Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング709. 小説:小樽の翠633.  午後の光で林檎が輝いている

2023年04月01日 | field work

 青森のリュウ君が精力剤をもらいに小樽の病院へ来ていたから、ナンタルの小さな店で遅い昼飯と午後の時間を過ごしていた。リュウ君がこれ持ってきたよといって津軽のリンゴをくれた。午後の光の中で眩しそうに輝いている。
リュウ「先日は、kikも喜んでいたよ。ひさしぶりに賑やかになったというので・・・」
訪問して泊まって喜ばれる家庭というのも、今の日本では少なくなった。つまり今の普通の家では、第三者がはいってきてほしくない世界ができている核家族世帯ばかりなのだ。といってじゃあ夫婦ラブラブかというと、実はそうではなく娘達から、あれは仮面夫婦だとさげすまされているのが現実。つまりそれぞれが自分の部屋である蛸壺に籠もっていたいからなのだろう。これを蛸壺家族といっておこうか。しかしリュウ君の家は違うのだ。
「今時の家庭で歓迎されるのは息子娘夫婦と孫ぐらいだから、それ以外は来るなといわんばかりだよ。だからリュウ君の来客を歓迎する家なんて今の日本では珍しいよ
リュウ「それは寂しい世界ですね。kikiは貧乏人育ちだし親族も多かったから実家では結構回りに神経を使っていたんですよ。だから日本の暮らしは、そうした点で神経を使わなくて済むから楽だといってた。しかし楽だけど静かすぎて寂しいだってさ。だから賑やかなことが彼女にとっては大切な時間なんですよ。僕もすこしは賑やかに振る舞うけれど、やっぱ頭数が揃わないと賑やかにはならんですよ。だからゲストがやってくるのは大歓迎!」
「それは、今の日本では珍しいよね」
リュウ「そこがkikiの取り柄かなぁー。だから僕も大切にしている我が家の習慣なんですよ・・・」
・・・
そんな話をしていたら夕方になってきた。しかし小樽の空はまだ明るい。随分と日が延びたみたいだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする