ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ナルニア国物語/第3章 アスラン王と魔法の島

2011-02-21 10:50:41 | な行
「ナルニア」の映画には
アスランを何分以上
出してはいけないという
決まりがあるのだろうか?


「ナルニア国物語/第3章アスラン王と魔法の島」64点★★★



ペベンシー家の末っ子
ルーシー(ジョージー・ヘンリー)と
エドモンド(スキャンダ-・ケインズ)は


アメリカにいる兄ピーターと姉スーザンと別れ、
いとこのユースチス(ウィル・ポールター)の家に
預けられている。


現実主義者のユースチスは
ルーシーたちが口にする
「ファンタジー」な世界が大嫌いで
何かとイジワルをしかけていた。

そんなある日
3人は壁に掛けられた絵画のなかに
吸い込まれてしまう。

たどり着いた場所は
なんとナルニアの海。

そして
ナルニア国は
新たな驚異にさらされていた――。



「ナルニア」シリーズ第3弾で
初の3D仕様。


美しい絵本のような
品のよい美術センスは
3Dになっても健在でした。


今回は
ストーリー運びと
キャラクターの心理描写が丁寧。


おなじみルーシーやエドモンド
カスピアン王子の続投に加え

「リトルランボーズ」の
あの生意気少年
新たなメンバーとして活躍するのが
うれしかったですねえ。


彼は次回作「銀のいす」にも
出演するそうで、楽しみす。



ただ
やっぱり3Dって、画面が暗くて
どうしても苦手なんですよねえ。

サングラス越しに見てるようで


途中、メガネをひょいとはずすと
海の色みや、輝く日差しが
キラキラと明るくて

もったいないなあ、と。


どうにかならないんですかねえ。


それに3Dになってから
さらにCG表現が
どの作品も似通ってきている気が。


今回の3DとVFXは
「アリス・イン・ワンダーランド」を手がけた
会社が中心になっているそうですが

どこか
「ハリポタ」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」で
見たことのあるようなシーンがあって
気になりました。



まあ、アスランの毛は
いつも以上に
フッサフサでしたけど。

……触りたい!


ちなみに
監督のマイケル・アプテッドは
奴隷貿易廃止に尽力した政治家を描く
「アメイジング・グレイス」(3月公開)と
公開が相次ぎます。要チェック!


★2/25から全国で公開。

「ナルニア国物語/第3章アスラン王と魔法の島」公式サイト
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GONZO~ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて~

2011-02-19 16:50:42 | か行
ジョニー・デップが心酔している
人物だそうで

彼がナレーションをやってます。


「GONZO~ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて~」63点★★★


1960年代に
かの「ヘルス・エンジェルス」
同行取材で名をあげ

70年代には
大統領選取材などで活躍した
ジャーナリスト“GONZO(ゴンゾー)”こと
ハンター・S・トンプソン。

彼のインタビューや
彼を知る人の証言で構成された
ドキュメンタリーです。


GONZO=ゴンゾーとは
“ならず者”という意味。


私は知りませんでしたが
トム・ウルフなんかと近いらしい。
(映画にトム・ウルフも出てる!)


ジョニー・デップ主演
「ラスベガスをやっつけろ」(98年)
(これは見てる。確か)
の原作者でもあります。


自ら対象に飛び込みレポートする
当時新しいタイプの
ジャーナリズムを確立した人物だそうですが


まあ見てると
ねつ造記事で対立候補を蹴落としたり
取材と称して
ラスベガスで遊びまくったり


けっこう、やり方、唖然(笑)

でもこれも
60年代~70年代という
あの時代が欲した
パワーだったのかもしれないですねえ。


『Time』誌のバイトから
スタートした彼が

好きだったフィッツジェラルドの
『華麗なるギャツビー』を何回も書き写し
独学でライターなった、というくだりなんて

ちょっと、グッときた。

しかし死んでから
そういうのバラされちゃうのも
恥ずかしいもんだなあ(笑)


そんな彼が
有名になるに従って
自分の作ったイメージに囚われ

さらに
興味を持てる対象を失い
書けなくなってしまう――という顛末には
感じ入るものがありました。


ジャーナリストの立ち位置や
匿名性ということについて

けっこう考えさせられた。


当時のアメリカの政治やカルチャーの
背景をよく知ると
もっと深く入れるかもしれませんね。


しかし
“ならず者ジャーナリスト”って
よく考えるとすごいネーミング(笑)

わしも
“辻斬りライター”とかにしようかな。


★2/19からシアターN渋谷、シネマート新宿ほかで公開中。

「GONZO」公式サイト
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トスカーナの贋作

2011-02-18 22:46:47 | た行
この映画は
“寄り添ってる感”というより
“向かい合っている感”でした。

あの
ジュリエット・ビノシュに、ですよ?

