ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

The NET 網に囚われた男

2017-01-06 23:32:29 | さ行

キム・ギドク監督の新作です。


「The NET 網に囚われた男」69点★★★★


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北朝鮮の漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)は
妻と幼い娘子と、貧しくも平和な日々を送っていた。

だが、ある日いつものように漁に出た彼は
ボートの故障で
北朝鮮の警備兵たちの目の前で
韓国側に流されてしまう。

韓国の警察に拘束された彼は
スパイ容疑で執拗な尋問を受けることに。

そんななか
韓国の若い警護官オ・ジヌ(イ・ウォングン)は
ナム・チョルの潔白を信じるのだが――?!


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ギドク氏がプロデュースした
「レッド・ファミリー」を思い起こさせる
南北問題を描いた社会派ヒューマンドラマ。


どぎつい暴力描写はなく、
優しいイケメン警護官が登場したり
ギドクカラーの新たな展開かも。

ワシは「アリラン」
いまでもじわじわ好きなので
こういう“痛いのことさらに描かない”系ギドクワールドが好みです。


主人公はボートの故障で韓国に流れついてしまった
純朴な漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)。

事故だったのに
韓国からは「北朝鮮からのスパイか!」と疑われ
北朝鮮に帰ったら
今度は「寝返ったスパイだろ!」と疑われてしまう。

違う!って言ってるのに!
結局、南北どちらにも疑われ、同じような取り調べをうける
その理不尽さやくだらなさを、
観客も主人公と一緒に辛抱強く見ることになるんですね。

優しい韓国側の警護官との
わずかな心の交流が救いなんですが
でも北に帰ることになると、主人公は
警護官が差し出すぬいぐるみのお土産すらも拒絶する。

でも
北に帰ると、彼がそこまで頑なだった理由もわかるわけです。


韓国側はとにかく主人公を
「気の毒な国から来た、かわいそうな人」としているけれど
いや、それ
もしかしたら、違うんじゃないか?と提示する。


この感覚が“中の人”である
監督だからこそのリアリティかもしれません。


昨年11月に来日した
ギドク監督に「AERA」でインタビューをさせていただきましたが

取材後にワシがイスに落としていたボールペンを
「落ちましたよ」と教えてくれる
気遣いのある優しい方!

今年3月にいよいよ
福島を舞台にした話題作が日本でも公開されることが決まったそうです。
これはご本人も認めるかなりの衝撃作だそうで
“攻め”の姿勢を変更したわけではないようです(笑)


★1/7(土)からシネマカリテほか全国順次公開。


「The NET 網に囚われた男」公式サイト
コメント
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