ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

少女は自転車にのって

2013-12-09 23:36:37 | さ行

映画館の設置が法律で禁止されている(!)
サウジアラビアから
初の女性監督による作品。

これって、スゴイことっすよね?!


「少女は自転車にのって」73点★★★★


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サウジアラビアの首都リヤドに住む
10歳の少女ワジダ(ワアド・ムハンマド)。

女子校にヒジャブを被らずに登校し、
厳しい校長に目をつけれらてる問題児だ。

彼女は自転車が欲しくてたまらないのだが
母親(リーム・アブドゥラ)は
「女の子が自転車なんてとんでもない!」と許さない。

ワジダはある方法で
自転車を手に入れようとするが――?!

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粛々たる女性を“鏡”とするムスリム社会で、
どうしてもその枠からはみ出してしまう
10歳のおてんば少女の成長を通して、

サウジアラビアという国がどんなとこなのかを
我々に知らせてくれる良作です。


サウジアラビアのムスリム社会で女性は
ヒジャブ着用にはじまり、
自分で自動車を運転することも許されていない。

しかも
女性の貞操をめちゃくちゃ重視する反面、
一夫多妻や早い結婚は容認されている――。

うげえ~~
女性にとって、生きにくいことこの上ない社会じゃありませんか。

そんな抑圧と閉塞に
本能的に逆らってしまうような
少女ワジダの反抗心や冒険心が勇ましく、ほほえましい。

彼女のお母さん(美人!)の置かれた状況にも
ムスリム社会の理不尽さが自然に込められていて、考えさせられます。


監督のハイファ・アル・=マンスール女史は
アメリカ人外交官の夫と結婚後、
シドニー大学で映画学を学び、
本作が初の長編とのこと。

単に困難な状況で作られた、とかではなく
映画としてのレベルが高いのがスゴイ。


サウジでは映画に出てくれる女優を探すことも難しく

ワジダ役のワアドは
オーディションにやってきて
その“不遜な”(笑)態度が目を引いたそうで
まさに役を体現してるといえるでしょう(笑)


美人とは言えないけれど、男の子相手に引くこともなく
意外とちゃっかりしている面もあって
なかなか世渡り上手なところが、キュート。


そして
ダルデンヌ兄弟の「少年と自転車」のように
どこの国でも“自転車”は
少年・少女が自力で手に入れられる“自由”の象徴だなあと。


こんなにも不自由な世界で、
自ら“自由”手にしようと奮闘するワジダに
「がんばれ!」と声をかけずにいられません。


★12/14(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「少女は自転車にのって」公式サイト
コメント (2)
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