贅沢うう~


「トスカーナの贋作」70点★★★☆


イタリア、南トスカーナの村に
芸術における「本物と贋作」の本を書いた
作家ジェームズ(ウィリアム・シメル)が
講演をしにくる。


講演を聴いていた
画廊オーナーの女(ジュリエット・ビノシュ)は
彼をドライブデートに誘う。


あるカフェで
夫婦に間違えられた二人は
まるでゲームを楽しむように
「夫婦」を演じ始めるのだが――。



「友だちのうちはどこ?」(90年)などで知られる
イラン映画の巨匠
アッバス・キアロスタミ監督が

オトナの男女を描いたラブストーリー
……なんですが


これが巨匠、もう
仕掛ける仕掛ける(笑)


いや、別にサスペンスじゃないんですけどね。

ほぼ男女二人の会話劇なのに
まあ洗練されていて
退屈させないのはすごい。


そんな二人のハイレベルな
会話の応酬に

遅れまいと必死で耳をすまし(目をこらしてる、が正解)

そうこうしているうちに
映画のテーマである
「何が本物で何か贋作か」が
グニャグニャになり

いや~単純な私は
すっかりダマされました!


ちょっと番長には
大人すぎたようです。


ただ文句なしに楽しめるのは
ジュリエット・ビノシュとの親密具合。

彼女と美しい
トスカーナの景色の中をドライブし

カフェで
カプチーノをはさんで向かい合う。

「いま、私の前にいるのは
(観客である)あなたなのよ」的な

このプライベート感が
贅沢でたまりません!


ぜひ体験してみてください。


今週公開の「ヒア アフター」、「サラエボ、希望の街角」
そして本作は

いずれもカメラが役者と観客の間を
自然かつ濃密に取り持ってる点で
ちょっと近い感じがします。

そういうのがブームなのか?
たまたま……ですかね。


★2/19から渋谷ユーロ・スペースで公開。ほか全国順次公開。

「トスカーナの贋作」公式サイト


そして
来週発売の『週刊朝日』ツウの一見で
「龍馬伝」でもおなじみ
人物デザインの柘植伊佐夫さんが
この映画についてお話してくださっています。

来日時のビノシュのスタイリングもされたそうで
本作の考察も、すごく深くて大人!

いわば「贋作」を作り出す
映画やドラマの仕事に携わる方が
「本物と贋作」についてどう考えるのか?

ぜひ、ご一読ください☆
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サラエボ、希望の街角

2011-02-15 11:34:05 | さ行
これも主人公に
“寄り添う感覚”が起こる映画だったなあ。
それゆえに、伝わるものが深いんです。


「サラエボ、希望の街角」79点★★★★


ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都、
サラエボで暮らす
客室乗務員のルナと恋人のアマル。


