ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

デトロイト

2018-01-22 23:41:58 | た行

キャスリン・ビグロー監督。
この人の、この強靭さ!

「デトロイト」72点★★★★


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1967年、デトロイト。

この地では
根強い人種差別、それによる格差に
黒人たちの不満や怒りがピークに達し、
暴動が発生していた。


そんなある夜。

将来有望とされていたバンドのメンバー、ラリー(アルジー・スミス)は
暴動の余波で、家に帰れなくなってしまう。

しかたなくバンドのメンバーと
アルジェ・モーテルに泊まることにしたラリーだが

そこである黒人男性が
ふざけて銃声に似た発砲音を起こす。

それがここまで凄惨な事件を引き起こすとは
誰も想像していなかった――。


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「ハート・ロッカー」(10年)

「ゼロ・ダーク・サーティー」(13年)のキャスリン・ビグロー監督が
暴動が勃発する1967年のデトロイトで
実際に起きた事件を描いた作品。

騒乱の
その現場に投げ込まれる、半端ない臨場感。
ノンストップの緊張と恐怖。

「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク」でもコンビを組み
「告発のとき」(07年、いい映画!)の脚本も書いている
元事件記者、マーク・ボール氏の脚本の力もすごいんでしょうね。



こんなことが起きていたなんて……まるで戦場じゃないか!という驚き。

そしていまも変わらない
レイシズムが引き起こす事件。

その生々しさを目の当たりにして
もう、怒りで歯茎から血が出そうになります(怒)。

この凄惨な一夜を生き延びても
決して、もとの自分には戻れない。
特に若者に負わせた傷は深い――と考えさせられました。

騒乱のなかで、冷静に
その場をまとめようとする警備員の男に
「スター・ウォーズ」のジョン・ボイエガ。

差別主義から常軌を逸していく若き警官を演じるのは
「リトル・ランボーズ」(10年、これもいい映画!)でデビューした
ウィル・ポールター。

ビグロー監督は半即興的なドキュメンタリーふうの手法を取り入れ、
俳優たちは精神的にかなり追い詰められたらしい。

とくにウィルはかなりきつかったらしく
そりゃ、過酷だったよね、これ演じるの……。


それに、唸ったのは
監督の徹底したフェアネスの姿勢。

黒人たちの差別や格差への不満はもっともだけど
その怒りをエネルギーに、
略奪など無軌道な行動に出た人々がいたことも事実。


その行動が
「怖い」「この人たち危険」という感覚を植え付け
さらに悪い連鎖となってしまう。

そこを平等に描くために
最初の1時間近くを費やしてる。

その鋼鉄の意志に感服しました。


★1/26(金)から全国で公開。

「デトロイト」公式サイト
コメント
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