ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

眠る村

2019-02-02 19:27:13 | な行

怖い。この村が。人間の心が。

 

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「眠る村」70点★★★★

 

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1961年、村の懇親会で

ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」。

その真相を追うドキュメンタリーです。

 

事件の名前と、概要は聞いたことがあったけど

詳しくはまったく知らなかったので

非常に興味深く見ました。

 

 

事件が起こって6日後、村の男性・奥西勝(当時35歳)が逮捕される。

奥西という人は、村に妻と愛人がいたそうで

「その三角関係を清算するためにやった」と

一度は自白をするんですね。実際、奥さんと愛人は事件で亡くなってる。

 

でも公判で「自白は強要されたものだ」と訴え、

一審では無罪となるも、二審では死刑判決。

最高裁は上告を棄却し、1972年に死刑が確定した。

その後も奥西氏は毎日、毎日を「今日が執行の日か」とおびえながら

獄中で無罪を訴え続けたんです。

 

で、2015年に獄中で肺炎で亡くなった。享年89。

 

さあ、真相はどうなのだろう?と

制作者である東海テレビが検証していくんですが

ここまで推理小説顔負けのミステリーだとは知らなかった。

 

まず驚いたのは

ぶどう酒っていうから赤色かと思ってたら

白ワインなんですよ!

それすら、間違ってたワシだけど、

なんだか検証を見ていると

それに似たような、嘘っぽい証拠や証言がボロボロ出てくる。

 

最初こそ「愛人と本妻ねえ・・・・・・」とか、若干色眼鏡で見ていたけど

(実際、コノ方、ちょっとした甘めの男前)

村人は割と性的にオープンで、こうしたことはよくあったらしく

三人の関係も「みんなが知ってたさ」と証言されるんです。

「じゃあなんで、殺す必要があったのか?」って疑問が出てくる。

 

さらに

「毒となった農薬」「その混入方法」「村人の証言」――

なんだか、よってたかって、奥西氏を犯人にしようとしてないか?

さすがのワシでも気づいてきますわな。

 

 

そして、だんだんわかってくる。

「“生け贄”が必要だったんだ」――ってこと。

村人は村の平穏のために、検察は手柄のために

彼を人身御供とすることにしたのではないか?と。

 

人間の心は、げに、怖い――。

50年以上経ったいまも、この事件を究明しようとする動きが止まない理由は

そこにある気がします。

 

それに100%彼が無実かだって、わからない。

彼じゃないならば、一体誰が、犯人なのか?

何のために?

 

結局、真相はいまも藪の中。

哀しきミステリーは、どこまでも黒く、だからこそ人を惹きつけるのかもしれません。

 

★2/2(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開。

「眠る村」公式サイト

コメント
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