栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (10) ”朝の街角”  (Okubo_Kiyokuni)

2014年06月27日 | 大久保(清)

朝の街角

 

朝の散歩の途中、駅前通りを歩いていると、なぜか気持ちが弾むような光景に出あった。

 最初の出会いは、駅近くの交差点。朝の雑踏も静まり、信号を待つ人影も疎になってきた頃、横断歩道の前にすっと立つ着物姿の女性が目に映った。明るさを増してきた冬の日日差しのなかで、紅赤色の紬に黒い道行コートをまとった姿がくっきりと浮かび上がる。袖から腕を突き出すようにして、携帯の表示板を覗き込んでいる。短く髪を纏め上げた女性の醸し出す、そそとした雰囲気はどこからくるのだろう。落ち着いた着物の立ち姿の美しさとモダンな携帯との不思議なバランスがなぜか、朝の交差点に小粋な風を吹かせていた。

 この女性の後姿を目で追いながら、駅前のデパートに入っていくと、入り口でまた、黒い和服の女性に出会った。今度は留袖である。結婚式であろうか。何か買い足すものがあるのだろうか、急ぎ足で小物売り場に立ち去って行った。続けさまに黒の着物姿に合うのは珍しい。それも、どちらも十人並みの美人だ。

 エスカレーター横の待ち合わせ用の長椅子に、茶色のハンチングを被った、小粋な老人が座っている。大きなタブレット型のコンピューターを膝の上に載せて、覆いかぶさるようにして、なにやら覗き込んでいる。小さな膝からはみ出しそうな画面を見ながら、しきりに指を動かし嬉しそうだ。液晶パネルのブルーの色がメガネのレンズに反射し、老人の顔が輝いている。モダンな機械と老人の組み合わせがとても微笑ましく、これからの時代の先駆となる光景のように思えてくる。

 最後は、新しくて、古い靴下との出会いである。駅に向かう信号を待っていると、頭を刈り上げた職人風の男が通り過ぎていった。老人と言うには、まだ少し早い年齢で、肩幅もあり、がっしりとした身体に濃いグレーのジャンパーをはおっている。黒いズボンの足元を見ると、靴ではなくて草履である。それに、足袋の代わりに、五本の指が自由に動くよう、指の先が別れている黒のソックスをはいていた。恐らく、このおじさんは、夏は素足に下駄を引っ掛け、颯爽と街を闊歩しているのであろう。足の指が地面をける満足感を、冬の寒い時期、このモダンな江戸の粋と現代の粋を併せ持つスタイルで、楽しんでいるのだろうか。

 冬の朝のほんの一時を切り出した風景であるが、若者の町に変わりつつあるこの街角で中年・老人組みの人達が、古き時代の伝統を継承しつつ、新しい時代の波に、折り合いをつかせながら楽しく軽快に生きている姿を垣間見ることができた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長島保之君が「陶芸財団展」に入選しました。

2014年06月21日 | ◆お知らせ・行事案内

長島保之君が「陶芸財団展」に入選しました。

   

 

陶芸財団展は、全国公募による陶芸展です。

1.会期:平成26年6月25日(水) ~ 7月6日(日)

2.場所:国立新美術館展示室3B (火曜休館)

   〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2

3.公開時間:10時 ~ 18時 (最終入場は、17時30分)

4.入場無料

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

きよちゃんのエッセイ (9) ”Lord ネイピア”  (Okubo_Kiyokuni)

2014年06月06日 | 大久保(清)

Lord ネイピア

 

我々日本チームはODAの一環として、クライペダ港のマスタープランを作ることになった。クライペダ港は、バルト海に面するリトアニアの表玄関、古くは旧ソ連とヨーロッパの架け橋となっていた。日本人のみでは土地勘に乏しく、3人の英国人が参加した。

 この中で最年長は、70歳代のネイピアさん。バートランカスター風の深みのある微笑みと豊かなもみ上げが印象的。姉さん女房とのおしどり夫婦で来られた。二人とも、中世の歴史を持つバルト海の地での生活を楽しむように、ホテルは避け、古びた家を間借りしている。生活スタイルも質素と言うのか、イギリス式というか、日本人と少し違う。クリーニングはアルバイト代を払い運転手の奥さんに任せ、ワインは少し残れば栓をして保存。ピンポンが趣味らしく、卓球台がなくても、戸板を外しピンポン台にし、嬉々としてプレーを楽しむ。しかし、ネイピアおじさんを見る私の目が、あの時からガラッと変わった。

 仕事も終盤に向かい、業務の成果を見るべく、リトアニアも管轄するデンマーク日本大使が来られ、歓迎レセプションが港のホテルで開かれた。英国人メンバーを代表してネイピアさんも参加した。名刺交換をするなり、大使の声が変わった。『あのネイピアさんですか?』と驚きとも尊敬の念が入り混じる。『はい、そうです』とネイピアさんは、少し威厳を持って答える。

 後で知ること事になるが、イギリスのインド統治時代の立役者がチャールス・ジェームス・ネイピア提督、いまから1世紀半前である。彼はその直系である。写真を見ると、不思議と提督もネイピアさんも同じ豊かなもみあげを持っている。そういえば、彼との初対面の時に名刺を貰い、肩書きにLordと印刷されていたが、Lordの意味が分からずにいると、少し物足りなさそうに、探るような眼で、私の顔を覗き込んだような光景がよみがえった。(辞書を引くとLordとは、公爵・男爵、上院議員のこと)

 考えてみると、 “Lordも知らない、無知な男よ”と思っていたかもしれないが、が、日本人チームの中で、おくびにも出さず、ピンポンに興じ、夫婦でリトアニアの田舎生活を楽しむ姿は、提督ゆずりの懐の深さなのか、それとも彼の信条なのか定かではない。ピンポンの後でワインを飲みながら、“上院に行って意見を述べる権利があるが、まだ登院したことがないんだ”とウインクしていた顔が何を意味するのか、今となっては彼の本音を聞き漏らした。多分、本心はユーモアの煙に巻くだろう。イギリス組みのほかの二人の身分がどれほどなのか、段々と興味の対象が広がってきたが、今となっては、イギリスの階級制度を知る絶好の機会を逸してしまった。が、本音は、イギリスの歴史を勉強するほどの余裕は無く、リトアニア人相手に精一杯だったのだ。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

<飲み会>のお知らせ    (2014/7/25 (金))

2014年06月04日 | ◆お知らせ・行事案内

飲み会のお知らせ

記要領にて<飲み会>を開催いたします。

参加される方は、奥山宛にメールにてご連絡ください。

             記         

1.日時 : 2014年7月25日(金)  18:00  ~

2.場所 :「 なか一 」 (☎ 045-311-2245)

   横浜駅みなみ西口 相鉄改札口から徒歩1分(横浜高島屋裏)

   2013年7月に飲み会を開催した場所 

3. 費用 :4,000円 ~ 5,000円

4.申込期限:2014年7月18日(金)迄

 5。 幹事 太田・奥山

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする