪を区役所が特別サービスをするはずもない。隣の人も、むかえの人も飛び出してきた。驚きの表情で、ただ、呆然と元気に動き回る機械を眺めていた。

 挨拶を交わすが、笑顔で会釈して、名乗らない。30分もたったであろうか。坂に積もった雪は、坂ノ下の曲がり箇所に積まれているのが見える。少しの時間、ブルドーザーは視界から消えたが、エンジン音は聞こえてくる。待っていると、また坂を上がってくる。家々の門の前に残された雪の残骸を、少しずつ集めて、坂ノ下の角地に盛っていった。この頃になると、自治会ブロックの奥さん連中は、一緒になって、残された雪の残骸を、夫々垣根の傍に寄せていく。この急坂は、元の坂道に戻っていった。

 気がつくと、あのブルドーザーは見当たらない。耳に強く響いていたエンジン音も聞こえない。あのおじさんも何処かにいってしまった。まるで、月光仮面のおじさんみたいに、 一週間がたった。散歩の途中で、坂ノ下に差し掛かったとき、玄関からジャケット姿のおじさんが出てきた。どこかで見た顔だ。と、思わず、この前は有り難うございました、と感謝の言葉が口にでる。やーたいしたことではないですよ、と応えてきた。先月、当自治会ブロックに引っ越してきた運道具屋サンである。まだ、誰も顔と名前が知られていない男性である。月光仮面のおじさんの素性は割れてしまった。

 いずれ分かるだろうが、誰にも打ち明けていない。だが、自治会の誰もが信じている。これからも大雪の日は必ず、月光仮面が来ることを。

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きよちゃんのエッセイ (50)”アタッシュケース” (Okubo_Kiyokuni)

2016年03月14日 | 大久保(清)

  

アタッシュケース

   

昔のアルバムを取り出そうと納戸に積まれたダンボール箱をどけ、奥を覗くと棚の上に色褪せたアタッシュケースが埃をかぶったまま並んでいる。思わぬものに出合い懐かしさに誘われ、棚から下ろし手に触れてみる。かび臭いにおいが鼻先をかすめたとたん、アタッシュケースとの思い出のシーンが目の前に蘇ってきたが、不思議なことに恐ろしかった場面ばかりが浮かんでくる。

アフリカの港で、ひったくられそうになったり、空港の税関員に保護されたり、強盗団の鉈で鍵を飛ばされたりと、鍵が飛ばされた時はスーツケースのバンドで縛って自宅までつれて帰って来たが、鍵は修理できず、残念だが廃棄してしまった。

 一番手前にある緑色のカバンは、定年が近づき、体力も落ち、手に持つ重さが気になり始めてきた頃に購入したものだ。布製のために軽くて持ち運びは容易だが、海外ではどこか心もとない気もした。

その横にある黒い艶消しのサムソナイト。硬質樹脂製の新製品だった。ダイヤルとロックが離れており外からは鍵が見えず、硬質容器を壊さないと中身が取り出せない頑強なタイプだ。強盗団に襲われたとき、これだけは鉈でも開けられず、友達は脅されながら鍵番号を合わせていた。その強さを見て購入したが、幸い、あれ以来、危険な目に会っていない。棚から引きずり下ろすのにも一苦労する重さだ。こんなものを提げて、よくも、あちこちと動きまわれたものだと、当時の仕事への気迫に圧倒される。

 骨董品のような薄汚れた革のアタッシュケースが一番奥に見える。足元において上から書類を取り出せる、パイロットの愛用する幅広のタイプだ。上蓋を開けると、古本のようなニオイに混じってチョコレートの匂いがする。いつも成田の免税店でオールドパー一本、マルボロー2カートン、そしてチョコバーも買っていたなーと思い返していると、アタッシュケースを脇に置き、スーツ姿の男達がタバコをくゆらせて群れていた朝のビジネス・ラウンジの光景が目に浮かんできた。

書類や図面を一杯詰め込んだ傷だらけのアタッシュケースを提げ、出国ゲートを通るたびに、残余ページが薄くなった増補した厚めのパスポートを眺めては、これがビジネスマンの勲章のような錯覚を抱いていた。今のボケ老人では考えられないタフな男がいたらしい、と思い始めると、自分の今の変わりように驚くとともに、懐かしくもあり、寂しくもある。

 異国の地で他に頼れるものもなく、わが身を保証し生活を支えるものをすべて収め、いつも傍に寄り添って、喜びも、悲しみも、時々の恐怖も共に分かちあう、本当に戦友のような存在だったよなー、と思い返しつつ、くたびれ果ててお休み中の旧友たちを、そっと、もとの棚に戻した。

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ユーシン渓谷ウオーク・参加者募集

2016年03月07日 | ◆お知らせ・行事案内

栄光学園11期の皆様

暖かい春の日、ユーシン渓谷ウオークを一緒にいたしませんか!参加される方は幹事までご連絡下さい。

=====================================================

1.期日   :2016年4月14日(木)  (雨天中止)

2.集合場所 :小田急・ 新松田駅・改札口 

3.集合時間 :8時10分  (8時25分発のバスに乗ります。)

