ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

人間機械

2018-07-21 13:52:03 | な行

 

シンプルに強烈な矢を放つインド版「観察映画」。

 

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「人間機械」70点★★★★

 

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冒頭、灼熱の炉を火の粉を被りながら、かき混ぜる男が写る。

さらに、長い長い布を延々と、ひたすらたぐる男。

布の山に埋もれて、死んだように眠る少年たち。

 

ナレーションも音楽もなく

でも、次第にここが、インドの巨大な繊維工場だとわかってくる。

そして彼らの言葉から、

彼らが低賃金で12時間労働を強いられていると知る。

しかもまだ幼い少年たちも、労働力なのだ。

 

労働組合を作り、団結すれば会社と交渉できるが、

しかし、誰もリーダーになりたがらない。殺されてしまうからだ(マジで)

そして彼らは羊でいることを受け入れ、事態は何も変わらない。

 

淡々としたカメラが

強者の支配と搾取の構図を浮かび上がらせる。

 

 

それは、我々にも突き刺さる。

 

労働者の問題はどこも同じなのだ!(怒)

殺される、まではいかなくても

声をあげることで

社会的に抹殺されることなど、日本でだってあるある。

羊でいることを受け入れるのか。

人間は機械なのか。

いろんなことを考えさせる。

 

そういえば、ジャストなことに

発売中の「AERA」(7/23号)の「現代の肖像」で

深田晃司監督を取材させていただいたのですが

 

監督が中学生のときに感銘を受けたという

マーク・トウェインの『人間とは何か』に

「人間とは機械にすぎない」と書かれている部分があったんだった。

(参考に手に取ったけど、ワシには難しすぎて、読破はできなかった・・・苦笑)

 

いろいろ考えさせられつつ

もっとも興味深いことが、プレス資料を読んで判明したのでした。

 

それは

ニューデリー出身のラフール・ジャイン監督が、

実は“強者”の側にいる人間だった、ということ。

彼の祖父は繊維工場を経営していたんだそうな。

 

何も知らずに観ていたけれど

映画のなかで

「取材が終われば帰るのだろう。それとも君が導いてくれるか。ならば我々はついていくぞ」

監督が対象者に囲まれるシーンがあって

知ると余計にドスンと重く感じられた。

 

彼らは「救世主」を求めているのだ。

監督のような視点を持った人たちこそが、もしかしたら、こうした手段で

変化をなしていくことができるのかもしれない。

 

★7/21(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「人間機械」公式サイト

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