Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

横濱3. マドロス風情

2008年09月13日 | Yokohama city
 多分この洋館に置かれている本は、当時から据えられていたのではないかも知れない。だが、はげかかった装丁をみていると、洋館の歴史を感じるには十分な古さである。往時のこの街のエキゾチックな様相がしのばれる。明治、それこそこの街が、日本と言う国と歩調を合わせ、立ち上がろうと輝き始めた時代なのかも知れない。
 往時の洋館に人々の関心がゆくのは、明治という大きな時代の変わり目で、新しい街が生まれ、外来文化が輸入され、そして多くの外国人が住み着いた歴史的事実だろう。そうした時代から随分時間が経過した。 今でも横濱には、ミッション系スクールもあり、実際外国人も住んでいる。街の規模は、往時と比べれば、はるかに大きく、日本第2の人口規模を持った都市である。
 だが、「マドロス風情」といった煙草をくわえた少しヤクザな荒っぽい船員を表すこの言葉だが、 今の横濱にマドロス稼業の船員は、極めて少ないと推測している。船員達の意識や働き方も変わったのだろう。従って失われた要素も多いといえる。現代では、神奈川県自身が全県下の公共空間での原則禁煙を打ち出し、マドロス風情どころではない。多くの普通の生活者が暮らす、普通の街といっても差し支えない。このように私達の生活が平準化してくれば、街の機能も追随してくる。全国の街が平準化してくるのも、うなずけることである。
 現在の横濱の実態は、港町というよりは、むしろ全国どこにでもあるサラリーマン都市である。横濱も明治と比較すれば、港町のような顔をした普通の街だといえ、それはつまらなくなったのである。そこに、今の横濱のジレンマがあるのだろうか。

Canon EOS Kiss Digital,SIGUMAF3.5-5.6/18-125mm
コメント
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