二人は15年前の
ボスニア紛争を経験した世代で

心に傷を負っているが
いまの生活ぶりは現代っ子そのものだ。

だが、あるとき
アマルが職を失ってしまう。

人生に迷い始めたアマルは
やがて
厳格なイスラム原理主義グループに
加わるようになり――。



サラエボ出身の女性監督、
ヤスミラ・ジョバニッチ(36)の2作目。


ボスニア紛争を
詳しく知らなくても

現代を生きる
若者のドラマから
「そこで、何が失われたのか」
「いま、何が起こっているのか」を

自然に理解させ、共有させる
相当にすご腕の監督です。


はじめは美人スッチーと
その恋人の日常が

日記をめくるような自然さで
書き表されていくんですよ。


スタイリングも映像の感性も
オシャレで若々しい。


さらに映画が
主人公ルナの
肌のアップから始まったせいなのか


それこそ
便座に座ってるような
プライベートシーンまであるからなのか


呼吸のたびに波打つ彼女の胸の
上下運動まで共有しているような

“寄り添う感覚”がある。


だから
彼女と恋人の間に
不協和音が響き始めると

彼女が感じる違和感や
「うわ、どうしよう?」的困惑が

まるで自分の皮膚があわ立つように
同調して感じられるんです。


そうした身体的シンクロから
彼女の「戦争の傷」も
こちらに伝わってくる。

ちょっと珍しい導かれ方でした。


女性監督ならでは、とも言えますが
でも女性ばかりでなく
男性も十分、共有できると思う。


彼氏アマルの心情も
すごくよくわかったから。

暴力的なラップよりも
澄んだ声のコーランが
実際、心に響きましたからね~。


「ああ、そっちに行くのも
わかるわ……」という。



西洋化とイスラム。

自由と規律。

男と女。

どっちが正解、ではないからこそ
相容れない事柄がある現実を
深く感じさせる映画でした。


なぜ
ウ○チをする場面があったのかにも
ちゃんと理由があるんですねえ。


で、
本日発売の『週刊朝日』(2/25号)ツウの一見で
サラエボ出身の歌手・ヤドランカさんに
お話を伺ってます。

実際、いまサラエボでは
宗教に傾倒する若者が増えているんだそう。

なぜそうなるのか
ヤスミラ監督が何を伝えようとしているのか

この映画の「ツボ」を
非常に明確に教えてくださってます。

ぜひご一読を☆


★2/19から岩波ホールで公開。ほか全国順次公開。

「サラエボ、希望の街角」公式サイト
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ヒア アフター

2011-02-13 16:47:29 | は行
公式サイトに流れる音楽を聴きながら
いまもヒタヒタと

心が何かの液体にひたり
満たされる感じがしております。


「ヒア アフター」80点★★★★


サンフランシスコに暮らす
ジョージ(マット・デイモン)は
死者と対話できる能力を持つ男。

かつては霊能力者として活躍したが
いまは能力を封印し
ひっそりと暮らしている。


パリのジャーナリスト・マリー(セシル・ドゥ・フランス)は
バカンス先の東南アジアで
津波に巻き込まれ
不思議な体験をする。


ロンドンの少年マーカス(ジョージ・マクラレン)は
双子の兄(フランキー・マクラレン)を
ある出来事で失ってしまう。


「死」を身近に体験し
大きな影響を受けた3人が
意外な道筋で出会ったとき

何かが起こる――。


クリント・イーストウッド監督×
製作総指揮スティーヴン・スピルバーグの話題作。


「死ぬ」とはどういうことなのか。

身近な人の「死」を体験したとき
その喪失とどう向き合い
どう再生していくのか――


誰もが挑む難しい題材ですが

イーストウッド氏の老練の技
スピルバーグ氏の
センチメンタリズムが
うまく作用した佳作と感じました。


観客と役者をできるだけ
シンクロさせるような
撮り方をしていて

見る人の“感覚”に頼り
ゆだねているようです。


水がキーになっていることもあり
見た後
ゆらゆらと波間をたゆとうような
独特な感覚が残りました。


宗教的な縛りも感じなかったし
万人の心にスッと
染み込みやすいと思う。



ただ
ゆっくり丹念に話を紡いだ分
構成バランスがちょっと崩れており

これを余韻ととるか
「え?」ととるかで
評価が分かれる気がします。


しかし
私はかなり好きでした。


スピルバーグの「A.I.」が好きな人は
イケるかもしれません。


特に
望まぬ才能(ギフト)をもらってしまった
霊能力者役の
マット・デイモンがよかった。

それこそ彼のギフトである
誠実さを全開にして

「死後の世界」や「死者との会話」なんて
霞みを掴むような
イメージだけの世界を

語るだけでこちらに
納得させてくれました。


双子の兄弟(本物の双子!)を演じた
子役もハマってた。


しかし残念だったのは
ジャーナリスト役の女優。

この人、妙に胴長な
存在感なんだよなあ(プロポーションだけにあらず)。


あ、彼女
「シスタースマイル ドミニクの歌」の主演女優か!

ああ、好みでない~~。


★2/19から全国で公開。

「ヒア アフター」公式サイト
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