ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

スリー・ビルボード

2018-01-29 01:56:33 | さ行

GG賞で主要4部門を受賞。
アカデミー賞でも席巻は必須。

このタイミングで観られることが
嬉しくてたまらない。


「スリー・ビルボード」80点★★★★


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米ミズーリ州の田舎町。

さびれた道路沿いの3枚の広告看板に
ある日、衝撃的なメッセージが書かれる。

広告を出したのは
7ヶ月前に娘を殺された
母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。

一向に進まない捜査に
業を煮やしての行動だった。


当初はミルドレッドに同情していた町の人々も
次第に
彼女の不敵な行動に眉をひそめはじめる。


そして、看板は小さな町に
思わぬ波紋を巻き起こし――?!


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これは最高におもしろい脚本です。
人物描写も秀逸。


小さな町で
ティーンエイジャーの娘が殺される。

7ヶ月たっても、犯人の手がかりすらないことに
怒り心頭の母親(フランシス・マクドーマンド)は
道路沿いの看板を買い取って、メッセージを掲げる。

それが
町の人々に思わぬ波紋を投げかける――という物語。


まずは
怒れる遺族となる母親の
行動力の、ぶっちぎり具合がもう!
想定外で、すげえ!
(警察署に乗り込んで行く場面なんて、まんま西部劇!笑)


なぜ、彼女がそうするかといえば
町の巡査(サム・ロックウェル)はレイシストのクズだし

警察署長(ウディ・ハレルソン)も
一身上の都合だか知らないけれど
どうも捜査に本気でないようにみえるから。


犠牲になった娘の恨み、
このままにしておけようか!と暴走する
彼女の気持ちには共感できるけど

その行動には、たしかに共感しかねるものもあったりするのが
複雑でうまい。


さらに、その先が、この映画の重層なところ。

一見、クズで嫌なヤツでも
人というものは、一面では測れない。
多面を持っているんですね。


物語が進むうちに
「この人が、こんな行動をするとは!」という展開があり
そのきっかけがまた、意外なところから、もたらされるのがいい。


「怒りは怒りしか来さず」、
そして
人には変われるチャンスがある。

そんなことを教えてくれる映画でした。


いまの暗~い世の中で
この破天荒な物語が起こす
一陣の風を、ぜひ感じてほしいです。


★2/1(木)から全国で公開。

「スリー・ビルボード」公式サイト
コメント (2)
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