ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

隣の影

2019-08-01 02:05:48 | た行

アイスランド発、ブラックな隣人トラブル・スリラー!

 

「隣の影」69点★★★★

 

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アイスランドの街に住む

アトリ(ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン)は

あることから浮気がバレて

妻(ラウラ・ヨハナ・ヨンズドッテル)に家を追い出されてしまう。

 

幼い娘もいるし、なんとか関係を修復したいのだが

取りつく島もない妻を前に

とりあえず郊外にある実家に居候することに。

 

だが、実家は実家である問題を抱えていた。

 

実家の庭には見事な木があるのだが

それが隣家のポーチに影を作っていると

お隣からクレームを言われていたのだ。

 

しかも、隣人の(若作りの)妻がそれを言ってるものだから

アトリの母は「絶対に切らない!」と譲らない。

 

どこにでもありそうな、隣人トラブルは

しかし

次第にエスカレートしていき――?!

 

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隣の家の庭木によってできた影をめぐるいさかいが、

どんどんこじれていき――?!というスリラー。

 

隣人トラブルといえばアルゼンチン発の名作(迷作?)

「ル・コルビュジエの家」(12年)を思い出しますが

 

 

人間関係の難しさは万国共通。

 

しかもアイスランドといえば

「馬々と人間たち」(14年)

にはじまり「立ち上がる女」(19年)

キュンとする「ハートストーン」(17年)まで

不思議おもしろ映画の多産国!と期待値が高かった。

 

実際、シニカルがたっぷりまぶされ

多分にブラックで、おもしろい部分もあったのですが

オチに向かうあまりの展開には、ちょっと引きました(苦笑)

 

 

もっと笑える話だったらよかったのになあ。

 

冒頭、お間抜けなことから

主人公アトリの浮気(っていうほどでもないところがまた気の毒)がバレるくだりとかは

ブブブと笑って見ていたのだけれど

その後、彼が奥さんとよりを戻そうとする行動は、

まったくシャレにならないし(てか、怖い

 

いがみあう隣家がそれぞれに犬と猫を飼っていて

「彼らに何かあるのでは?!」――とフラグが多すぎて、心労するし

どんどんこじれていく人間関係のオチが

わお!これか!と(笑)

 

まあ、それはそれでおもしろくはあるんですが。

 

つくづく、笑いとブラックの加減って難しい。

 

それにやっぱり女って、怖ええ・・・・・・。

 

★7/27(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「隣の影」公式サイト

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北の果ての小さな村で

2019-08-01 00:57:32 | か行

実に清涼で、謙虚な気持ちになりました。

 

「北の果ての小さな村で」71点★★★★

 

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グリーンランド東部にある、人口80人の村に

デンマーク人のアンダース青年(アンダース・ヴィーデゴー)が

新人教師として赴任してきた。

 

やる気とガッツに溢れ

10人の子どもたちの前に立ったアンダース先生だが

グリーンランド語を話す子どもたちとは言葉も通じず、

子どもたちもまったく授業に集中しない。

 

生徒の一人が一週間学校に来ないことを心配して家に行くと

おばあさんに

「おじいさんと犬ぞりで狩りの旅に行った。学校より大事だから」と言われてしまう。

 

習慣も文化も違う極寒の地で

村人たちにもなじめず

孤立するアンダース青年だったが――?!

 

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広い広い雪原のなか、小さな点が雪に線を描いていく。

それは狩りに向かう、犬ぞり。

たどり着いた先で彼らは、シロクマ親子と対峙する。

 

そのとき、自分もまさにその場にいるように

神々しいまでの畏怖と畏敬の念が

お腹の底から湧き上がってくる――

 

そんな体験をした映画でした。

 

それほどに

雪原に映る小さな小さな人間の営みが訥々と美しく、のめり込んでしまった。

 

ストーリーは

グリーンランドの村に赴任したデンマーク青年が、

村人に溶け込むことができず悪戦苦闘する、というもので

 

シンプルで、てらいなく

ちょっとユーモラスさもある。

 

主人公が、本当にこのグリーンランドの村に赴任した青年で

出てくる人々もみな、現地の人そのままだ、と

ラストで明かされて

ああほとんどこれ、ドキュメンタリーなんだ!

だからこんなにストレートに胸に迫ってくるんだ!と

合点がいきました。

 

グリーンランドの北の果てに暮らす住民たちはイヌイットで、

独自の言葉や文化を守り続けていて

顔立ちは東洋系というか、ちょっと日本人っぽい。

 

デンマークの同化政策により

差別もされ、デンマーク語を押しつけられもした、という土壌があり

どこか「サーミの血」(2016年)にも通じるけれど

こちらはもっとほんわかしている。

 

で、赴任してきたアンダース青年は

穏やかな好青年だけど

知らず「デンマーク流」や「文明」的なものを

子どもたちや村人に押しつけようとしてるんですね。

 

そんな上から目線を村人たちに感じとられ、

彼は村になかなか溶けこめない。

 

そんななか、だんだんと彼に変化が訪れていく

その様子も、またとても自然で

 

大自然や動物に対するのと同じく、

謙虚に相手に向き合うこと。

 

胸襟を開き、身を任せれば、雪解けは必ずやってくる――

 

そんな気持ちになりました。

 

そして、アンダース青年、

いまも村で暮らしているそうです。

いい話やーん。

 

★7/27(土)からシネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開。

「北の果ての小さな村で」公式サイト

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