<(9)-1より>
心の病や働きすぎによる過労死が今後減少に転ずるかといえば、残念ながら「NO」なのです。それは以下の理由です。民意の反発を恐れ安倍首相は不良債権処理も終え、黒字回復した銀行からの献金をいったん見合わせましたが、これは国民向けポーズにしか過ぎません。来年早々にも銀行からの献金が再開されるはずですから、政府は一層財界寄りの姿勢を強め労働者の権利を弱める政策に傾きます。
もっとも警戒すべき法案も息を吹き返すことでしょう。米ブッシュ政権との約束事である「ホワイトカラーエグゼンプション」が、形を変えて再登場するでしょう。一度廃案になりましたが、水面下で着々と計画されているのです。「産む機械」発言の柳沢厚生労働相がこの法案を成立させるため、各閣僚に懸命に口説きまわっていたことをご存知でしょう。「残業代ピンハネ」する目的の法案であることから、これが成立すれば「過労死」しても労災扱いされません。なぜかといえば、サラリーマンの自己管理責任不足で全部処理されるのです。経営者の雇用責任は一切なくなります。それだけこの法案はおそろしいのです。絶対に許してはならないのです。政府・財界の悪企みはここまで合意できているのです。
政府の規制改革会議がおカネを払えば解雇ができることや、現在派遣が禁止されている警備業務や港湾運送業務などの派遣ができるよう、労働法制を見直すことの答申案が明らかになりました。そして派遣期間を最長3年に制限されていることの撤廃も求めているのです。これでは正規雇用になれるのはほとんど絶望的といえます。すべて、経営者の都合ばかりを取り入れていることがこれでお分かりでしょう。サラリーマンには配慮がまったく見られません。弱者切捨ての政策がどんどん推進されます。これだけ逆風が吹き荒れるなか、心の病や過労死の増加に歯止めがかかるとは到底思えません。ますます広がる格差と世情の混乱を心配しなければなりません。これを解決できる手段はただ一つ、いまの政治の流れを変えることにしかないのです。