ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝

2012-04-08 19:53:51 | か行

95歳の現役医師がその体験から、
「放射能汚染に立ち向かう方法」を教えてくれます。


「核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝」60点★★★


2006年にフランス人監督が制作したドキュメンタリー。
ナレーションを染谷将太氏が担当しています。

28歳のとき広島にいた肥田舜太郎医師は、
自身も被曝しながら、多くの被曝者を診察し続けている。

カメラはそんな肥田医師に密着し、
彼の体験や証言を映像に収めていきます。


原爆投下がアメリカによる「人体実験」だったこと
米軍は広島市民らが一番屋外にいる時間を念入りに調べて
原爆を8時15分に投下したこと……などが浮き彫りになり、

その非人道ぶりに、改めてゾッとします。

アメリカに研究対象として保存されている幼児のホルマリン漬けなど
ショッキングな映像もありますが

やはりもっともショックなのは、
被曝者たちに現れる放射線被害の症状と、死に至るまでの状況の解説でしょう。

3.11以降、我々が欲しがっているのは
まさにその「内部被爆した人が、その後どうなるのか」という情報なわけで。


本作はもちろん
いまのこんな状況を想定して作られたものではないので
いたしかたないですが、

焦点がおそらく「ヒロシマの証言」にあるので
少々、退屈なくだりもあります。


同時上映の
「311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より」

のほうが、いま我々が求めているものを直接的に描いているので、
2本合わせて観るのが正解でしょう。

こちらは311後に
肥田医師が全国で行っている講演をまとめた
20分の作品で、

内部被爆者に現れる症状――さしたる原因も症状もなく「とにかくかったるく」なったり、
老化が早まったような状態になる――などの話が治められています。

そして肥田医師の指導で
多くの被爆者がまだ生きているという事実が
非常に大事なわけですね。

どうすれば、放射能汚染に立ち向かい、生き抜けるのか?

そのヒントがあると思います。

★4/7から渋谷アップリンクで公開。ほか全国順次公開。

「核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝」公式サイト

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2 コメント

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観たい (空気人形)
2012-04-08 23:47:48
昨日の沖縄の基地の騒音の映画も本作も細々と公開されるべきではなく、多くの観客に観て欲しい作品です。
しかし、現時点では私の市では予定がなさそうです。でも、なんとかしたいです。
本当に良質のドキュメンタリーはハマりますよね。
返信する
本当に (ぽつお番長)
2012-04-10 01:36:58

最近は良質のドキュメンタリーが増えました。

各地を自主上映会で回るような
スタイルも増えてきていますね。

番長の貧弱なおつむは
もっぱら良質のドキュメンタリーによって
かろうじてその品質を維持しております。
返信する

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