現代アート入門として
めちゃくちゃよい教材だなあと思いました。
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「アートのお値段」70点★★★★★
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日本でもネズミの絵が「これは?!」と大騒ぎになったバンクシーや
存命アーティストとしては最高額の
100億円で作品が落札されるジェフ・クーンズ。
なぜ、そんなに価値があるの?
そんな素朴な疑問に端を発しながら
旬の現代アーティストたちを紹介し、
彼らの作品や制作風景もみせながら
「現代アート」の現状を見せていくドキュメンタリーです。
アートマニアには新味はないかもしれないけれど
現代アート入門としてめちゃくちゃよい教材だなあと思いました。
なぜこのアートが1億円なの? その価値や値段は誰が決めるの?
アートとお金とは何か――?
監督はとにかく、そこの疑問を解き明かしたいようで
オークショニア、超富裕層コレクター、画家らを
総力あげて取材し、質問し続けるんですね。
その答えは
実際、味気ないものかもしれないけれど
つまるところ全ては「需要と供給」(笑)。
欲しがる人がいれば、値は釣り上がる、ってこと。
まあ、そこに想像はつくんだけど
この映画では
おそらく、最初に窓口になったサザビーズのキュレーターが紹介したのでしょう
キーマンとなる超富裕層コレクターたちの話によって
アートとお金がどう世の中で動いているのかが
実にわかりやすく見えてくるのがおもしろい。
(分散投資など目的があったりとかね)
同時に、そうした投資目的な状況によって
公共機関や美術館が、とても手を出せない値段になっている、という状況もよくわかり
うーむ、と思いました。
なにより、感銘したのは
そんなお金の話を追いかけた結果、
「創作に、本当に必要なものは何か」の真理が見えてきたこと。
“真の”アーティスト=創作者自身にとって
お金なんて「マジどうでもいい」ものなんだ、ってことが
本気で、みえたんです。
田舎の家の倉庫で、
絵の具が飛び散る異様な空間で
憑かれたようにキャンバスに向かう
老画家ラリー・プーンズ。
写真から、滴るしずくや女性の肌を
精密にキャンバスに写し取っていく
マリリン・ミンター。
評価され、もちろんお金が入ることは
彼らにとって嬉しいことだけれど
なによりホンモノのアーティストにとって重要なことは
自らに湧き上がるものをキャンパスに変換すること、
作り続けること、
それを人に見せて「人の心を動かした!」という実感を得ることなのだって
ガチで感じられました。
逆にそうでなければ
創作なんて続けられない、ってこともよくわかった。
「真の理由がないならアーティストになるな」――という
画廊経営者の言葉も、胸に刻まれました。
★8/17(土)からユーロスペースほか全国順次公開。