ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

はじめてのおもてなし

2018-01-12 23:30:30 | は行

いや~ドイツのコメディは相変わらず
斬りこみ方がハンパない(笑)


「はじめてのおもてなし」73点★★★★


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ドイツ・ミュンヘンに暮らす
裕福なハートマン家。

何一つ不自由ない一家に見えるが
しかし母アンゲリカ(センター・バーガー)は
教師を退職し
生きがいを見失っていた。

そんな彼女は
難民の青年を家庭に受け入れることを決める。

家族全員が困惑するなか
ナイジェリア出身の青年ディアロ(エリック・ガボンゴ)が
一家にやってきた――!


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ドイツで大ヒット!の社会派コメディ。

笑っていいものやらヒヤヒヤしつつ(笑)
問題意識に照らされ
複雑かつ深い後味を残す良作です。


ドイツの裕福な一家が
ナイジェリアからきた難民青年を家に受け入れることになる。

そこで起こるのは
異文化ギャップや
難民青年が巻き起こす騒動……なんて、安易なものではないんです。


まず一家の問題のほうがややこしいんだから(苦笑)


自分の空虚さを「人助け」で繕おうとする母を筆頭に
夫婦の不仲、老いへの不安。いい年して、まだ自分探しをする娘。

難民青年ディアロは素直でおとなしい好青年だけど
自国の物差しで物事を見ているので

30歳を過ぎて、家にいる一家の長女に
「もういい歳なのに、なんで子どもがいない?」と
ずけずけ質問したりする(笑)


そんな彼が自国での経験を語るシーンには
本当に胸が痛むけど

ラストに彼が発する言葉に一瞬「ギクリ!」とした
自分の感情にもヒヤリとする。


結局、この映画は
「じゃあ、あなたはこの問題についてどう考えてるんですが、どう行動するんですか」と
笑いながら
ズガッと突きつけてくるんですよ。

そこがおもしろい。

難民問題の根深さを
ユーモアとともに考えさせる
貴重な体験だと思いました。


★1/13(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「はじめてのおもてなし」公式サイト
コメント
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