ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

2010-11-30 11:17:30 | や行
先入観はいけませんわな。

「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」80点★★★★

漫画家・西原理恵子の元夫で
戦場カメラマンの鴨志田穣氏が
自らのアルコール依存症体験を綴った
著書の映画化です。


血を吐いて倒れた
アルコール依存症の塚原(浅野忠信)。

元妻で漫画家の由紀(永作博美)と
二人の子どもたちは
あきれながらも、見捨てることはしない。

だが由紀は医者からこう言われる。

「この病気は世の中の誰も本当に同情してくれない。
場合によっては医者さえも」

禁酒を宣言しては破れ、の繰り返しを経て
ついに塚原は病院に入院し
依存症を克服しようとするが……?!


2009年から
「いけちゃんとぼく」(未見)
「女の子ものがたり」(ダメ)
「パーマネント野ばら」(まずまず)

そして2011年公開の
「毎日かあさん」(グー)
と映画化が相次いでいる
サイバラワールド。


ついつい先入観で
「またサイバラネタ?」と思っちゃったんですが
これはよかったなア。


主人公はあくまでも
鴨志田氏である塚原(浅野忠信)だったし

なんというかちょっと
ドキュメンタリーっぽい筆遣いで

アル中男の悲壮を
どこか滑稽にユーモラスに
達観した静けさで描いてるんです。


こういうダメ人間を描くのは
本当にムズカシイと思う。

視点が上からだと正しくはあっても
「うっせーやい」となるし

かといって甘やかしてばかりでも
「迷惑かけられる側の苦労はどうなのさ!」となる。


この作品はダメ男視点なので
やや甘、ではあるけれど

「わかっちゃいるけど、やめられない」

「誰にも本気で同情してもらえない」
男の悲哀と

常に姿勢正してばっかりじゃいられない
人間の“弱さ”のリアリティが

バランスよく表現されてると思う。


噛みごたえのある名脇役者をうまく配置し
出てくる誰もが
肩の力が抜けてて自然なのもグー。


これは完全に
「絵の中のぼくの村」
「わたしのグランパ」などで知られる
ベテラン・東陽一監督の手腕だと思いました。


病院での楽しみが唯一
食事だったりするフツーなリアリズムや

主人公が見る幻覚が
わざと稚拙だったりするところも
なんか素直に好きでした。


ちなみに来年公開の「毎日かあさん」
この話をサイバラ側から見た
まさにアンサーソング。

鴨志田氏役が永瀬正敏、サイバラ役が小泉今日子。
合わせて観ると
おもしろいですぞ。


★12/4からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」公式サイト
コメント (2)
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