ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

祭の馬

2013-12-12 23:41:46 | ま行

すんごく悲しいかも…と身構えましたが
全体的には穏やかでした。


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「祭の馬」69点★★★★


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3.11以後、福島県南相馬市を取材した
「相馬看花」(12年)の松林要樹監督の

相馬を舞台にしたドキュメンタリー第二弾。


相馬に古くから伝わる
「相馬野馬追(そうまのまおい)」という
数百の馬による伝統神事。

その神事のため相馬に集められていた競走馬たちが
3.11で津波に襲われ、
さらに原発事故で置き去りにされてしまう。

馬と、馬を飼う人々の思いと運命を
一頭の元・競走馬を軸に
3.11から1年半に渡って追った作品です。

馬って、見ているだけで
どこか切ないものがある生き物だし

福島の動物たちの運命には
常に心を痛めているので

正直、見るのにけっこう勇気が入りました。


確かに冒頭、一斉避難命令の間に
餓死してしまった馬たちの姿が映され、
つらすぎるものもあった。

それでも、全体的には穏やかな作りで
見てよかったと思いました。

「生き物だもん、ほっとけないさ」と
なんとか馬たちを最良の状態で飼育し、祭を実行しようとする
人々の姿があたたかいし


松林監督は「相馬看花」よりさらに
伝えるべき素材を、効果的に相手に伝える術を磨き、


東電に、国に踏みにじられた人と動物の叫びを、
勢いあまることなく、
抑制とユーモアさえある目で見続けている。


動物と人の関わり、そして
そもそもの、馬たちの運命を
考えさせる部分もあり。

かすかだとしても、希望も感じることができました。

なにより
「現実を見ねば、もっともっと間違った方向に進んでしまうよ?」と
馬たちは言っているのです。きっと。


★12/14(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「祭の馬」公式サイト

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