ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

2018-07-06 23:56:29 | は行

 

タイトルは「性差を超えた闘い」の意味です。

セクシーおねえちゃんの話ではありません。

 

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」70点★★★★

 

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1973年。全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)は

怒りに燃えていた。

全米テニス協会が提示した女子の賞金金額が

男子の8分の1だったのだ!

 

抗議が受け入れられず、彼女は試合をボイコットすることを決める。

 

さらに彼女は、女子選手たちを集めて「女子テニス協会」を立ち上げ

「バージニアスリム選手権」の開催にこぎ着ける。

 

そんななか

元男子チャンピオンのボビー・リッグス(スティーブ・カレル)から

ビリー・ジーンに電話が入る。

 

「そんなに男子と女子が平等だというなら

いっちょ、試合をやろうじゃないか」

 

最初は相手にしていなかったビリー・ジーンだったが――?!

 

 

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「リトル・ミス・サンシャイン」(名作!)の夫婦監督が

45年前にあった実話を描いた作品。

 

驚くほど今日的な問題がジャストに詰まってます。

 

 

1973年、男女の賞金格差に異を唱え、

是正のために立ち上がったビリー・ジーン・キング。

 

その彼女に、ボビー・リッグスが

「男子と女子が平等だ、っつうなら、試合で勝負しようぜ!」と

まあパフォーマンス度100%で絡んでくる。

 

最初はアホくさ、と相手にしてなかったビリー・ジーンだったけれど

いろんな事情で、放置できなくなり

世紀の「男女のテニス対決」が行われる。

 

その試合の行方は――?もドキドキなんですが

しかし、この話、単なる「テニスの試合」の話ではなく

そこにビリー・ジーンのセクシャリティの問題が絡んでくるのが

大きなポイント。

 

当時、夫のいた彼女は、ある女性に惹かれ、その状況に戸惑いつつ

「本当の自分」を見つけていく。

そして夫と離婚し、1981年にレズビアンであることを公表するんですね。

 

ビリー・ジーン・キングのことも、この試合のことも

まったく知らなかったので

 

男女差別のタイムリーさに驚いて見ていたら、

え?次はLGBT問題か?!と、思いがけぬ多層構造に驚いてしまった。

 

ここがキモでもあるんだけど、この部分が吉と出るか、苦手と出るか、

正直、分かれそうではある。

 

おなじみ「AERA」で

監督ご夫婦にインタビューさせていただいたところ

セクシャリティの部分は、ビリー・ジーン本人が

「ぜひ、書いて!」と言ったのだそう。

 

セクシャリティに悩む人はまだまだいる。

特に若い人の助けになれば――と。

(掲載はちょっと先、7/14発売号です~)

 

現在74歳のビリー・ジーン・キングは社会活動家でもあり

オバマ前大統領から、勲章も授与している。

そんなスゴイ彼女の最初の一歩として、物語を追うのもおもしろい。

 


ボビー役のスティーブ・カレルは

またもカメレオンぶりを発揮し

(この人の声のデカさにはいつもながら辟易するんですけどね……

 

それにビリー・ジーンを演じるエマ・ストーンの精神力あるプレイヤーぶり!

「ラ・ラ・ランド」よりも、一皮むけた気がしました。

 

★7/6(金)から全国で公開。

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」公式サイト

コメント (4)
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