ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

美女と野獣

2017-04-17 23:54:21 | は行

エマ・ワトソンがきれいだわー。


「美女と野獣」68点★★★☆


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むかしむかし。

心優しく聡明なベル(エマ・ワトソン)は
父(ケヴィン・クライン)と小さな村に住んでいた。

読書好きで群れないベルは
村で「変わった娘」とされていたが
うぬぼれやのガストン(ルーク・エヴァンス)は
彼女をモノにしようと必死に求婚している。

そんなあるとき
森で道に迷ったベルの父は
野獣(ダン・スティーブンス)の城に閉じ込められてしまう。

父を探して城にやってきたベルは
野獣と対峙することになるのだが――?!


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これは
正統派ザ・ミュージカル!

この高揚感は、やっぱり独特のものですねえ。

エマ・ワトソンがきれいだし、歌もうまーい。

たぶん求める人は
求めるものを得られるんだと思います。


でも、ワシにとっては
お話が
ちょっと噛み足りなかった。

そもそもディズニーアニメ版を知らなくて(スミマセン。笑)
これは、アニメ版に忠実に作ってあるんですね。

レア・セドゥ版「美女と野獣」
野獣になったいきさつに
「へえ。そういう話だったのか」と思ったんだけど
これで原作を知って、
やっぱりここは創作なんだなあと思った。

さらに本作は、やさしい話になっているというか
野獣になった理由がフツーだったし
そもそも野獣のルックスも醜くない。
オレの苦しみ、もっと描いてくれー、みたいな気がした。

いっぽう
エマ・ワトソン演じるベルの苦しみは
けっこうしっかり描かれている。

独立心旺盛で、変わり者で、
小さな村で浮いた存在だったその苦悩が
よくにじみ出ていて

なんだか最初から
野獣とお似合いじゃないか!と思ってしまったのかも(笑)


“現代ふうに”されている箇所も
いろいろあるんですけど

まあ「古典」とされるものを見比べたり
違いを楽しむのはおもしろいですね。


★4/21(金)から全国で公開。

「美女と野獣」公式サイト
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ターシャ・テューダー 静かな水の物語

2017-04-14 22:49:05 | た行

美しい庭と犬に、癒やされる~


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「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」69点★★★★



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アメリカを代表する絵本作家ターシャ・テューダー。

1971年、56歳のときにバーモント州の山奥に
息子セスが建ててくれた農家に移り住み、

2008年、92歳で亡くなるまで
素敵な庭を作り、自然とともに暮らしていた
元祖スローライフ実践者の憧れとして、日本でもファンの多い方です。

かくいうワシも、
最初に90年代後半に、本でターシャの庭を知り
ファンになった一人。
(相原真理子さんの訳で、相原さんのお名前を知ったのもこれが最初だった・・・


2005年からは彼女の暮らしぶりが
NHKのドキュメンタリー番組でも放送されて
大人気になったんですね。

で、本作はNHKで10年間、彼女を追ってきた
松谷光絵監督がまとめた映画。
ファンとしては愛蔵版という感じですねえ。


彼女の寝室などの撮り下ろし映像や
彼女亡き後、その生活を守っているターシャの孫たちの「いま」も写っていて
最新版ではありますが
番組を見てきた人には
「ん?これ、前に見たよね?」というデジャブもあります。


それでも改めて
1957年、女性が独り立ちするのも難しい時代に
夫と離婚し

絵の仕事で4人の子どもを育て
自分の理想の生活を貫いた
その人生、その強さに、改めて感嘆しました。

こちらの姿勢もシャンとします。

なにより
美しい庭と愛犬コーギーに癒されまくり(笑)

それにしても。
自分の理想は20代から変わってないのに
もう四半世紀たったいま
それに、どれだけ近づけているだろうか・・・。


★4/15(土)から角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」公式サイト
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わすれな草

2017-04-13 23:49:07 | わ行

万国共通のリアル問題。
でも、つらくない。


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「わすれな草」73点★★★★


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ドイツ発、認知症の母と、その母を介護する父を
30代の息子が撮ったドキュメンタリー。


万国共通のリアル問題ですが
しかし悲壮感はなく、意外なほどピュアなラブストーリーなんです。


彼女の病気をきっかけに
家族がその関係を再構築してゆく様子に
あたたかい希望も感じます。

なので、警戒せずに見てほしい。


なによりまず、このお父さんとお母さんが
けっこうな美男美女カップルで
夫は数学者、母は政治活動家――という経歴が
絵的に、映画的においしい(笑)

さらに
息子が両親の昔話を探っていくと
意外な過去が出てくるのもすごい。

二人が浮気も公認の「進んだ」カップルであり、
それゆえの嫉妬や複雑さがあった・・・とか
思いがけず“普通”っぽい家庭の「裏事情」が描かれるんです。
いやあドラマチック!


