この監督は
「カフェ・ド・フロール」が一番好き。
本作は、それに近い。
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」77点★★★★
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ウォール街の銀行に勤めるディヴィス(ジェイク・ギレンホール)は
その朝、通勤の車のなかで
妻ジュリアと口論していた。
妻の父であるフィル(クリス・クーパー)の銀行で働く彼は
ちょっとした“マスオさん状態”だが
それでも富と地位を手に入れ、不満はなかった。
だが、このところ
妻との仲はどうもギクシャクしている。
そのとき、事故が起こり
妻が亡くなってしまう。
だが、ディヴィスは
一滴の涙も出なかった――。
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まさに
アメリカ版「妻が死んだ。これっぽっちも泣けなかった」な男の
もがきと再生への一歩。
語り尽くされたような素材を丹念に描き込み、
観客をその体験と感情に同調させ、映画へと引き込んでいく。
そこへ導くのがジェイク・ギレンホールの演技なんですねえ。
喪失、混乱、悲しみ――
それぞれがシンプルなだけに難しい表現を
こんなふうに演じるのかあ、と釘付けです。
舞台装置も上手で
職場も主人公たちの自宅も、全てがオシャレ―にガラス張りでスケスケ。
だけど、その中にいる彼らの心の中身は全く見えない。
家でひとりぽっちになった主人公は
冷蔵庫やらエスプレッソマシーンやら
そのうち家具やらを壊しはじめるんですが
それは「物を壊してスッキリしたい!」とかの衝動で動くのではなく
それらを分解して、中身を見たい!という
衝動からなんですね。
でも、分解したものに中身はなく
結局バラバラのパーツでしかなく
しかもそれを彼は元に戻せないんですよ。
そういう象徴の皮肉も効いている。
見ながら、
人は苦しいときに、本当にこうやって
思いもよらない人からの
「大丈夫ですか?」で救われるんだよなあと
しみじみ思いました。
ジャン=マルク・ヴァレ監督は一般的にはやはり
「ダラス・バイヤーズクラブ」や「私に会うまでの1600キロ」で評価されているようですが
ワシは断然、「カフェ・ド・フロール」が素晴らしい!と思っていて
本作は、それに近い感じがする。
なので
同じ思いを持つ方には、ぜひおすすめです!(笑)
★2/18(土)から新宿シネマカリテほか全国で公開。
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」公式サイト