ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

バックコーラスの歌姫たち

2013-12-10 23:42:04 | は行

バックシンガーの置かれてる状況って、
ライター稼業とまるっきり同じだ!(涙)


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「バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」71点★★★★


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マイケル・ジャクソン、ミック・ジャガーやスティング……と
名だたる人々のバックで歌ってきたシンガーたちに
スポットを当てたドキュメンタリー。

こういう題材が
おもしろくないわけはない(笑)

メインとなるのは
自身も有名なシンガーとなったダーレン・ラヴやリサ・フィッシャー

さらに最近ではマイケル・ジャクソンとの最後のデュエットで
一躍有名になったジュディス・ヒルなど約10人。

まずは彼女らの歩んだ道が示される。


ぬるい白人コーラスに
パワフルな歌声で風穴を開け

1960年代、ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイの
「ブラック起用」ムーブメントに乗って
大活躍したこと。


そして彼女たちは
「このままバックで居続けるか?」「独り立ちするか?」の選択を
必ず迫られる。

居心地がよくてラクな“いまの場所”から抜けて、
一歩踏み出す勇気はあるか――?


……それって、シンガーに限らず
あらゆる仕事人に、当てはまるじゃないですか!


しかし、たとえ勇気を持って一歩を踏み出しても、
運とタイミングでうまく行かない人もいる。
なかには家政婦になったりする人もいるし。

そんな経験をした大勢の証言は、
それだけで重く、貴重だと思う。


一方で
「自分を売り込むなんてできない・・・」と話す人もいて、
才能だけでなく性格にも、
フロントとバックの境界線はあるのだなあ・・・とつくづく。


しかもバックシンガー界はまた時代が移り、
需要が減ったりもしているらしい。

この浮き沈み、まさにフリーライター稼業と変わらないじゃん!


さらに、この映画がおもしろいのは
彼女たちを“使う”側であるスターたちにもインタビューをしてるところ。


バックコーラスとメインの距離はわずか数メートル。

そこを超えるものって何だろう?――という疑問に
ブルース・スプリングスティーンや
スティングらが答えてくれるんですね。

特にスティングの言葉に
厳しさを感じたなあ。

もちろん、彼女たちをリスペクトする気持ちは多大なんだけど

“裏方”に甘んじるのか?
それは心底、自分の本意なのか?!――みたいなものを突きつけられて
・・・うーんシビアな気持ちにもなりました。

全体には裏でがんばってる人たちへの
“応援歌”の意味合いが強いとは思うんですが。


90分にしては長く感じるのは
あまりにも、盛り沢山な内容だからだろうか。

バックコーラスの誰か一人に絞って、
劇映画にしたほうが、訴えるもの大きかったかも……とか
チラッと思ったけど

まあそれだと
映画「ドリームガールズ」になっちゃうのかもしれません(笑)


★12/14(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「バックコーラスの歌姫たち」公式サイト
コメント
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