ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

誰のせいでもない

2016-11-10 23:07:56 | た行

なぜ、これを3Dで撮ったのか。
その秘密がわかると
じわじわと、きます。

「誰のせいでもない」3D 72点★★★★


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凍てつく冬のカナダ・モントリオールの郊外。

作家トマス(ジェームズ・フランコ)は
新作の構想に悩みながら、田舎町を走っていた。

そのとき突然、目の前に
ソリが滑り落ちてくる。

急ブレーキをかけたトマスの前には
放心した様子の幼い少年がいた。

悲劇は回避したかに思えたが、
トマスが少年を彼の家に送っていくと
母親(シャルロット・ゲンズブール)は血相を変えて――?!


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ヴィム・ヴェンダース監督、7年ぶりの劇映画です。

まず
なんとも掴みにくいというか。

イメージするような
サスペンスやミステリーではないんです。

避けられなかった事故を起こした作家(ジェームズ・フランコ)。
その事故で、幼い息子を失った被害者(シャルロット・ゲンズブール)。

作家の精神はどん底になるんだけど
しかし被害者までもが
「あなたのせいじゃない」と言ってくれる。

そして
作家は行き場のない思いと過去を抱えながら
年月を重ねていく――という話。


描かれるのは
贖罪や後悔、懺悔とも違う。

起こってしまったことは、二度と元には戻らない。
そうした“過去”が人に
どんな傷や痕跡を残すのか――

それを観客に、主人公と同じ時間と空間を味合わせながら
体験していくような感じなんですね。

そのための“3D”なんですよね、これ。

というわけで
明確なサスペンスやミステリーを期待すると
肩透かしを食らうと思う。

ワシも最初、そうだったし
主人公のジェームズ・フランコが端正すぎて、
苦悩する人物に結びつきにくて、うまく入り込めなかった。
見た直後は67点くらいかと思った(笑)

が、しかし。

見終わっていまもじわじわと
余韻が蘇って、自分の何かを侵食していく感じがあるんですよ。

けっこう、すごい映画かもしれません。


★11/12(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「誰のせいでもない」公式サイト
コメント
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