もちろん美しいことばかりではないです。

美しかったお母さんが、記憶障害とともに、
信じられないスピードで老いていく。

その姿は切ないし
会話のもどかしさや、家族ならではのイラつきも、痛いほどリアルに刺さる。

きれいごとでない
介護のリアルもきちんと見えるんだけど
それでも「家族」がいる、そこには光がある。

彼らはリアル家族だけど
この「家族」はどんな形式だっていいと思うんですよ。
やがてくる未来を、
こんなふうに、感じられるのは悪くない。


70歳になってもハンサムな夫と
優しい息子にたっぷり愛情を注がれて
はにかんだようにするお母さんは、幸せものだなあと
しみじみ思いました。


★4/15(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

「わすれな草」公式サイト
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人生タクシー

2017-04-12 23:06:46 | さ行

これって、ドキュメンタリー?
いやあ、うまく考えたものだ。


「人生タクシー」70点★★★★


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テヘランの街中を行く一台のタクシー。

運転しているのは
世界的に有名なジャファル・パナヒ監督その人だ。

タクシーに乗り込んだ乗客のなかには
監督に気づき「うわお!光栄だ!」と騒ぐ人もいるが

ほとんどの人は気づかない。

そして
ダッシュボードに置かれたカメラが
車内の様子を映し出す。

死刑制度について議論する男女、題材に悩む若き映画監督――

それはイラン社会の問題点を映し出すようでもあり――。


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イランで映画製作を禁止されていながら
「これは映画ではない」
など発表し続けている
ジャファル・パナヒ監督の新作。

本人がなんとタクシー運転手に扮し
さまざまな人々を乗せていく・・・という展開で

一瞬「え?ドキュメンタリー?」とも思っちゃうんですが
いやいや、これはうまーく考えられたフィクションでしょう。

うまい手を考えたものだなあとにんまりします。


まずおもしろいなと思ったのは
イランの「乗り合いタクシー」という習慣。

客が乗っていても、人は手をあげてタクシーを止めるし
乗れるだけ、どんどん乗ってくる(笑)

これが向こうでは普通なんでしょうねえ。

と、ここで学んでおいたら
アスガー・ファルハディ監督の「セールスマン」(6/10公開)を見て
やっぱり自然に“乗り合いタクシー”の1シーンが出てきて
すっごく状況がわかった(笑)


すんません、話が横道にそれましたが
というわけで、いろんな人が乗ってくるタクシーを舞台にし、
監督自身が乗客の話を聞いたり、
乗客同士が議論することで
イランの問題が浮かび上がってくる、という構造です。

「アイデア賞!」と思うけど
映画としては車内の固定カメラがメインで
(携帯や姪っ子のカメラなどで、うまくつないでいるけどね)
ちょっと単調ではある。

あと
おしゃべりな監督の姪っ子(ホンモノではないでしょう。笑)をはじめ、
とにかく女性たちがよくしゃべるので
若干、うんざり気味に(苦笑)


でもね、ラストがうまいんですよ。
車上荒らしと見せかけて
「メモリーカードは?」と探している男たちの図は
当局への強烈な皮肉だと思います。


★4/15(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開。

「人生タクシー」公式サイト
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グレートウォール

2017-04-11 23:17:20 | か行

まさかこういう話だとは・・・!(笑)


「グレートウォール」64点★★★


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むかしむかし。宋の時代の中国。

備兵ウィリアム(マット・デイモン)は
幻の「火薬」を追い求めて
仲間たちとシルクロードを旅していた。

ある夜、彼らは砂漠で
何者かの襲撃を受ける。

何とか生き残った彼と仲間は
二人で砂漠をさまよい、
巨大な城壁にたどり着く。

それは名高い「万里の長城」だった。

城に囚われた彼らは
その城壁が何のために作られたかを知ることになる――!


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チャン・イーモウ監督による
万里の長城を舞台にした壮大な歴史戦闘記。・・・はそうなんだけど、
いやあ、まさかこういう話だとは・・・!

万里の長城は何のために築かれたのか?
何から守るために?

――その敵はなんなのか
事前情報の解禁に慎重なのも納得。

楽しみにしている方は、見てから読んでくださいね~






万里の長城は何のために築かれたのか?のアンサーとして
「パシフィック・リム」や「300<スリーハンドレッド>」など
数々のヒットを生んできた製作者トーマス・タル氏がブレーンたちと考えたのが
「敵がモンスターだった!」って話なんですね。

てっきり
マジな歴史ものかと勝手に思い込んでいたので
かなり衝撃だった(笑)

あの広大な壁はこのために築かれたのか・・・
驚きながら観ていると

壁を境にした
人間VSモンスターの構図も
ワイヤーで釣られながら、敵に立ち向かう戦士たちのビジュアルも
「え?進撃の巨人?」な感じで(笑)

モンスターと砂漠で対峙する様子とかは
やったことないけどモンハンっぽい?とか。

ゾンビが壁を駆け上る感じは「ワールド・ウォーZ」じゃね?とか
いろんな要素が入っているなあと思います。

別に発想の奇抜さは
おもしろいし、どんどんやれ~!な感じなんですが
あまりにも、ちょっと「どこかで見た?」よな既視感が多すぎたかな。


IMAX版で観せていただきましたが
万里の長城の上をサーッと滑ってゆくようなカメラワークは
予想通りの気持ちよさでしたし

スケール感とマット・デイモン、そして
いぶし銀な魅力の軍師、アンディ・ラウがカッコイイ!ので
許します(笑)


★4/14(土)から全国で公開。

「グレートウォール」公式サイト
コメント (2)
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