ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハートストーン

2017-07-13 23:58:38 | は行

くっ。胸が苦しい。


「ハートストーン」75点★★★★


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東アイスランドの小さな漁村に暮らす
幼なじみの少年二人、
ソール(バルドル・エイナルソン)と
クリスティアン(ブラーイル・ヒンリクソン)。

ソールが村の美少女に恋し、
クリスティアンはそれを応援しようとする。

だが、クリスティアンの胸には
複雑な思いがよぎっていた――。


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切ない。久々に指先がじんじんしました。

このプレスの表紙になってるワンシーンからも
誰が女の子だか男の子だかわからないよね?というくらい

美しく、切ない、思春期の物語。

監督が幼いころに過ごした漁村での実体験が
ベースになっているそうで
それを考えると、さらに「きゅいん」とくる。


そしてアイスランド映画といえば
「馬々と人間たち」
「ひつじ村の兄弟」など

予測不能で、人間も動物も「生!」な感じの
独特の風合いがあり
その持ち味が、この作品に含まれています。


で、お話はというと
アイスランドの漁村に暮らす幼なじみの少年、
ソールとクリスティアン。

とにかく村民誰もがお互いを知っているであろう
狭いコミュニティの中で、
思春期の少年たちの鬱屈は常にはち切れんばかり。

そんな閉鎖的な世界で、
自分のセクシャリティに気づくクリスティアン。

そして二人は
友情と愛情の狭間を微妙に揺れ動く――というお話。


LGBTを扱ってはいるけれど
あくまでもそこにあるのは
手探りで、壊れそうで、もどかしい、思春期のみずみずしさ。

ソールの姉たちの描写なども実に的確なので
対象を限定せず
誰もに響くと思います。


それにしても
この環境で、少年クリスティアンに
誰が簡単に「大丈夫だよ」なんて声をかけられる?と真に感じた。

理解者であろうとする人の言葉も
決定的な衝撃になってしまう
そんなクリスチャンのあまりに切ない表情に
胸が潰れそうになりました。


LGBTに甘くない、優しくない世界はまだまだある。

彼らのいる世界の状況を知らずして
理解している顔はできない、とあらためて思いました。


★7/15(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ハートストーン」公式サイト

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