4.コース  :新松田駅→(バス)→玄倉…→>(ウオーク)…>ユーシンロッジ     …>(ウオーク)・・・>玄倉→(バス)→新松田駅  (往復同じ道を歩きます。)

5.距離:約15Km 高低差:400m 

6.その他  :(1)ゴール後、新松田駅付近で反省会をいたします。

        (2)参加申し込みされた方には、後日雨天時の対応、持参するもの等をご連絡いたします。

7.申込先  :幹事 太田・奥山までメールにてご連絡下さい

8.申込期限 :4月10日(日)

============== ユーシン渓谷について ============

昨年(2015年)の12月4日に、太田・奥山の二人で行ってきました。「空が綺麗・水が綺麗・山が綺麗・樹木が綺麗」だけでなく、光が全くない真っ暗なトンネルを通りました。「神奈川県に、こんな場所があるのだ!」と驚くとともに、みなさんにご紹介しようと思い計画致しました。

詳細は、

(1)栄光11会ブログ (2015年12月7日掲載)「太田君とユーシン渓谷を歩く」

           (2016年1月29日掲載)「新年会ご報告」

(2)ユーシン渓谷 ホームページ

http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/766644.pdf

をご覧ください。

                (以上)

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きよちゃんのエッセイ (49)”散髪” (Okubo_Kiyokuni)

2016年03月05日 | 大久保(清)

散髪

 

 台所に新聞紙を敷き、小さな丸椅子に腰を掛ける。使い古したネッカチーフを肩にかけ、顎の下で結び背筋を伸ばすと、おもむろに家内の鋏が動き出す。家の散髪屋さんにお世話になってからもう何年経っただろうか。街の理髪店に出向いて髪を刈ってもらっていたが、毛髪の処理単価が著しく高くつくようになり、年金生活者に見合った対策を家内共々工夫しあって今にいたっている。

 散髪が終わり、新聞紙の上に薄っすらと白く積もった、糸くずのように細い髪の散らばりを拾ってみても、指先でつまめるほどしかない。―この分量で大人の一般料金を支払っていたなんて、馬鹿みたいーと少し得した気持を家内と共に分かち合う。

 昔は、若作りの茶髪のおじさんを指名し髪を刈ってもらっていた。最初に訪れた折りに感じもよく、とても丁寧に対応してくれたので、それ以来の付き合いである。

当初は、鋤きバサミで全体を大胆に鋤き落とし、一度、床に積もった髪の毛を掃除し終えてから、おもむろに髪を揃える作業に入っていた。やがて、側面を睨みながら、探るように慎重に鋏を入れ、数ミリずつ念入りに切っていく。

額と頭頂部は見向きもしなくなった。所定の時間をこなすかのようにマッサージの手も念入りだ。しばらくこの状態が続いたが、一ヶ月に一度の散髪が、やがて2ヶ月に一度になる頃、自宅の散髪屋に代わることになったのだ。

 家内の散髪は大きな裁ちはさみを片手に、指で髪をひっつかむようにして、部分、部分をバサッリと切っていく。いつも心配になり鏡を覗くが、不思議に面が揃って切られており、人前に出てもおかしくない。大バサミで切り終えるとシェーバーを使い、もみあげ用に刃先を調節し、簡易バリカン風に襟先を揃えていく。

 当初、7:3に分けていた髪は、サッカー言葉で言えば、サイドよりセンターへのパスがとどかない状況になり、8:2、そして9:1まで追い詰められた。これにあわせて、側面も短めに、短めに調整し、全体で薄めの感じになってきたが、ここで思わぬ副産物が飛び出してくる。いつものように、頭頂部は目もくれず側頭部を刈り上げていた家内が、少し嬉しそうな声を上げた。

―あんた、つるつる頭にうぶ毛が生えだしているわよ、これ本物みたいだから、大事にしないとー、それを見ていた息子も覗き込み、嬉しそうに頭をさすってくる。

 三面鏡の前に立ち点検すると、確かにうぶ毛は密度を増し、これからの楽しみが一つ増えた気もする。失うものがあれば、得るものもあるのだ。高年期障害なのか、七十肩でリハビリに通っている身だが、老人に夢を与えてくれたうぶ毛の成長を、これからの楽しみに、家内共々じっくりと見守っていくつもりだ。

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【訃報】  鈴木荘一君  (Mizuno_Nobuyoshi)

2016年03月01日 | ◆お知らせ・行事案内

栄光学園11期の皆様

水野君から、以下のメールが入りました。
お知らせいたします。

昨年、4月1日浦賀ハイクの際に,

大勢で鈴木荘一君の家を訪ねた時には
あんなに元気だったのに残念で仕方がありません。


ご冥福をお祈りいたします。  ( 奥山 )

=== (水野君からのメール)======

今日、鈴木荘一を訪ねたら、荘一がガンで
2月8日になくなったそうです。

昨秋ガンが見つかり、末期ガンと判定されたそうです。

荘一は健康診断を受けなかったので心配していました。

皆さん 健康診断を早めに受けましょう。

============================


  

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