不思議に魅力的。
「夏をゆく人々」73点★★★★
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イタリア中部・トスカーナ周辺の田舎で
昔ながらの養蜂を営む一家。
父(サム・ルーウィック)は
長女ジェルソミーナ(マリア・アレクサンドラ・ルング)を特に寵愛し
養蜂の技術を彼女に託そうとしている。
ある日、一家が湖に遊びに行くと
テレビ番組の収録が行われていた。
女神のように美しい司会者(モニカ・ベルッチ)に
魅了されたジェルソミーナは
番組のコンテストに出たいと考え始める。
同じころ、一家は
一人の少年を預かることになり――?
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第67回カンヌ国際映画祭グランプリ作品です。
「養蜂」「少女」「少年」からイメージしたのは
やさしい陽光溢れる
ボーイミーツガールもの。
でも、全然違ってました(笑)
確かに陽光溢れてるんだけど
陰影もくっきり、ときにゴツゴツと荒々しい。
長女が巣箱から逃げた蜂を
手でグワッともとに戻すシーンとか、忘れられない。
でも、少女の心のゆらぎなどは繊細で、
説明少ないなかでもグイグイ引き込まれるんです。
まず「時代がいつか」の描写もないんですからねー。
たぶん現在だろうと思うけど。
主役となるのは
隣家も見当たらないような田舎で
小さなコミューンのようにして暮らす一家。
子どもたちは学校にも行ってないようだし
父親は外にマットレスを敷いて眠てるし(なんで?笑)。
そんな一家の長女ジェルソミーナは
養蜂家の後継として父親に頼りにされている。
彼女は誇らしさの反面、
休みなく奴隷のように働かされる理不尽さや、
長女であることの疎ましさも感じている。
が、あるとき
父が一人の少年を家で預かると言い出して
さらに一家の暮らしを
テレビ番組のロケ隊や
付近の農家がまき散らす除草剤が浸食していく――という展開。
「どんな映画?」と聞かれて
一番困るタイプではあるんですが(苦笑)
現実をきちんと主軸にし、詩的で幻想的な世界が
広がってる感じが、とてもいい。
ラストシーンもいいんです、これが。
お話にはアリーチェ・ロルヴァケル監督の
自伝的要素も入っているらしいです。本人ははっきり言ってないそうですが。
そして彼女は
一家のお母さん役のアルバ・ロルヴァケルの妹なんですって。
ちなみに
アルバ・ロルヴァケルって
「ミラノ、愛に生きる」で
ティルダ・スウィントンにそっくりな娘役だったあの人です。
ほへぇ~。
★8/22(土)から岩波ホールほか全国で公開。
「夏をゆく人々」公式サイト